第5章 ケプラン商業国
旅行までの1週間はあっという間に経ち、遂にケプラン商業国に行く朝になった。
行きは船旅で半日。幾つかの河が集まる中洲にケプラン商業国がある。
船旅はレセップの葉さえあれば、乗り切れると思ってた俺達の前に現れた船は渓流下りのそれだった。皆の視線が先生方に集まる。
隣のクラスのガタイの良い男性教師が爽やかに言った。
「今年は寄付がほぼなかったから、激安ツアーになった!船頭さんの指示に従わないと水を被って寒い目に合うぞ!ハハハ」
俺達はバラされないように固まって川船に乗り込み船の縁から縁へ渡してるだけの棒に座った。
「よおし、乗り込んだか?!坊主共!足元に防水布があるから、流れが激しくなったらかぶってろ!」
「「「「「「「「ええ~~ーっ?!」」」」」」」」」
説明それだけ?!
「ま、景色が綺麗じゃから、見るもよし!最初から最後まで防水布を被ってるもよし!好きにしろ!ガハハ」
市街地を下る時はゆっくりで川べりの植樹した雪柳が緑に萌えていて優美で綺麗だったが、リチルを出ると荒々しい川の流れに悲鳴が上がる。防水布をしっかり被っていたのに背中が濡れた。……クソがぁあ!!
ちなみにこんな目に遭ったことないクラスメイト達は皆、ずぶ濡れで大号泣している。
船頭さん3人は合羽っぽい物を着ているので大丈夫みたいだ。何時間か経ったのか、流れが穏やかで景色が綺麗な場所に出た。
チェンバーはクラスメイトの服を生活魔法のドライで乾かしてあげている。
「まだ、急流が続くぞ?魔法使いの坊主。疲れるだけじゃ!」
しかし、チェンバーは16人全員の服を乾かして寝落ちした。ティムと俺の膝に横たわるようにチェンバーを抱えて防水布を体を丸めて被って今度は水が掛からなかった!
先生と女の子達はドラゴン便で随分早く関所の前の河原に来ていたようで、「やっときた!」「もう、待ちくたびれたんだからね!」などと心無い言葉を掛けられ女の子達が嫌いになった。
チェンバーはティムが背負っている。
魔力枯渇だ。
先生達に魔力を吹き込まれてチェンバーは目を覚ました。
関所に着いたら直ぐ入国出来ると思ってたら、入国審査に半日かかり、その間河原で野営なのだという。
「アンタ達が遅かったからよ!」
また、女の子達はギャーギャー言ってる。
俺達3人は炊き出しを始めた。教師達は天幕を張っている。グランデール先生が、女の子達に喝を入れている。
「男の子達は貴女達の代わりに川を下るコースを受け入れたのに、貴女達と来たら、男の子達を責めるばかりで何もしようとしない!ご覧なさい!男の子なのに、進んで炊き出しをしてくれてる子もいるのよ!!
これ以上ごちゃごちゃ言うなら帰りは川に沿って歩いて帰って来なさい!」
女の子達はギャン泣きした。
恐るべしグランデール先生。ありがとうグランデール先生!
魔法カバンには、テントまで入っていて、俺が組み立てる間にティムとチェンバーが炊き込みご飯を炊いて豚汁を作ってくれていた。
お風呂はドラム缶の五右衛門風呂で、服が濡れて冷えた男子から順番に入らせた。
俺は薪当番。お風呂のお世話係。
お風呂から出た男子生徒をタオルで拭き着替えさせたら、テントの中に入れる。
ちなみにこのテント見た目の20倍くらいの広さがある。雑魚寝したら、60名近く入るから男子生徒は全員入れる事にした。
床がエアクッションで柔らかい上に上等な絨毯が敷いてあってとても温かい。夕食を食べた生徒から隅に寄って寝てもらった。布団は二人で一つ。分け合ってもらった。
チェンバーを眠らせてティムと俺は見張り番と朝食の用意。のんびりスフレパンケーキを焼く。交替でお風呂にも入ったし、眠気が押し寄せるが負けるものか!
