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ひつじ雲  作者: 桜咲
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「……ん?知らない天じょ……」


 ……天井とか無いし、大自然のど真ん中だったわココ


「いや、何処だよ」


 しーーーん……。


「……」


 ……えーっと?取り敢えず廃ビルから落ちたのは覚えてる。それから……それから?いやいや、廃ビルの屋上から落ちたんだからもう死ぬばっかりだよね。


 そうか、ここは天国か。

 それにしては五感もあるし、風景以外何も変わらないけど……うん、まぁ天国かはこの際どうでもいいや。


 白いパーカーにインディゴのジーンズ、キャメルのショートブーツ……ん、記憶通り。後、リュックの中身は半分になった水とー、財布と携帯、タオルとメモ帳とペン……少なッ!非常食とか持っとけば良かった……ッ!!


 ……マズい、餓死する前に食料(くれる良い人)を見付けないと!!


「それにしても……見渡す限り何も無いとか」


 初っ端からハードモードとか大概にしろよッ!?


 ねぇ、何で草原の草は小麦色なの?食べれないくせに何でその色で生えて来たの?燃やされたいの?


 木は……あぁ、普通に緑だ。良かった。


 ヤバい混乱して頭が回らない。


 どうしよう……日が暮れる前に移動した方が良いと分かってるのに。ただ、何だろう?どうしても、ここから動く気になれない。



 とんッと、立ち上がってもまた大木に背を預け、感情を持て余した少女は……ただぼんやりと、風に揺られ金色に波打つ草原を眺めていた。



 綺麗だなー…ん?あそこだけ色が濃くなってる……こっちに移動してるから、雲でもあるのかな?鳥にしては大きいし……ここからじゃ大木の葉に隠れて上は見えないけど。あぁ、でもまるでー…


「草原の中を飛んでるみたい……なんて」


 ザザァッ


「……うわぁ」


 何か出た……!!え、本当に飛んでたの?膝丈位の高さしかない草原の中を?あんな巨大な鳥が??


 凄いペラペラなんですけど……ッ!?あれ何!?



 巨大な怪鳥が少女の方に向かいながら、口を大きく開く。



 まさか……破壊光線!?ちょ、辞めてあげて!!死人が出るから!!


「ヤバい私死んだ……」





 ソォォォナノォォオオアッ!?


 奇っ怪な咆哮が辺りに響き渡った。





「あ、やっぱ死なないわ……」


 いやいやいや、何を知ったらそんなにびっくり出来るんだよ……え、それ咆哮なの?知らない鳥だからって何やってもいいと思うなよ……!!


 え、待って。凄い早さで近寄って来るんですけど!!


「……ッとにかくここから逃げ「お嬢さん、そこから動かないでもらえるかの?」や、でもこのままじゃ……ッ!!」



 唐突に背後から聞こえた声に、少女は思わず足を止めて後ろを振り返ってしまう。しかし其処にはただ、さっきまで背を預けていた大木が見えるのみ。一瞬、大木の背後に誰かいるのかと逡巡したが、声を掛ける余裕はもう無い。振り返った少女の先には、怪鳥が目前へと迫っていた。


 転がるように走れば間に合う距離……だが少女は大地に縫い止められたかのように動かず、ただ静かに瞳を閉じる。



 ……仕方ない、か。逃げる事を諦めたんじゃ無い。ただ聞こえた声が、余りにも優しかったからー…



 極限の状態で、少女が生きる為に選んだのは、自分の足じゃなく、姿の見え無い声の主を信じる事だった。


「ふむ、有難い」




 ドォォォオオンッ!!




 ……何が、起こったんだろう……?


 花火を間近で見たような、身体の芯まで響く音と爆風に、身体を庇いながら薄目を開けると……怪鳥が何かに弾かれたように飛んで来た方向へと吹き飛んでいた。




 ドォォォァナノォォオオッ!!



 お、怒ってる…!めっちゃ怒ってるよ……!!



 先程の爆風の所為か、大木から雨のように葉と折れた小枝が降り注ぐ中、辺りを見回しても声の主は見当たらず……しかし代わりに、自分が大木を覆うシャボン玉みたいな薄い膜で、怪鳥から守られている事に気付く。


 魔法かと、考えたのは一瞬で……少女の目前にはまた、目を血走らせた怪鳥が迫っていた。




 ドォォォオオンー…



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