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対立化

お久しぶりです。大変お待たせしました。

今回は静紅の友達が出来た翌日の出来事。

それでは、楽しんで。

「まさか静紅がそこまで積極的とはねぇ」


「うっうるさい!」


その日の放課後、しずくはやはり散々お姉ちゃんにからかわれていた。


「まぁ良かったじゃん、友達になれたんでしょ?」


お姉ちゃんが軽快に動き回る度にぴこぴこお姉ちゃんのケモ耳やしっぽが動く。


「いやまあそうなんだけど!あの登場の仕方はないよお姉ちゃん、みんな逃げちゃったじゃん」


色々ムカついてしずくはお姉ちゃんにキレた。


「別にあれは蓮月くんが恥ずかしがり屋だっただけでしょ。私悪くないし〜」


お姉ちゃんは悪びれもせずヘラヘラしていて、それがまた…うざい!


「あのあともっと一緒に過ごしたかったのに…ったく、元々友達がたくさんいるお姉ちゃんには分からないよっ」


「これから焦らず一緒に過ごしていけばいいの!そうすれば、自然にもっと仲良くなるし、お互いの事も知れる。友達がたぁくさんいるお姉ちゃんの言葉よ、覚えておきなっ!」


「…」


お姉ちゃんの言うことはご最もなのでしずくは黙ってため息をつく。


まだ言い足りないけど、しずくは諦めてスマホのロックを解除し、メールアプリを開いた。


改めてメールに登録されている人を確認してみる。


『氷華』、 『泉』、それから…『yuyu』。


泉はおとうさんの名前。

この三人だけ。

転校前の学校ではしずくは自分が出せず友達が全然できなかった。

そして、yuyu…夢優(ゆゆ)

…これ以上この名前を見たくない。嫌なことを思い出してしまった。


しずくはスマホの画面を閉じる。

そうだ、友達も出来たことだし、これから増える!

しずくはなんとか気持ちを前向きに戻した。


その時、お姉ちゃんのスマホから着信音が鳴った。


「お、前の学校の友達からだ。ちょっと出てくる」


お姉ちゃんはそう言って自室に入って行った。

お姉ちゃんは前の学校で沢山友達を作っていた。

人懐っこいのもあるけど、シンプルにコミュ力が高いからだと思う。

正直、羨ましい。


微笑む三人の友の姿を思い浮かべる。

手放したくない大切な人達。

できればずっと、傍にいたい。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

翌日の朝、しずくはちょっと楽しみな気持ちで学校の廊下を歩いていた。

まぁそれは言うまでもなく、友達ができたから。しかも三人!

いやぁまさか、あんなに上手くいくとはねぇ。


「おっはよーござ…」


教室の扉を開けると、視線が一斉にこちらに集まった。

え、なんだろう。ちょっと怖い。


しずくはとりあえず席に座る。まだあの三人は来てないっぽい。少し早めに来たからかな。


早く来ないかなぁと待っていると、急にしずくの机にバンっと手を置かれた。


「へあっ!?」


しずくがビックリして顔を上げると、なんと転校初日にしずくを脅迫してきたうちの取り巻き二人が立っていた。しずくとぶつかった古田本人はまだ学校に来ていない。


う、嘘。まさかこの人達、水萌ちゃん達が来ないのを良いことにしずくに何かしようとしてる!?


「なあ転校生、どうやらさっきルンルンだったみたいだけど、一昨日のこと忘れてねえよな?」


取り巻きのうちの一人がしずくにそう言ってきた。しずくの体が強ばる。でも不思議と、恐怖より怒りのほうが大きい。

だってこんなにいい気分だったのに台無しにされたからね!


「おい聞いてんのか?ビビってねぇでさっさと答えー、」


「忘れるわけ!ないでしょ!」


教室全体が静かになった。

…自分こんな大声出せたんだ。もしかして友が出来たことでちょっとだけ、自信が付いたのかも。そしてまだ来てないけど、味方がいる安心感。

だったらこの勢いのまま三人が来るまで耐えてみせる!怖いけど…

しずくは二人を睨みつけた。相手が少し怯むのが分かる。まぁ宙くん程じゃないけど、しずくが反抗したことが意外だったのかもしれない。


「…あ、ああそうかよ。まぁ百歩譲ってその件のことは見逃しといてやる。問題はそこじゃない」


しずくは黙ってこいつらの言ってることを聞く。

相変わらず上からで威圧的なのは変わっていないようで。てか全然反省してないし…

でもしずくは不思議に思った。あの一昨日のことが許された(悪いのは100%そっちだけど)なら、しずくに言いたいことは一体何?