と思ってたらティムが寝落ちした。チェンバーの隣りに入れる。
急いで竃の側にもどる。火は消えて無かったがスフレパンケーキが真っ黒焦げだ。
上が無事だったので食べてたらチェンバーが起きて来たから半分あげた。
アクビが出そうになって我慢しているとチェンバーにフライパンを取られた。
「少し寝てき給え」
お見通しだった。
「うん、じゃあ、少し」
ティムの側で寝たら腹に蹴りが入って起こされた。
ティムよ、寝相が悪いの何とかしろ。
外に出るとかなり寒かったのでチェンバーと俺のコートを持って外に出る。
チェンバーの側には昼間ギャーギャー言ってた女子達2~3人がいて、チェンバーの機嫌がかなり悪かった。
「チェンバー休憩ありがとう。寒かったろう?ホラ、コート」
チェンバーが仏頂面で頷く。
「で、お前ら何しに来た!校則違反だろ?!」
「何言ってるの?!私たちはチェンバー様のお手伝いしてるの!一生寝てなさいよ!」
「君たち、邪魔だから向こうの天幕帰ったら?見て解らない?君たちの朝食作るので忙しいの私たち」
おう?!スゲェ毒吐いたな!チェンバー。
「だからぁ~、ミーナがお手伝い~、しますう~!」
毒効かない体質かな?
「邪魔だから帰れよ!先生呼んでくるぞ!」
わかりやすく脅したらやっと居なくなった。
ティンドル先生が来てさっきの女の子達が手伝いに行ったら怒られて怖かった。などとのたまって、ギャン泣きしてるらしい。
「あの子達、私が一人で朝食を作ってると食べようとしたり、体をくっつけたり、すぐ近くで寝てる人達もいるのに、まるでお祭り騒ぎでした。邪魔だから天幕に帰って下さいって言っても話を聞かないから先生呼ぶよって言ったらやっと天幕に帰って行ったんです」
「ま、そんなことと思ってたよ。2人とも少し眠りなさい。火の番は先生がしておくから」
「「じゃ、少しだけお願いします」」
ティムをサンドして眠ったら、夜明け前だった慌てて外に出ると数人の先生達が朝食を食べていた。
「おはよう。ティムくん、チェンバーくん、ロギくん先生達はもう少ししたら、関所に呼ばれるから、先にいただいてるよ。だいたい、7:30までに朝食を食べさせて下さい。1人は監督の先生が残るけど80名いるからね。目が届かない所もある。よろしく頼むよ!」
ティムがハッキリ返事する。
「女の子達は先生達が見て下さい。男の子達は3人で見ますけど食事中だけだからね!」
それな。何だかんだで旅行中ずっと面倒を押し付けられたら最悪だもんな。
チェンバーがティムの肩を抱いている。
2人は見つめあいニコニコ笑ってる。
親友のナイスフォローを称えているのだろう。俺はスープ作ってるから不参加だけど気分はそんな感じ!
今朝のスープはコーンクリームシチュー。パンケーキは一人2枚しか無くなった。
先生達が何にも考えずガツガツ食べたから。喰う前に起こせや!コラヽ(*`Д´)ノ
◆○◆○◆
まだ、食べたいのか?
女の子達の飽くなき食欲に俺達3人はドン引きしていた。自分たちの分を分けてあげたら、呆気にとられるようなことを言う。
「これじゃ全然足りないのよ!作りなさいよ!」
プチッ
誰かの堪忍袋の緒が切れた。
「私たちは君の家の使用人達じゃない!善意で炊き出しをやってるだけだ!それとも君らは命令出来る立場なのかね?!」
チェンバーその顔と声、ガッツリ怖いよ!
「ふふふ、やっちゃえ!チェンバー」
ティムも怒っている。
コーンクリームシチューをお替わりに来た男の子達が固まっている。
仕方ないな【炊き出しの奇跡】するか。あと少ししか無かったシチューが俺が魔力を放ちながらオタマでかき混ぜる度に増えて行く。
「ダメ!もういいの!こんな最低のヤツらにもったいないことしちゃ駄目!」
「まだ、食べて無いヤツらもいるから、許してティム」
「食べて無い子!並んで!そこに置いたお椀取ってここまで持って来て!」
ティム激オコ。チェンバーも無言だ。コワッ!
「何よ!あるじゃ無い!はい!お替わり!」
「君たち4杯目だよね?よく太らないね。はい、どうぞ」
「な、何よ!そんな言い方しなくても、普通に足りないから食べないで、って、言えば良いじゃない!ひどいわ!わぁあああん」
女の子達はお替わりをやめた。
男の子達はたべ終わると片付けを手伝ってくれて助かる。
洗い物はティムとチェンバーとキンドルがやってくれた。
その間俺はマジックポーションを飲まされて座って食休みさせられていた。




