第4章 愛の約束
◆○◆○◆sideセト(セティーネ)
父上の頼もしい背中を見ながら考えてるのはナナ様の事だったりする。
日に日に輝くような美しさを披露する要注意人物(?)は恋に奥手で何度となくヒヤッとさせられる。
未遂だったが男と風呂に入るとか、未遂だったがベッドで何も着ず寝るとか、警戒心が足りない!
【愛の日】用に私が不器用なのに目を瞑って、ハンカチに刺繍をしたら、血だらけのボロ布になったので、リチルに行きホーリースターでエクレアを父上とナナ様にひと箱づつ買った。
それから1週間後ロギくんになったナナ様に指ぬきを返されて父上の仕業だと気付いた。
「この姿じゃカッコつかないけど、左手の薬指を出して」
まさか、と思ってたら、非常に美しいレインボームーンストーンの指輪がはめられた。エルフへの求婚と永遠の愛の誓いの彫刻が絵柄に隠すように刻まれていて、私は真っ赤になってしまった。
こ、これは皆に揶揄われる!父上が何気なく指輪を観察しているので右手で隠した!
父上は私の右手を剥がし指輪をじっくりと検分して私の頭に手を乗せた。
「ロギ、娘をよろしく頼む」
「この体、燃え尽きても側にいると誓います」
それは精霊になることを決めたという事か?!
ロギくんは思考が斜めに行ってる事があるから口に出して確かめよう。
「それは亡くなってから里の精霊になるってことですか?」
「里の皆に嫌われなかったら、だけどね。貴女を一人になんてさせない」
私は究極の愛の誓いにロギくんをギュッと抱きしめた。ああ、胸があればよかったのに!
ロギくんは真っ赤になって私のことを抱きしめ返します。
父上が私たち2人を剥がしました。
「結婚前の2人がはしたない!セティーネ、稔司様に報告の為、一旦里に帰るぞ」
「また、会える日を楽しみにしてます」
「私もです!」
◆○◆○◆sideロギ(ナナ)
「行っちゃった」
「凄く過保護ですね。里の精霊さんになるんですか?ロギ」
「何十年先の話だよ。それまでいっぱい遊ぼうな!」
「「うん!」」
学園に急いで顔をだすと3人共に実力テストをさせられた。今まで唸っていた一般教養のテストが余計な補足まで入れられる余裕があったがダンスはボロボロだった。
翌日、試験結果発表を職員室前で公開してるので今回は覗きに行く。
ティムは学年で37位と割りと上位だった。
それほどおバカじゃなくなったね(失礼)
チェンバーはさすがの2位。俺は5位だった。
教室に帰ってホームルームが始まった。担任の先生は4年生の時、担任だったティンドル先生。
「はい、皆にお知らせがあります。来週の赤曜日からケプラン商業国に研修旅行に行きます!旅費は明後日の夕方までに先生まで提出して下さい。小銀貨5枚です!ホントは銀貨1枚するのですが、半分グレンマイヤー公爵閣下が補助金を出して下さってます。グレンマイヤー公爵閣下に感謝してホームルームを終わります。チアーズクラブの3人は先生に付いてくるように」
ついに怒られるのだろうか?
戦々恐々としながらティンドル先生について行くと校長室だった。
校長先生にソファに座るよう言われてすわると同時に話が始まった。
「今回の、研修旅行の費用を他の子の分は負担しないように。それでは、生徒たちの自主性を失う。つまり、怠け者の集団を作ってしまうのよ!」
「……はい。わかりました。でも、すがられたら、どうすれば?」
「こちらから、よく効くお薬を出して置く。それでも来たなら先生に相談して下さいとでも言っておきなさい」
しかし、そんなに図々しいだろうか?
