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女子高生が『車部中』になっていく話  作者: メダリスト爺
冬支度とまさかのヘビー級整備編
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解体屋での謀反

 翌日、私と七海ちゃん、沙綾ちゃんの自動車部三役は、昼休みに教師水野から呼び出しを受けた。

 まぁ、三役なんて御大層な名前だけど、正直なところ、雑用係と言っても過言じゃないんだよね。

 あと、職員室に出入りする部員数を絞り込んで欲しいという要望が教師水野から出ていたので、それに対応するという意味合いもあっての今回の三役決定と相成った。


 「あぁ、来て貰って申し訳ないね。例のムーヴの部品に関しては解体所で調達して来て欲しい。あとで話を通しておくから、舞華君と一緒に行ってきたまえ」


 教師水野はそう言うと、地図を手書きして渡した。

 でも、舞華ちゃんが一緒なら彼女が知ってると思ったのは、放課後になってからの事だった。


 放課後になると、舞華ちゃんが迎えに来たので、私と七海ちゃんは解体屋さんへ、沙綾ちゃんは今日の活動の監督に向かって貰った。

 今日は3年生にも来てもらっていて、同乗練習がいつもより手厚くできるのでお願いする事にした。

 どうしても、私しか免許を持っていないため、普段の活動では運転練習に限りがあるので、正直3年生が出てくれる日は助かっている面もある。


 今日は、ムーヴのマフラーやドライブシャフトを積むことを想定して、バンのサファリで解体屋さんへと向かった。

 解体屋さんには以前に何度か舞華ちゃんに連れられて行った事はあるけど、活動として正式に行くのは今日が初めてだ。学校よりも更に山を上って行った場所に存在する解体屋さんは、結構広大で、部品も豊富にあるのだ。


 入口は開いており、事務所前の駐車場に車を止めると、舞華ちゃんを先頭に入って行った。


 「こんにちは~!」

 「おおっ! 来たねぇ! 今日は部にある軽四の部品だって?」


 舞華ちゃんが言うと、奥からツナギ姿でキャップを被り、口ひげを生やしたおじさんが愛想よく出てきた。

 以前に聞いたところによると、このおじさんがここの経営者らしい。

 教師水野との関係は不明だが、いつも教師水野の一声で、このおじさんから部車や部品を格安で提供して貰っており、部とは切っても切れない関係にある解体屋さんらしい。


 今ある部車の大半はここからやって来ており、エッセやノートをはじめ、この間のセフィーロやシルビアなどもここの出身なのだ。


 舞華ちゃんは、そのままのトーンで


 「私らは、徐々に引退だから今日は付き添いで、詳細はこっちの2年生からお願いね」


 と私達に話しを向けたため、私はおじさんに今回の話を説明した。

 私の話を聞いたおじさんは、考え込むような仕草で言った。


 「なるほどね。2世代前のムーヴか……」

 「大丈夫だよ、ねぇ、おじさん。あの辺って、今一番回ってきてるでしょ?」


 舞華ちゃんが畳みかけるように言った。

 舞華ちゃん曰く、2~3世代前の車が最も解体所には回ってくるのだという。特にメジャーブランドの軽ともなれば、公共交通のインフラが脆弱なこの辺では足代わりのセカンドカーとして使い倒されたものが、買い換えでゴロゴロと入ってきているそうだ。


 おじさんは、しばらくうーんと唸っていたが


 「どうだろう? ドラシャはあったかなぁ?」


 と言って黙り込んでしまった。

 どうも怪しいようだ。

 

 「ムーヴは結構回ってきたんだが、ドラシャがダメなのが多かったからなぁ……それに、3人くらい買いに来た人がいるから、在庫あるかなぁ?」


 おじさんは頭を掻きながら言うと、先頭に立って在庫を置いている倉庫へと連れていってくれた。

 倉庫は、4トントラックのパネルで、脇には運送会社のロゴマークが描かれていた跡があった。


 中にはカーゴテナーとスチール棚があって、そこには無数の部品がナンバリングされて並べられていた。


 「マフラーはたくさんあるから、好きなの持って行ってよ!」


 と言われたので、後でじっくり選別する事にして、本題のドライブシャフトを探してみたんだけど、これがおじさんの読み通り、本当に無かったんだよ。

 やっぱり新品買うしかないかなぁ……と思っていたところ、舞華ちゃんから


 「正直、あのムーヴは素性も怪しいし、車体番号通りの部品か否かも分からないから、新品は怖いかもね……」


 と言われた。

 どうやら、夏前にあのムーヴを整備した際に、優子ちゃんから、前期後期の違いのある部品が逆に取り付けられていたと聞かされて、車体番号で部品検索掛けたら違う部品が指定された事があったそうだ。


