ミーティング
5人でお昼にしながら、今日の展示の問題点についての話になった。
綾香や沙織さんは外部の人間になるので、彼女たちの意見は充分に参考になった。
それによると、校門前のブースの結果発表をメインにしたレイアウト案は凄く良いので、ビジュアル的に訴えるものがあれば尚良いという、沙綾ちゃんが見つけた点と共通だった。
更に沙織さんの意見では、狙いによって人員配置を変えた方が良いという実際の動きに即した意見も出た。
さすがショップ店員歴の長い沙織さんらしく、イベント会場に来る来客動向をしっかりと把握しての的確な判断と指示は流石のものだった。
確かに振り返ってみると、見に来ている層は頼みもしないのにベラベラと喋くるオタク層と、子供連れの家族層が多く、そこにちょっとだけ予備軍とみられる中学生っぽい層がいるのだけど、オタク層に人員が割かれている間に、取り込みたい残りの層に声掛けできないという構造的欠陥があったのだ。
「オタクは何も言わなくても勝手に納得していくから適度にスルーで、その分の人員を待機させて狙った層に向けて案内させるの。出来れば案内のビラに飴でも付けて配布すれば効果的ね」
沙織さん曰く、案内ビラは確かに捨てられやすいけど、100人配って5人家まで持ち帰れば成功というレベルなので、そのメンタルでとにかく配っていく感じでやっていけば良いそうだ。
それを成功させるために、飴なんかがあってすぐ捨てられないようにできれば尚良いらしい。
すると、綾香が
「それとね燈梨。外野からの意見として、スポーツ系の車以外にも色々な車が見られた方が、一般受けはすると思うよ」
と言い、更に沙織さんが
「更に言うと、デモンストレーション的なものができると、集客効果は上がるのよね。まぁ、高校だから車走らせるのは無理だろうけど、なにかあると効果的よ」
と言った。
確かに2人の意見は外部からの忌憚のないものだけに非常に参考になると思った。
これを持ち帰ってみんなとミーティングをする必要があるなと思った。
お昼が終わると、私と舞華ちゃん、柚月ちゃんは緊急ミーティングを招集するべく、部のブースへと戻り、沙織さんは綾香と一緒に文化祭巡りに行った。
ブースへと戻ると、お昼休みに交代で行っている人員もいるため、2班に分けてミーティングをやる事にした。
まずは、沙綾ちゃんと七海ちゃんを呼び戻して最初のミーティングでは、主に校門前のビジュアル化について話し合った。
「さっき先生と話し合ったら、大きめのモニターが用意できるって言ってたから、少なくとも陸上部のやつには勝てるんじゃないかな? って思うんだ」
私が言うと、おおーっという歓声ががった。
そして、沙綾ちゃんが
「燈梨さん。確かに水野は大きいって言ったんですね?」
と念を押すように聞くため
「確か『最も大きい』って言ってたよ」
と教師水野の言葉を思い出しながら言うと、沙綾ちゃん達は色めき立ち
「燈梨さん! 明日の展示は期待しててくださいよ!」
「凄い展示にしてみせるっス!」
と沙綾ちゃんと七海ちゃんが胸を張って言ったので、校門前のブースは問題なさそうだ。
すると、舞華ちゃんが
「沙綾ちゃん。メインのブースでも流したいから、複製できるかな?」
と訊くと
「大丈夫です! 前から部の紹介を動画サイトに載せようと思って作ってたのもあるので、一緒に編集して渡します」
と沙綾ちゃんが答えてとんとん拍子に話は進んで、ブース関連のレイアウト変更は終わり、もう1つの課題である客層に分けての案内についての話になった。
「確かに、オタクは黙っていても舐めるように見ていって、何も無ければそのまま一人で頷いて画像撮って終わりなので、基本声掛けしない方が良いと思います」
午前中は精力的に各ブースに立って声掛けをしていた1年生の志帆ちゃんが言った。そして、同じく声掛けをしていた1年生の塔子ちゃんと真由ちゃんからも
「オタク層は、声をかけても眉をひそめて『邪魔するなよ』みたいな反応の人が多いので、自分の世界を邪魔しない方が良いと思います」
「それに声をかけると、ここぞとばかりにマニア度の高い話を延々としてくるので、正直、他のお客さんに声がけできなくなっちゃうんですよ」
これはやっぱり、沙織さん達の言う通り静かに見ているオタク層は、好きなだけ見させておけば良いって感じだよね。
ホラ、蜂だって飛んでる分には害がないけど、下手に手出しすると刺されたりするからね、それと同じ感覚で良いんじゃないかな。
すると舞華ちゃんが言った。
「燈梨の言った感じでやっていけば良いよ~。もし、ウザ絡みするのがいれば、その時は柚月の出番だからさ」
「なんで、私なんだよ~」
「当たり前だろー。何のために部にいると思ってるんだよ。柚月は自動車部のクレーム担当だろうが」
「そんな担当聞いてない~!」
その言葉に反応して、いつもの掛け合いを始めた2人をよそに話しを再開しようとしたところに、優子ちゃんが来て
「とにかく、今部長が言った通りにやっていって、もし、ウザ絡みする人がいたら、冗談じゃなく柚月をはじめとした3年生で対処するから声かけてね」
としめると
「ハイッ!!」
と元気の良い……というか良すぎる返事が返ってきた。
格闘技連合出身の部……という事をまざまざと感じさせられる瞬間だった。
そして、2つ目の問題点である、デモンストレーションと、多彩な展示車に関して話し合ってみた。
確かに私たち内部の人間からすると、今の部車が偏っているとは思えないけど、しかし外から見た時にそう映っているとは限らないのだ。
なにかセールスポイントになるような偏りのない車が無いか……と思った時に、私には1台だけ思い浮かぶ車があった。
「私の案としては、サファリも展示してみない?」
第二練習場はダートコースのため、教師水野が救援用にと入手してきた日産サファリがあるのだ。
現に柚月ちゃんが第二練習場の土手にGTEで乗り上げてしまった時、無事救援に成功した実績もある頼もしい車なんだけど、やっぱりあの背の高さと、学生競技では出られるものが無いため、部内の『はたらく車』扱いなのだ。
でも、外観の赤とグレーのツートンカラーと言い、フロントバンパーに着いたごついウインチと言い、一般客の目を惹くような気がするのだ。
すると、やはり七海ちゃんが
「でも、ウチはオフロード走行するわけじゃないし、この辺で4駆はありふれてるから、場所食うだけじゃないっスかね?」
と言って、同意する娘達が出てきた。
その時、舞華ちゃんが
「でも、それってオタク層の見方なんだよね。普通の女子はSUVとか好きだし、それにサファリは本格クロスカントリーでゴツいし、ライトも丸くてレトロっぽいから、一般層に受けると思うんだよね」
と私の援護に入ってくれた。
すると、柚月ちゃんも
「そうそう~。それにさ~、今年初めてなんだから失敗したらしたで良くない~? 初年度から守りに入る試合なんて~見てて面白くないでしょ~?」
と鋭い目つきで言うと、反対意見は一瞬で霧散した。
すると、舞華ちゃんが私に目配せして合図をしたので
「それで、デモンストレーションはサファリのウインチを使って、1台車を引っ張るってのを考えてるんだ。これなら周辺を立ち入り規制するだけで許可も取れるだろうし、場所もそんなに食わないしね」
と言うと、さっきまで展示に懐疑的だった七海ちゃん達も目を輝かせながら
「それ、いいっス! 早速準備しましょう!!」
と言って賛成してくれた。
よしっ!! 明日に向けて準備頑張るよ!!




