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女子高生が『車部中』になっていく話  作者: メダリスト爺
冬支度とまさかのヘビー級整備編
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問題発覚

 さて、これでセフィーロから始まったタイヤ交換は終わったね。

 ついでに下回りを見ていった結果は、教習車、プレミオ、ムーヴのが結構状態が悪かったよ。


 プレミオと教習車は床下の状態は綺麗だけど、ブレーキローターがガタガタだし、プレミオは何かブーツが切れてグリスまみれになっていたよ。


 「これ、ドライブシャフトのブーツだね。交換しないと、じきに焼き付き起こすね」


 と優子ちゃんが言った。

 前輪駆動の場合は、操舵と駆動が一緒のタイヤで行われる関係上、前輪にかかる負担が大きく、ドライブシャフトのそれは後輪駆動とは比較にならないそうだ。

 その中でもこのダストブーツが破れると、中のグリスが飛び散るだけでなく、埃が摺動部に入って、グリスに付着して焼き付きを起こしてしまうそうだ。

 今は、グラウンドの整備車として未舗装路を走っている事から、埃や砂の入り方が半端じゃないので、早急に交換しないといけないって事だね。


 「恐らく、校長は結構ハンドルの全切りを繰り返してたんじゃないかな?」


 舞華ちゃんが両方を覗き込みながら言った。

 私も反対側のブーツを見てみたが、もう既に薄くひび割れが起こっていて、パックリと割けるのは時間の問題だと思われた。


 これを見ていて何故、こういうトラブルが起こるのかが理解できた。

 前輪駆動の場合は、駆動輪であることに加えて、ハンドルを切るためにこのブーツが伸びたり縮んだりを繰り返す事になるのだ。

 それが繰り返される事によって、最後はパックリと裂けてしまうんだけど、舞華ちゃんが言っていたのは、舵角を大きく与える事によってブーツの伸縮が激しくなると、寿命が縮まるという事なのだ。


 次の作業は、取り急ぎこの車のブーツの交換だね。

 問題は、今までと違ってこの車はトヨタの車だから、どこで部品を買ってくるかだね。


 「結構、通販で出てきますね」


 沙綾ちゃんが言うので、彼女のスマホを見ると、確かに通販サイトにはドライブシャフトブーツが多数販売されていた。

 あとは型式から品番さえ分かれば、入手はさほど難しくなさそうだね。


 プレミオは取り敢えず不調箇所はそのくらいだね。

 次にムーヴを見たけど、この車の下回りは結構凄いね。

 ……金属部に輝くものが無いし、色が全般的にくすんでるよ。それに何より


 「マフラーが腐って穴開きそうっスよ!」


 七海ちゃんの言った言葉が表すとおりだった。

 マフラーの底面が既にカサカサになっていて、その上でかさぶたの様にガサガサになっている箇所まであったのだ。

 その箇所を触ってみると、ボロボロと表面が落ちてきて、明らかに破れているのが明白である。


 穴が開いても車検を通すわけじゃないから、問題ないと言われればそうだが、学校の中で使っているものだから、そのままっていう訳にもいかないし、なによりもマフラーだけに音がうるさくなってしまうと思うのだ。


 そして、タイヤを外して下回りを見ていくと、次々に問題が出てきた。

 そもそも、マフラーを吊っているゴムのブッシュが劣化して伸びきり、いつ切れてもおかしくない状態になっているし、床をどこかに打ちつけて、錆が広がっている箇所もある。


 更に、プレミオと同じくドライブシャフトのブーツが破れているのだ。

 しかし、プレミオと違って、こちらはグリスの痕跡は無くてカラカラになっているように見える。

 

 「ムーヴも、ブーツ交換しないと……」

 「待った!」


 私が言った言葉に被せるように舞華ちゃんが言った。


 「これは、ブーツだけじゃなくて、ドライブシャフトごと交換しないとダメかな……」

 「ええっ!?」


 舞華ちゃんが言った言葉に、私は思わず驚いて返した。

 その様子を見た舞華ちゃんは、ある一点を指さした。

 それは、フロントガラスの助手席側に貼られた定期点検の丸いシールだった。


 「このムーヴは置いていかれちゃってたから、詳しい年式や点検履歴は分からないけど、最後の点検は3年前なんだよ。そこから何もしていないだろうから、もうご臨終してる可能性大だよ」