 「理由は分からないけど、あのムーヴはエンジンを降ろしてる可能性もあるんだよね」

 「ええっ!?」


 舞華ちゃんの一言に、私と七海ちゃんは思わず言った。

 舞華ちゃんの話によると、フロント周りに鈑金した形跡もあるために、もしかすると、新車に近い時期に大破する事故を起こしてエンジンが脱落し、修理した際に中古エンジンに載せ替えたのではないか? という推測までできてしまうそうだ。


 「困ったっス……」

 「とは言え、ドライブシャフトはエンジンとミッションが一致してれば殆ど同じだけどね……」


 七海ちゃんが沈んでしまったのを見て、舞華ちゃんがフォローに回った。


 「そうだ、あのムーヴのエンジンは、エッセと一緒だって聞いたっス! だから、エッセ用にしては?」

 「でも、他車種用にするんだったら、専用にした方が良くない? 寸法も違うだろうし……」


 私が言ったところにおじさんがやって来て言った。


 「リビルトなら、在庫は豊富だからそうしよう。中古は信頼性がおけないから、感心しないよ。部長さんの言う通り新品が良いんだけど、その車には予算的にきついなら、リビルトが良いよ! 沙和子には言っておくから」


 なんであのおじさんは、教師水野の事を下の名前で呼ぶのかちょっと気になったけど、そこは大したことには思えなかったので、続きを聞くと、リビルトとは中古再生品の事で、中身をオーバーホールしたほぼ新品と変わらないものだそうだ。

 そして、価格は中古品と新品の中間くらいに収まるので、こういった予算重視で修理する際にはピッタリなのだそうだ。


 それじゃぁ、そうしようと思っていたところ、七海ちゃんがフラフラと表に出ていっちゃったよ。

 私はそれを追うと、七海ちゃんはそこにあったシルバーのムーヴをまじまじと眺めていた。

 そのムーヴは追突されたみたいで、バックドアがひしゃげてガラスが粉々になっていたけど、ボディは綺麗だったので、大切に乗られていたんだろうね。部車のムーヴとは大違いだね。


 そう思っていたところ、七海ちゃんが言った。


 「これから貰っていけば良いんじゃないっスか?」

 

 すると、おじさんが事務所から出てきて


 「ダメなんだそれ、見てみれば分かるよ」


 と室内を指さしていたので、私は覗くと、その理由が分かった。


 「何でっスか?」

 「うん、七海ちゃん。このムーヴは5速マニュアルなんだよ。だから無理なんだよ」


 七海ちゃんの問いに私は答えた。

 ウチの部のムーヴのインパネの下部にあるシフトレバーがない代わりに、このムーヴの床からは細長いシフトレバーが生えていて、先端には見慣れたシフトパターンが刻まれていた。

 私は驚いた。このムーヴって、マニュアル車の設定があったんだね。シフトレバーがインパネシフトだから、てっきりオートマしかないものだと思っていたよ。


 舞華ちゃん曰く、この辺などでも結構年配者の中にはマニュアルしか運転できないという人が多いため、メーカーもごく一部に限って残していたそうで、これはその名残のようだ。

 ちなみに、現行モデルになるとワゴンRにMT車が残っているらしい。


 舞華ちゃんの話を聞いて納得したところで、ムーヴの窓に顔をつけて中を覗いていた七海ちゃんがおもむろに言った。


 「燈梨さん! これにしましょう!」

 「七海ちゃん。さっきも言ったでしょ! リビルトにするの。それにこの車のだと長さが違う可能性が大だから、きちんと専用品を買うんだよ」


 私は、まだこの車に拘る七海ちゃんを少し諭すように言って含めた。

 すると次の瞬間、七海ちゃんが発した言葉に私は驚いてしまった。


 「違うっス! この車のミッションごと移植するっス!」




 お読み頂きありがとうございます。


 『続きが気になるっ!』『ムーヴのミッション交換なんてできるの?』など、少しでも『!』と思いましたら

 【評価、ブックマーク】頂けますと、大変嬉しく思います。

 よろしくお願いします。

 

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