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女子高生が『車部中』になっていく話  作者: メダリスト爺
冬支度とまさかのヘビー級整備編
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アイドルアップ

 舞華ちゃんは、私の手を取ってムーヴ運転席ドアを開けると


 「まずは、これで運転してみて、どう変わったのかを感じた上で、調整する所があればするってのが一番だよっ!」


 と言って私を乗せた後で助手席に乗り込むと言った。

 私は言われるがままにエンジンをかけて、練習コースへと車を乗り入れると、練習場の周回をいつものように走ってみた。


 すると、今までとは全く違う挙動を示すこの車に正直驚いた。

 今までのムーヴは、普通に走りはするんだけど、練習場の整備中に常にハンドルに手を添えていないと、左側へと流れていってしまうような動きがあったんだけど、それがすっかり姿を消した上に、ハンドルを切った方向にすんなりと車の先端が向いてくれるようになったのだ。


 私は、今までそれを練習場が未舗装だったからだと結論付けていたが、実はこの車の足回りが狂っていたのだという事には全く目を向けていなかったのだ。


 「どう? 真っ直ぐ走るようになって、ハンドルから手放しても真っ直ぐ走れば成功なんだけど」


 と言われて、私はちょっと浮かれていた心を引き締めて、今度は周回ではなく真っ直ぐに練習場を走り抜けていった。

 すると、今まで左に取られていたハンドルが真っ直ぐになり、とは言え、今度は右側に取られたりする事なくなっていた。

 そこで、試しにハンドルから手を放して、ギアチェンジさせずに車を走らせると、ムーヴは真っ直ぐに練習場を駆け抜けていった。


 「うん! 今までと全く違う動きになったよ。ありがとね!」


 私は、車を停めて舞華ちゃんの方を真っ直ぐ向いて言うと、舞華ちゃんは


 「そうか! それは良かったよ~。それじゃぁ、頬をスリスリしちゃお~」


 と言うと、いつもよりたくさん頬ずりしてきた。

 そして


 「じゃぁ、ちょっと私も運転させて貰って、様子見せて貰っても良い?」


 と言うと、私と席を入れ替わって車を走らせ始めた。

 舞華ちゃんの運転は、10周以上続いたけど、いつもの慎重な感じの運転から始まって、徐々にペースを上げていき、最後には結構な勢いで周回を駆け抜けていった。


 「へぇ~、このムーヴもマニュアルになるだけで、こんなに走りが変わるんだぇ~!」


 と感激していたよ。


 そして、今度は逆回りの周回を数周した後で


 「うん、凄く良くなってるね。間違いないよ。これで調整はバッチリだよ」


 と言ってニッコリすると、みんなの待っているスタート地点へと戻って行った。

 車が到着すると、外から柚月ちゃんが運転席のドアを開けて


 「マイ~! 1、2年生の練習時間の邪魔しない~!」

 「なんだよ柚月、これから燈梨とキャッキャウフフなドライブ……じゃなくて、アライメント調整の厳粛な打ち合わせがあるんだよ! 邪魔は柚菌の方だ!」

 「ユズキンって言うなよ~!」

 「うるさい柚菌! 菌のくせにバッチい手で触るな!」


 といつもの掛け合いで、2人は向こうへと消えていった。


 すると、七海ちゃん達がやって来て


 「私達もテスト走行したいっス!」


 と言った。

 そうだよね、初めて私たちの代で企画して作った車だもんね。

 私はニッコリとして頷くと、助手席に乗ってみんなに代わる代わる運転を楽しんでもらった。


 そこで気がついた事は、この車の走りに妙な点がある事だった。

 今回のアライメントは結構ドンピシャで、足回りに関しての妙な違和感は消えたんだけど、今度はそれに代わってエンジンに妙にギクシャクする点が出てくるようになったのだ。


 どこがと言われると、その症状を的確に言い当てられる自信が無いのだけど、どうも、停止際と、アイドリング時に意図せずに回転数が乱れてから上がってみたりするような、今までにない不整脈に見舞われたりするのだ。

 もう少しこの不整脈の振れ幅が上がると、エンストしてしまうかも……だけど、今のところの感じでは持ちこたえられそうだから、そこまで重大とは言えないんだけど……。


 すると、それを聞いていた舞華ちゃんが訊いてきた。


 「燈梨ぃ、MTに換えた時に|ECU《エンジン制御コンピューター》って換えた?」

 「えっ!?」


 私は思わず聞き返してしまった。

 今までの作業を思い返してみても、ECUを変えた記憶は全く無かったからだ。

 すると、舞華ちゃんは


 「セフィーロのミッションを載せ替えた時もそうだけど、一応MT用とAT用は品番が異なってる場合が多いから、それ用のに替えておくんだよ」


 と言った。

 更に舞華ちゃんの話を聞くと、どうやらアイドル系やその周辺の制御の細かい点が異なっているケースが多く、特に停止寸前にクラッチを切った際や、停止中に違和感となって現れる事が多いそうだ。

 

 「だから、あればMT用にサクッと変えておくのが良いと思うよ。無ければ、学校の構内で使ってる分には、さほど深刻な状況になる訳じゃないから無理しなくて良いと思うよ」


 舞華ちゃんに言われて思い出した事があった。

 確か、載せ替え一式として用意された中に、ECUも入っており、メーターを持ってきてくれた際のおじさんの手紙には、確かにコンピューターを交換するようにというアドバイスがあったのだ。


 その表情を見た舞華ちゃんは


 「どうやら、ECUもあるっぽいね。だったら、差し替えるだけだから、サクッとやっちゃおうよ」 

 

 とニヤッとして言った。

 私は、七海ちゃんの方を見たけど、七海ちゃんも


 「そうっス! それにメーターの交換作業も残ってるっス!」


 と言うと、みんなの試乗が終わるのを待って、メーターとECUの交換に入った。

 どちらも電装系の作業になるので、万一に備えてバッテリー端子を外してから作業に入った。

 

 ムーヴのECUは、グローブボックスを外したかなり奥の方に入っていて、探し出して取り外すのに一苦労だった。

 その手前にヒューズボックスがあったり……と、かなりスペース的に無理をして作ったんだなというのが、ひしひしと分かる車だった。

 七海ちゃんは、力技は得意でも、こういった細かい系の作業は苦手らしく、無理矢理引っ張ろうとしては沙綾ちゃんに止められていた。


 「やめるっスー!」

 「なにやってるのよ! バカナミッ! 壊したら元も子もないでしょっ!!」


 なんとか、取り外したECUとおじさんの持ってきたものは一見すると同じ物に見えるけど、貼ってある品番のシールの文字が微妙に違っており、やっぱり違うものなんだという事がよく分かるものだった。

 

 また細かい作業でECUを差し替えると、グローブボックスを元に戻した。

 この機会に取っ払っちゃおうという意見もあったんだけど、ムーヴは競技車ではなく構内の移動と荷物の運搬なんかがメインの車だから、物入れは多いに越したことはないという事で、残しておくことにしたんだ。


 これで、遂にECUも変わったね。

 そうなったら、今回のムーヴの整備に関しては、メーター交換を残すのみだね。

 


 お読み頂きありがとうございます。


 『続きが気になるっ!』『メーター交換で完成するの?』など、少しでも『!』と思いましたら

 【評価、ブックマーク】頂けますと、大変嬉しく思います。

 よろしく

 

 

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