教室に帰るとすぐ炊き出し組に囲まれた。
「俺達も研修旅行に行きたい!支援してくれ!」
「うわぁ!校長先生の言った通りになったねぇ!チェンバー」
「図々しいとは思っていたが、ここまでとは」
「何だよ!お前ら金持ってるだろ?!小銀貨5枚くらい出してくれよ!」
「皆にティンドル先生からお話しがあるんだって。職員室に行って来てからにしたら?」
ニッコリ笑って言ったら何か勘違いした。
「さすがロギ!後で話そうな!」
手を振って追い出した。
「「ロギが一番容赦ないよね」」
炊き出し組で俺達の元に脅迫に来なかったのはキンドルだけだった。
気になったので聞いてみた。
「キンドルは研修旅行いいの?」
「行きたいけど、あれもこれもはムリだってわかってるだけ。ありがとうな。気に掛けてくれて」
「……アルバイトしない?昼から夕方までで大銅貨5枚の。小銀貨5枚分先払いしてあげるよ」
「ほ、ホント?!やる!」
「じゃ、本部でご飯食べてから行くよ」
「ありがとうロギくん!」
ティムとチェンバーが頭を抱えている。
「1人にしたら全員にしなくちゃならないじゃない!」
「どう終いを付けるのですか?ロギ」
「ふふ、他の子達が働く根性あると思う?」
「「ないね!」」
その日からキンドルはシューとエクレアの店ホーリースターのレジ係として働くことになった。
キンドルも街でアルバイトしてるとしか言ってないらしく、俺達にクレームは来なかった。
久しぶりに行ったホーリースターは、どこかの家の使用人達で店内はごった返していて、厨房には菓子職人が5人増えていた。
「シロッコさん?」
「チョコレート工場から引き抜いて来たから口は固い。だってよう、俺達働き過ぎで死んじまう」
「はい、はい。秘密は守らせて下さいね。キンドルは、レジ係だから商品試食して値段覚えて計算してお金もらおうか?」
試食させる商品を出来たてで食べさせてみるとガツガツ食べること。一応、隣りで、価格と商品名を呟く。
「覚えた!美味しかった!ありがとう食べさせてくれて」
「それも、お客様に説明する時、必要だからな、どれが一番甘いとか、高級感があるのはコレ!とかセールストークを準備しておくこと。甘いのが苦手だけどお使いに来る男のお客様は割りといるから、上手に説明しな。ちょっとやってみようか。最初は計算してお金を受け取る。
『シュークリーム6個とエクレア10個のお買い上げで小銀貨1枚と大銅貨3枚のお支払いになります』必ず何を幾つ買って、合計額が幾らかを言う。控えめに微笑んでだよ!で、相手がお金を渡したらその場でちゃんと数える!お客様に見えるようにだよ!
『小銀貨1枚と大銅貨3枚ちょうどいただきます。商品をお詰めしますので少々お待ちください』でお客様に商品を渡して帰るときには
『ありがとうございます。またのお越しをお待ちしております!』だ!やってみろ」
キンドルは芸達者だった。アクターズスクールがあったら、芸能会入り出来たに違いない。
本番をしても堂々としていて一丁前だ。30トーン見ていて問題ないので、そのまま仕事させたら、店長代理のサーナさんが、難しい顔で話があると休憩室に連れて行かれた。
「買ってその場で食べ始める人がたくさんいる?!」
ア然としてしばらく思考停止した。
サーナさんは話を続ける。
「それで余計に店内が混むんです。セトさんにイートインの店舗を作っていただいてはどうでしょう?」
「そんなに?」
サーナさんは、困ったようにため息をついて、客のマナーが悪いことを暴露した。
「特に昼と夕方近くに1つだけ買う集団が来て包むのはいいから直ぐ喰わせてもらうって、お金を支払うとショーケースの前で食べ始めるんです。シロッコさんが手が空いてるときは『買わないでいいから帰れ!』って追い出したりするんですけどホント、毎日毎日来るんです!」
「営業妨害だな。よし!イートインを作って厄介者をまとめてブチ込もう!」
セトさんに連絡だ!
帰りの辻馬車代をキンドルに渡して、俺も辻馬車に乗ってエルフの屋敷まで行くと穗高様が待ち構えていた。
「セトは今エルフの里で花嫁修業中だ。今回は俺が引き受けるけど、クレーマーの茶飲み場なんて作ってもなぁ?ま、立ち食いできるイートインを作ったらいいか!」
それ、この世界に無い!絶対流行る!
「立ち食いならそんなに広くなくてもいいな」
「そうですね!お任せしていいですか?」
「おう!任せとけ!1から作るからちょっと時間がかかるが、半月ありゃ出来る」
「お願いします」
「ケプラン商業国に行ったとき自由行動の時間があったらチョコレートショップへ寄って来いよ!面白えぞ」
研修旅行か、ティムとチェンバーと一緒なら楽しいだろうな!




