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女子高生が『車部中』になっていく話  作者: メダリスト爺
冬支度とまさかのヘビー級整備編
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メーター交換

 そして、遂にメーターの交換作業に入ったよ。

 ムーヴのメーターはタコメーターのないスピードだけのものなので、凄く文字盤がいびつな形をしてるんだけど、これをおじさんが用意したタコメーター付きのものに交換するんだ。


 正直、この車種に関してはざっと調べたところ、単純にメーター交換しても組み合わせによってはメーターが動かなかったり、警告灯が点きっ放しになったりするので、エッセでやったように社外品のタコメーターを追加する方法が一般的なんだけど、この車のためにそれを買うのも勿体ないし、それに、センターメーターの周辺にメーターを追加すると、周辺がうるさくなってしまうので、通常のタコメーター付きメーターに換えてしまうのが良いな……と思うんだ。


 それに、純正品の方がまとまりも良いしね。


 さて、まずは純正のメーターパネル付近を引っ張ったり、内装剥がしを使って剥がしたりしてみると、エアコンの吹出口付近を含めてごっそりと取れるので、外れた内装の中に隠れているネジで留められたメーターを外してカプラーを抜き、次に新しいメーターをカプラーを繋いで取り付けていくと、完成らしい。


 そして、バッテリー端子を繋いだら早速エンジンをかけてチェックしてみるんだよ。


 “ヒュルルルルル……ヒュイィィィィィィィィ~”


 エンジンをかけると同時に左側にあるメーターの針が振れ始めて、タコメーターが作動しているのを確認できた。

 更にアクセルを踏んで、空吹かしをしていくと、回転に合わせて針が踊り始めたよ。

 ただ動いても、回転数とシンクロしてなかったら、タコメーターの意味が無いからね。しっかりと、エンジンを回転させて見ておかないとね。


 様子を見ているけど、変な警告灯は点灯してないみたいだね。

 この車のメーター交換の失敗した例に多いのが、警告灯が消えないっていうのと、速度計やタコメーターが動かないっていう症状のどれかなんだよね。


 あとはスピードのチェックだけど、コンピューターの件と合わせて、実走テストしておかないとね。

 じゃぁ、まずは私が走らせてみるね。


 「そうか燈梨ぃ、じゃぁ私が一緒に乗る事にしよう」


 と舞華ちゃんが言って、助手席のドアを開けると、次の瞬間


 「待てよマイ! この瞬間は私も見るんだぞ!」


 と結衣ちゃんが後ろのドアを開けて後部座席に乗り込んできた。

 そう言われてみれば、前に結衣ちゃんがムーヴのメーター交換をしようとして調べた結果動かないって事が分かって諦めたって3年生が言ってたもんね。


 「なんだよ結衣! 折角私が燈梨と頬寄せ合ってキャッキャウフフなドライブ……もとい、厳粛な試乗をしようとしてるのに邪魔するなよ!」


 と言って結衣ちゃんを外に押し出そうとしたところ、後席の反対のドアが開いて七海ちゃんが


 「させないっスー! マイ先輩が燈梨さんと狭い軽の中でセクハラ三昧をする気っスー!」


 と言いながら乗り込んできた。

 

