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バニティミラー

 女子力と車について考え込んでいると、突然背後から首に腕を回されてキュッと絞められると同時に


 「あかり~。姉さんが来てあげてるのに、なにシカトしてるんだよ~!」


 と背後から声がして振り向くと、そこには唯花(ゆいか)さんがいた。

 竜崎唯花さん。沙織さんがショップ店員だった頃の常連の、沙織さんを慕っていたJKグループの一員で、今は大学生だ。

 肩までの髪の下半分はちょっとウェーブがかかっていて、明るめの茶髪に染められている。そして、沙織さん同様にサイドテールにしていて、沙織さんの妹と言っても通用するイメージの人だ。

 明るくて、ちょっとキンキンと響く声も特徴的だ。


 そう言えば昨日沙織さんが、唯花さん達を連れて今日も来るって言っていたような気がする。

 なので見回してみると、朋美さん、フー子さん、ミサキさんも来ていた。


 「あ、みんな来てくれたんだね。桃華(とうか)さんは?」

 「燈華は今回帰省できないから来られないんだって、燈梨に宜しく伝えておいてって」


 私が訊くと、ミサキさんが答えた。

 辻堂美咲(つじどうみさき)さん。唯花さんと同じグループの一員だ。

 サラサラの黒髪のロングヘアで、色白な印象が唯花さんとは正対称なイメージを受ける。そして、胸が大きい。


 「燈梨ぃ、これからちょっと文化祭、回ろうぜい」


 と言って唯花さんを引きはがして私の肩に手を乗せてきたのは戸倉風子(とくらふうこ)さん。

黒に近い茶髪でショートボブ、グループ中で最も小柄ながら、暴れん坊で、いつも子供じみた行動に出ては、他の4人から諫め(いさめ)られている。


 「そうだよ。折角なんだから、みんなで楽しまないと」


 と背後で優しく言ったのは伊丹朋美(いたみともみ)さん。

 黒髪をロングにしているのはミサキさんと一緒なのだが、朋美さんはバスケをやっていたために背が高くて、ちょっとだけ筋肉質なのだ。

 唯花さんと幼馴染で、昔は泣き虫だったと唯花さんは言っているが、今は5人の中の抑え役になっている。


 私は、周りを見回しながら


 「でも、私がいないとブースが回らないから……」


 と言うと、フー子さんの後ろから舞華ちゃんが姿を現して


 「燈梨ぃ、ここに詰めてばかりいないで、少しは他のところも見回らないと、文化祭の意味が無いよ。ここで、色々な所を見て来年の参考にするんだよ」


 と言って、私の腕を掴むと


 「じゃ、ななみん達も交代で見回ってきてよ」


 と言って向こうへと引っ張っていった。

 私は舞華ちゃんと朋美さんに両脇を抱えられて、バスケ部がやっているお化け屋敷まで連れていかれた。


 「やっぱり基本はお化け屋敷だよね~」

 「だね、私らが高校生の頃も、最初の出し物はお化け屋敷だったもんね」


 舞華ちゃんと朋美さんがすっかり打ち解けて言いながら、みんなでお化け屋敷へと入っていった。

 教室を机で仕切って迷路状にし、暗くして驚かすという定番のスタイルのようだけど、お化け屋敷初体験の私には、充分迫力のあるものだった。

 

 ただ、途中でフー子さんがお化け屋敷を仕切っている段ボールの壁に穴をあけて向こうを覗こうとした事で、ちょっとした騒ぎになり、沙織さんがフー子さんを連れて行って謝っている間に、私たちは近くにあったテニス部のカフェで休憩しつつ、待つことにした。