 舞華ちゃんが言うと、柚月ちゃんがそれに続いて言った。


 「それに~、ブーツの中のグリスの跡も無いから~、中のグリスも飛んじゃった状態って事だよ~。ヤバくない~?」


 それを聞いたみんなは黙っていたけど、七菜葉ちゃんが


 「そう言われてみると、そのムーヴが走ってる時、外からだと“カッカッカッ”って、かすかに聞こえてました」


 と思い出したように言うと、それに続いて頷いていた。

 それを考えると、私の素人考えでも、もう寿命が近づいているのは間違いないようだ。

 私は、スマホで検索をかけた結果を見ると


 「うん、それはご臨終前のドライブシャフトで聞かれる音だから、交換した方が良いね」


 と言うと、みんなは


 「ハイッ!」


 といつものような感じで答えてくれた。

 正直、結構ヘビー級の作業できついと思うんだけど、どうしてみんなはこうも前向きに捉えてるんだろう?


 「その方が自動車部らしくないですか?」

 「ただ乗りっぱなしの部じゃ、面白くないっス!」

 「整備するなら、普段やらないような整備の方が楽しいです!」


 と、口々に言っていた。

 私にはよく分からないけど、みんながそう言うなら問題ないか……と思って、七海ちゃんとこの事を報告に教師水野を訪ねる事にした。


 その際にプレミオのフロントガラスを見ると、きちんと今年までの期限になっている定期点検のステッカーが貼られていた。

 なるほど、きちんと点検されているから、片側のブーツが破れた直後で発見されたんだね。

 私は、定期点検はムダだなんて言うネットの書き込みをよく見かけるが、こと、このようになっている例を目の当たりにすると、一概にそうも言えないという事がよく分かってしまった。

 あのムーヴもきちんと点検されていれば、ブーツ交換で済んでいたのかもしれないと思うと……。


 教師水野の所に行って報告をすると


 「了解した。ムーヴに関しては、中古部品を活用すると思うが、頼みます」


 という、いつものあっさりした返事が返ってきた。

 ムーヴに関する温度感が低いのは、あの状態だというのと、元々放置されていった車で捨てる訳にもいかず……という経緯でやって来た車なので仕方ないとは思うんだけど、なんだかなぁ……と思ってしまう。


 ガレージに戻って、その話をすると舞華ちゃんが笑いながら


 「仕方ないよ。あれには最初から困ってたからね~」

 

 と言っていた。

 一応学校にもその経緯は説明し、処分して欲しいと教師水野は訴えたそうだが、当時は部員数が少なかった事などから聞き入れられず、また、学校側に貸しを作って『廃品利用というエコ活動に尽力した』というお墨付きまで貰ってしまえば……という打算もあって引き受けた車なので、あまり部費は割けないという事情もあるそうだ。


 確かに、あの車は校内移動には便利だけど、部活の本筋からは逸脱する使い方の上、競技にも練習にも使えない車なので、教師水野の目論見に沿っていくのが一番の得策のように思える。


 「まぁ、納得いかない部分はあっても、学校に良い顔しておくってのも、部活動のうちだからさ」


 舞華ちゃんがニコッとして言いながら私の肩をポンと叩いた。

 すると、私の表情が納得できないものに映ったのか


 「自分も空手部で、特殊詐欺の啓発運動の着ぐるみに入らされたっス!」

 「レスリング部は、屋上掃除を毎月やらされましたよ。意味分からない」

 「ボディビル同好会は、蛍光灯の交換に駆り出されました」

 「キックボクシング同好会なんて、幼稚園の園庭の砂場の慣らし作業ですよ。『足を使うから』って言われて……」


 と、みんなが口々に学校に()()()()()話をはじめて、いつの間にかその話題に花が咲いてしまった。


 やっぱり部活動って、色々あるんだね。


 「ちなみに、女子サッカー部は……」

 

 お読み頂きありがとうございます。


 『続きが気になるっ!』『他の部活動も雑用やらされてたんだ!』など、少しでも『!』と思いましたら

 【評価、ブックマーク】頂けますと、大変嬉しく思います。

 よろしくお願いします。

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