第1章
いつものような、1日の始まり。忙しい朝を騒々しく迎える。時間に追われながらの日々だ。
寒いのを我慢して、気だるさを吹き飛ばすように這い上がった。
時間に追われているのは、俺ではない。俺以外の、家族だ。
中学に上がったばかりの妹、高校最後の冬を突っ走る兄貴。今年で厄年になり不機嫌満載のオカン、頭頂が目立ち将来が心配なオトン。
皆が急いでいる中、今の時間まで寝ているのは俺と愛猫のサヤだけだった。
俺の布団に包まり、喉を鳴らしている姿は可愛い以外にない。
サヤの頭をそっと撫でて俺は立ち上がった。
食卓に着く頃には、オカン以外はもう出発していた。別に見たくも無いオカンの顔を、横目にテレビを見る。取り留めもない政治家の批判を聞きながら、つまらない時間を過ごす。それでも、オカンの顔よりはマシだから仕方ないのだ。よりは、だ。
「あんた、今日は学校行くんか?」
オカンの無感情な声が耳に届く。普通の家庭にはない会話かもしれない。
だが、俺にはその「普通」の概念が分からない。だから、知った事ではない。
「遅れて行く。弁当はいらんから」
現在中3の11月。高校入試を控える身だが、俺にはどうでもいい話だ。
高校に進学するつもりは一切ない。出席日数も授業態度も、気にする事は必要じゃない。
2度寝する予定だったが、その気が何処かへ消えてしまった。
家に居続ける気も学校に向かう気にもなれない時、そんな時に良い場所がある。俺の為に用意されたような、とっておきの場所だ。人気無しで風当たり最悪だが、俺のとってのオアシス。