 私と3年生2人、更に七海ちゃんを乗せたムーヴは、滑るように練習場へと走り出していった。

 すると、スピードメーターも速度にシンクロして動作をはじめた。

 それを見た結衣ちゃんは、後席から身を乗り出して驚くとともに喜んでいた。


 「やったぁ~!」

 「とは言え、結衣がやったんじゃないけどね」

 「うるさいよマイ!」


 喜んだ結衣ちゃんにチャチャを入れた舞華ちゃんを、結衣ちゃんが怒っていた。

 私がさっき乗って懸念懸案になっていた、アイドリング時や、減速時のエンジン制御の不安定さもすっかり消えていて、普通に走れるようになっていた。


 私はとても嬉しくなって思わず回転数を上げてみたり、スピードを上げてみたりしてメーターの動きと、揃ったエンジンの脈動を楽しんでいた。

 今まで、この車に対しては、ただの水撒きや荷物の運搬に使う便利な車という認識しかなかったんだけど、何故か今日はとてもワクワクする車に変身したんだ。

 何故かは分からないし、説明できないんだけど、きっとこの車にかかりっきりになっていた事によって、説明の出来ない妙な感情が芽生えたのではないかと思うんだ。


 それはきっと七海ちゃんや沙綾ちゃんをはじめとした1、2年生のみんなが思っている事なのではないかと思う。

 現に七海ちゃんの目は爛々と輝いているようだし、向こうで見守るみんなの目線も、今までとは違う、メインの部車を見るような目になっていたのだ。


 そして、私たちがガレージ前に戻ってくると、群がってきたみんなが一斉にドアを開けてなだれ込んできて


 「私に運転させてください!」

 「いえ、1年生の練習から先にしてください!」

 「いや、2年生が先でしょ!」


 と、ムーヴを巡って諍いになるという世にも珍しい状態になっていた。

 私は思わず笑い出しそうになるのを抑えながら


 「みんな、ケンカしないの! いつも通りの練習順でいくよ!」


 と私は言うと、3人を降ろしてから助手席に移った。

 ここでちょっと違和感を感じたのがフロントシートの形状が今までと変わった事で、今まではちょっと横にズレれば良かっただけなのに、セパレートシートになったため、大きく跨がなくてはならなくなったのだ。


 最初に乗った時から感じていた違和感があったんだけど、その原因はこれだという事が分かって無意識に嬉しくなってしまった。


 その日はいつものように教習車を併用しながら2年生の練習からはじめて、次に車をチェンジして1年生の練習をするんだけど、何故かムーヴの人気が高くて、凄くみんなが群がってきたんだ。


 今まではあんなに不人気だったのに、やっぱり自分達で作業したっていう事実があると、凄く愛着が湧くんだね。

 最近車関係の動画やDVDなんかを見るようになったんだけど、よく言われているのは、お金だけをかけて業者で車を作らせた人よりも、少しだけでも自分で手を入れた人の方が1台の車を大切に乗る率って高くなってるんだって。

 だから、今日のみんなにとってはムーヴが一番なんだよね。


 しかも、ミッションの載せ替えやブレーキのオーバーホール、ドライブシャフトの交換にアライメント調整まで、多岐にわたる重整備をやったんだから、みんなの思いもひとしおなんだよね。


 今までは、部内で一番のお荷物扱いされてきたムーヴだったけど、この小ささと軽さは、初心者向けの整備のテキストとして、ちょうど良いんじゃないかなって気がしてきたよ。


 「みんな、これからも大事に使おうね!」

 「ハイッ!!」


 私は、このみんなの充実しきった表情こそが、この部のひとつの醍醐味なんだなという事に気がついたんだ。

 他の部って、自分達が試合で使うボールやラケットなんかを、自分で作り上げたりはしないけど、自動車部の場合は、自分達が作り上げ、整備した車が大会で結果を出していくから、凄く楽しめる過程も多いし、やりがいも充実感も2度分あるんだよね。


 私は部活終了時に、いつもの木陰にムーヴを止めて戻ろうとした際、ふと見慣れたムーヴにちょっとドキッとするものを感じたんだ。

 チラッと窓から見えたセパレートシートと、覗き見えるタコメーター、更にはスタッドレス用のアルミホイールが、今までのムーヴには無いカッコ良さを感じさせてくれたんだよね。


 さて、これから何をこの車にしようかなぁ。


 

 

 お読み頂きありがとうございます。


 『続きが気になるっ!』『これからはムーヴの出番も増えるの?』など、少しでも『!』と思いましたら

 【評価、ブックマーク】頂けますと、大変嬉しく思います。

 よろしくお願いします。

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