 そこで、私はさっきの車と女子力の件について、みんなに訊ねてみた。

 ミサキさんは考えながら言った。


 「別に、私だって自分の車に女子力をつけようなんて意識してないから、何もしてないよ」

 「そうそう、美咲のローレルなんて、車種のせいもあるけど、おじさんの車に勘違いされる事もあるくらいだしね」


 唯花さんはそう言うと、ミサキさんと顔を見合わせた後でふと思い出したように言った。


 「でも、履かせてるホイールのセンスが女子力あるって、言われてた事はあったね」


 それを聞いて朋美さんも言った。


 「別に意識したわけじゃないけど、トータルのコーディネートが女子っぽいって言われる事はあるよね。それが女子力じゃない?」


 と言って、自分のスカイラインRSの画像をケータイに出して見せてくれた。

 朋美さんのスカイラインはR30後期RS、世に言う鉄仮面と呼ばれるモデルで、お祖父さんから譲って貰ったものだ。

 グレーと黒のツートンカラーは適度に引き締まっているが、確かに他とは違う雰囲気は出ている。


 それを見た舞華ちゃんが


 「鉄仮面は結構兄貴が持ってた本とかで見た事あるけど、朋美さんのは足元の引き締め方が独特なんだ。だから雰囲気が違って見えるんだよ」


 と言うと、朋美さんがニコッとして


 「そうみたいなんだよ。私のセンスで車高を決めていって、ホイールを変えたら、自然とそういう雰囲気になったんだよ」


 と言った。

 私は改めて見てみると、朋美さんのRSは確かにノーマルより車高は低そうだけど、過度でなく、さりげなく低い程度のものだった。

 そして、ホイールも純正のサイズより大きいけど、過度に大きく無く、そして張り出し過ぎてもなく適度な主張をしている明るめのブロンズカラーで、車高とカラーリングの妙で、凄く引き締まって見えるのだ。


 「トモのは結構渋いんだよ。鉄仮面っていうとノーマルか、いかにもって旧車系に走るか、妙にデカすぎる現代風かの二極化だからさ、このセンスは他に見ないよね」


 と、唯花さんが褒めていた。

 その話を聞いていたミサキさんが


 「そういうのって室内にも出ると思うよ。ホラっ、これがみんなの車の室内」


 と言って、桃華さんも含めたみんなの車の室内の画像を見せてくれた。


 「マジかよ美咲ー。みんなの車の室内撮るとか、どんだけストーカーなんだよ」


 私は、みんなの室内もまじまじと見た。

 特に何かが付けられているとか、替えられているわけではないけど、見ていて女子の車って気がするのは確かだ。

 さり気ない物の置き方とか、芳香剤のチョイスとか、そういうところに出てくるのではないか思うのと、総じて私の周辺の女子はゴテゴテとカー用品をつけたりしないというところに女子力を感じるのだというところに気がついた。


 「そうそう、燈梨ちゃん。私の車はバニティミラーの照明をちょっと変えてるんだよ。これが、女子力かな」


 ミサキさんがちょっと微笑みながら言った言葉に、私は反応してしまった。


 「バニティミラーに照明なんてあるんですか?」


 私の反応を聞いて、ミサキさんは“しまった”というような表情になった。

 

 「だから美咲はさ、自分をスタンダードに考え過ぎなんだよ。バニティミラーの照明なんて上級車にしかないんだよ」


 と唯花さんが言って私の肩を叩くと


 「でも、私の車はカー用品店で売ってるLED照明を工夫して美咲の車みたいなバニティミラー照明作ってみたんだよ。燈梨もやってみようよ。姉さんが手伝うから」


 と言ってくれたのだが、そこにも問題があった。


 「私の車、運転席にバニティミラーが無いんです……」


 私はポツリと言い、唯花さんの顔から血の気が引いてしまった。

 シルビアはS13の後期型とS15には運転席にもバニティミラーが付いているのだが、S14には何故か設定されていないのだ。

 なので、工夫して照明がついても助手席だけしかつけられず、私の側にはついていないのだ。


 すると、一部始終を聞いていた舞華ちゃんが


 「燈梨、R32も運転席にバニティミラー無かったんだけど、部車にロールバー組む時に要らなくなった助手席サンバイザー分解して、運転席側を加工して付けたよ」


 と言ったので、私は思わず身を乗り出して


 「そうなの!?」


 と聞いてしまった。

 それができるなら、私も解体屋さんに行ってS14のサンバイザーを手に入れて来ないと……とついつい前のめりになってしまったのだ。


 ふと気がつくと、唯花さんと朋美さん、ミサキさんがそんな私をニヤニヤしながら眺めていて、朋美さんが


 「今の燈梨ちゃんだって、車に女子力、発揮してるじゃん」


 と言った。

 そうなんだ。車に女子力って、別に意識してやる事じゃなくて、私たち車に乗る女子が日常でやっている事が、まんま女子力なんだと気がついた。

 でも、それが展示にどう活かされるのかは、私にもまだ分からなかった。

 


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