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貴族転生、チートなしで成り上がれ!  作者: 榛名のの
第2章 学園編
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第4章 パティスリー・クロワッサン爆誕!④

ギルが答えてくれたのは恐るべき使用人達の団結力だった。

 知ってる使用人を見かけてもその使用人の買い物内容を自分の主人に洩らさないという使用人同士のマナー。

 例え敵対勢力であっても絶対に主人には言わないそうだ。


だから、「○○様の家ではチョコレートが食べられているのに、私の家は何故食べられないの?!」とキレる主人を見なくていいのだが、話題のパーティーや晩餐会の食事に出て来たら情報を操作しようが無い状態にあるという。

 使用人は、お金持ちの貴族の主人が長くお金持ちでいられるように、なるべく食事の支出には気を付け、お菓子なども安価な郷土菓子を選ぶのが良い使用人のたしなみらしい。


「つまり、ここに買い物に来ている使用人の主人は頻繁に晩餐会やパーティーに出席してる本物の金持ち貴族や商家の者で、つまり、チョコレートさえ、入っていればチョコチップマフィンでも、オランジェットでも、ガトーショコラでも、【一緒】なのです!

 チョコレート菓子を食べたという満足感が、主人を満たしたらミッションコンプリート、なのです!」


「……何それ。気持ち悪い」


「そこで使用人同士が結託するのです。安くて量が多いチョコレート菓子【チョコチップマフィン】を買おうと!」


「「「「「聞かなきゃよかった…」」」」」


かさはらないブラウニーが売れない訳だよ。


「むしろ商家の家人の方が気前よい買い物をしてくれますよ?ラムボールやブラウニーもそちらの方に向けて売った方が良いかと」


「ギル、明日からレジ係ね」


「え?!私が、ですか?!」


「チョコチップマフィンたくさん作るからどこぞの貴族の使用人さん達に爽やかに売って、商家の人には本当に推してる商品や、売れ行きが悪い商品をここぞとばかりに売りつけるんだよ!」


「せめてご褒美を下さい!レジ係は皆がやりたがらないんで、持ち回りなんです!」


「どんなご褒美だよ?レシピか?」


アーモンドチョコレートの詳細なレシピをくれてやった。


「え?こ、これ、量が詳しく書いてある?!こ、これ、私に、どうしろと?」


「誰かに教えたり、売りつけるのもいいけどお店なら1軒だけな。それだけは約束してくれ」


ギルはひざまずくと陛下にするように綺麗で躾けられた正式礼をして、駆け足で厨房を出て行った。


翌日ギルがお礼と共に教えてくれたのだが、ギルは子爵家の長子でありながら、莫大な借金を抱える実家の為に仕事を選ばず働いていて、ここに来たのは給金がよかったからのようだ。ご褒美は多少お金がもらえるかなと思っての事であまり深い意味はなかったらしい。

 アーモンドチョコレートのレシピは美食家の大富豪に売ってきたようだ。

 借金が無くなったと晴れ晴れと笑っていた。類ともである。


パティスリー・クロワッサンの菓子職人たちは昨夜夜を徹して在庫を用意したが、初日の客入りを考えると、弱い。

 昼まで保ったらいい方だろう。

昼食の賄いを作ったら寝る!

 ギルの質問に答えながら舟をこいでいたら、ショルツ達に寝るように言われて休憩室で毛布を被って丸くなる。


◆○◆○◆side天罰な人々


「何故、こんなことになった……」


生チョコを販売するようになってから、売り上げが伸びたかと思ったのに。


「お前の店の菓子を食べた後だ!お嬢様にユーバリン神様の神罰紋が浮き出て、神殿に頼ることになったのだぞ!どう責任を取るつもりだ!」


「うちの息子もそうだった!神殿に高い喜捨をして直してもらった時に聞いた!

 これは神様の八つ当たりだと!お前たちが何か後ろ暗いことをしたから、ではないかと言っていた!