「…それでその問題と言うのは?」


しずくは結論を訊いた。


「お前と昨日一緒にいたやつらだよ!」


…え?


「…え、どういうこと?」


言われたことの意味が分からなくて思わず素で聞き返した。しずくと一緒にいた人達?お姉ちゃん?どの人のこと?


「まぁここに来たばっかのお前はまだ知らなかったか。あいつらだよ、津野達のことだよ!」


つの。…え、蓮月くん達?ってことはあの三人が問題だって言うの?


「いやその三人のことなら知ってるけど、」


「そういうことじゃない。お前さぁ、あいつらと昨日一緒に学食に居ただろ。もしかしてその放課後もか?」


「そうだけど…それの何が問題なの?」


「気に入らねえんだよ、それが。あんなキショい奴らと一緒にいたらお前も同類になるぞ?てか、俺らが同類とみなすぞ」


「は?」


は?


「あんな正義感ぶってるやつらみーんな嫌いだよ。」


「そうそう、俺は津野が一番気に入らん。あんなド陰キャ、よくうちの学校入れたよな。普通にキモイし」


「それなー!あー俺は立花だな、自称サバサバ的な。まさに四軍集団だろあれ。」


「あと星宮が一番正義ぶってて萎えるわ、ちょっと力が強いからって調子乗んなよって話〜」


二人が笑いながら言い合う。しずくは口からなんの言葉も出てこない。


それぐらい怒りを感じてるから。


「だからまぁ、嫌われたくなかったらあいつらから離れることだな。せっかくお前顔はいいんだから、自分まで汚れたくはないだろ?」


「そうそう。てかあいつら点数稼ぎでお前を助けただけだと思うんだよ、お前から一方的に仲良くしようとしても意味ないって〜」


しずくの中で何かがぶちんと切れた。


「ちょっとあんたら!しずっちに何してんの!」


よく通る声。水萌ちゃんだ。

後ろを向くと案の定、水萌ちゃんと宙くん、それから蓮月くんがいた。


「あー噂をしたら来たぜ、おい、言えよ、私はあなた達と関わりたくありませんーって」


「…うん、そうだね」


そう言ってしずくは立ち上がった。

そして水萌ちゃんたちの方ー、じゃなくて取り巻き二人の方に向く。

水萌ちゃん達、本当にありがとう。本当に心強い。でも、しずくがずっと守ってもらうわけにはいかない。


「じゃあ正直に言ってもいいかな」


「あ?俺たち?一体何…」



「fuck you!!」



しずくはいつになく大きく、はっきりと言って、中指を立てた。

教室が異様な空気に包まれる。


「…はっ!?お前何言って、」


取り巻き二人はおろか、水萌ちゃん達も目を丸くしている。


「もう一度言う。fuck you!聞こえなかった?」


「…はぁ!?おま、誰に向かって、」


「お前ら以外に誰がいるんだよクソ野郎!良いことと悪いことの区別がついてないようなお前らの分際で、水萌ちゃん達を悪く言うな!」


しずくは感情を剥き出しにして怒鳴った。まだまだ言い足らずしずくは声の限り怒鳴り続ける。


「お、お前いい加減に、」


「しずくが関わりたくないのはお前らの方だ!お前らのために水萌ちゃん達から離れると思うなよ!しずくのことを言うのはいいけど、友達を馬鹿にするのは絶対に許さない!」


「……」


取り巻き達とクラスメート達はあまりのしずくの行動に絶句していた。

こいつら、ここまで言われても謝罪の一言もないのか。

しずくは怒りが募って思わず拳を振り上げた。


「おいっ、桐生それはやめとけ!」


その瞬間しずくの体を押さえつけられた。

…蓮月くんだ。


「もういいから!お願いだから、頼むよ、」


「おいお前ら何してる!」


その瞬間先生が入ってきた。しずくも我に返る。

や、やばい流石に殴ろうとしたのはマズかった。怒られる。


「大丈夫です先生。俺らちょっと遊んでただけなんで!」


え、と思って振り返ると宙くんが笑いながら先生にそう告げていた。


「なっ?」