神殿に行って懺悔しろ!」


家兼店の周りは暴徒と化した貴族たちが片手で剣を持ち空いた手で石を投げている。

菓子職人たちは皆辞めた。

私たちは金でレシピを買っただけ。

ただ、それだけなのにこんな騒ぎになるほど私は悪いことをしたのか?!神よ!


※※※※※※


パティスリー・クロワッサンに潜り込ませた侍従から、ようやく便りが届く。


「なんと!湯を当てて別の器に入れて溶かす!初めて聞いたぞ。そんな調理方法。

さっそくやってみるか!」


試したら面白いように溶け出す。


「これを型に入れるだけか!ホッ!何種類とチョコレート菓子が出来るではないか!ホッ!」


翌日、店頭販売していると番頭が真っ白な顔色で出社してきた。


「旦那様、お暇をいただきたいのですが、今日で辞めさせて下さい!」


驚倒した。もう30年もの間、うちの店に勤めてくれていた大事な仲間である。


「何かあったのか?!借金か?女か?どちらでもどうにかなる!辞めないでくれ!」


「アルティナが神罰を喰らったそうです!例の店の生チョコのレシピを手に入れたから」


私は直ちにアーモンドチョコレートを店頭から厨房へと戻した。

まだ、売ってないから間に合うはず!


《ヨクヤッタ。ソレヲワスレルナ》


どこからともなく聞こえてきた声に菓子職人たちは見えない神様に一斉に祈りを捧げた。

改心したのは、その主人だけで、後は菓子屋アルティナと同じ末路をたどった。


◆○◆○◆sideナナ様の弟子達


ショルツ:「もう2週間もまともに寝てない!」

レン:「ショルツさんそれは皆が同じです!」

ケン:「でも、侍従給仕達は寝てるし、休めてるぜ、兄貴」

ディキソン:「そろそろナナ様が夜食作ってくれる!」

ミンツ:「今晩は、鍋料理でしたよ!」

ロック:「キムチ鍋がいいなぁ」

ショルツ:「俺は味噌とんこつがいい!」

レン:「しかしながら、このチョコチップマフィン行進止まりませんね」

ショルツ:「理由が哀れだよな。好きでもないのに流行りだから喰ってるって」

ケン:「ナナ様気持ち悪いってはっきり言ってましたもんね」

ロック:「ま、嫌いでも、俺の腕で好きにさせますけどね」

皆:「「「「「良く言うよ!」」」」」


「出来たよ!皆、食べようよ!今日は水炊きだよ」


ショルツ:「外れたな。多分俺たちを心配してるんだな。あっさり味だもの」


◆○◆○◆sideナナ(ロギ)


あれから2日経ってからやっとナナになれた。

 チョコチップマフィンは毎日信じられない数焼くのに、夕方まで保たないというドン引き案件。

 開店から1週間経ってからようやくガトーショコラが自発的に売れ始めた。

 それは地獄の始まりだった。

開店から2週間に続く言葉に出来ない繁忙期。


そこに、救いの神が現れた!

 それは熟練の職人さんの姿をしていた。


「私は卑劣な手段でアーモンドチョコレートの作り方を手に入れました。天罰が下るから諦めたんですが!どうしてもその商品が作りたい!お願いします!お金は支払う覚悟は出来てます!教えて下さい!師匠!」


「一つの商品につき、白金貨1枚、支払う気があるか?菓子職人はアンタだけか?全員連れて来い!!」


「ハイ!かしこまりました!」


半ば白髪混じりの壮年の男性ナビードを脅すようにして3週間目が始まった。

 メモはさせなかった。全部見て覚えさせた。11人増えた菓子職人分2人づつ2日間ゆっくり休ませてからこき使った。

 1週間で5品完璧に11人が出来るようにすると、お別れの時がやって来た。


「うちの店に来た客をそっちに廻すからたくさん作って待ってろよ!」


「「「「「「「「「「「「皆さんありがとうございました!」」」」」」」」」」」」


ナビードが堪え切れずに泣いている。


菓子屋ナビードは、王都で2番目に繁盛する菓子屋になったと風の噂で聞くのだった。


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