いつもの純粋な笑みで宙くんがしずくに目配せした。


「えっ?…あっ、は、はい。遊びすぎましたすみません」


「はぁ!?いやこいつ俺らに、」


「遊びだったよな?」


「っ…!」


今度はめちゃくちゃ怖い目で宙くんは取り巻き二人に圧をかけた。う、うん、やっぱ本物が一番怖い。


「そうか。桐生、転校してきたばっかだからってはしゃぎすぎるなよー、じゃあ朝のHRを始める。」


先生の合図で皆が席に着いた。クラスメート達はしずくのことをチラチラと見ている。


…やばい。とてもやばい!

クラスメート達に変な印象植え付けちゃった。しかも普通に水萌ちゃん達の前で怒鳴り散らしちゃったし。てか絶対他のクラスにも聞こえたよね…

ああもう、やらかしたぁ…!

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「…ここだな、例の写真の撮影場所は」


俺は辺りを見回して、念の為フードを深く被り直した。そして今いる場所を観察する。

特に当たり障りはない、ごく普通の路地裏。


俺はファイルを取り出して付箋をつけていたページを開く。

そこにはドローンで撮影された路地裏と、そこにいる俺が探している人物が写っていた。


写真は後ろ姿だから顔は確認できないが、こいつの()()()()()()()()()()がはっきりと写っている。


この写真が取られたのは五年前。写っているのは女の子供二人。だけど身長差があるから同い年とは考えにくい。そして今回、俺が狙っているのはこの背が大きい黒髪の方だ。

髪は下ろしていて、淡いグリーンのワンピースを着ている。手にはキャップの帽子。そして何より、俺がこいつを探している理由。


この黒髪の頭に、耳が生えている。


人の耳じゃない。特徴は犬そのものだ。

つまり、こいつには犬耳が生えている。

まだ詳しいことは分からない。でも、もしこいつの異能力が「犬」なのであれば、俺はー…

そう思うと、くつくつと笑いが込み上げてくる。


…おっと、いけない、俺はまだやるべき事がある。


一旦笑いを押し戻し、再び写真に向き直る。

実は、今回の目的ではないけれど、気になってるのがもう一つある。


この写真に写っている、背の小さい方。

この犬耳少女とは違って金髪。変わった特徴のない至って平凡な少女。


に、見えるが。


写真だと分かりずらいが、俺には何となく分かる。

こいつも、絶対に一般人とは違う。

犬耳少女とは別にこいつも調べておきたい。

ただ、一緒に写っているし二人に何らかの関係があるのは間違いないから、そこも押さえておこう。


嗚呼、今回も時間がかかりそうだな。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「いやぁ、しずっちがあんな怒鳴ってるなんてビックリしたわ〜」


「ご、ゴメン…」


午前の授業が終わり、学食にて。

しずくは水萌ちゃん、宙くん、蓮月とランチを食べていた。


「いやいや、静紅が俺らのために怒ってくれたの嬉しかったよ!」


「宙くん…」


「そうそう。しずっちって意外と芯があるよね〜。…まぁ、その…一言目ふぁっきゅーなのはビビったけど…」


「あ、あはは…」


しずくはもう一つ後悔していた事がある。今水萌ちゃんが言ったことなんだけど…

…考えすぎかなぁ。


「…もうするなよ」


パックのいちごオレを飲みながら、ボソッと、でも強く蓮月くんが呟いた。


「…うん、ごめん蓮月くん、でも、やっぱりしずくはっ…、」


そこまでしずくが口にした瞬間、ふと宙くんと水萌ちゃんの目付きが変わったことに気づいた。

…ああ、例のあの怖い目だ。

しずくは恐る恐る二人の視線の先を見て、思わず息を飲む。


なんであいつがこっちに来てるの!?

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