第4章 パティスリー・クロワッサン爆誕!③
◆○◆○◆sideロギ(ナナ)
ビビらされて泣きながらハチミツ入りのお風呂に入れられて肌が何だか潤うと、今度は猛烈に眠くなって来た。
合宿のノリでベッドで一緒眠って起きたら何故か、2人とも裸だった。
「何で裸なの?」
レオは例のうさん臭いイケメンスマイルを浮かべ俺の手を取って指先に口付けて言った。
「昨夜の君は素敵だったよ」
「イヤーーーーーッ!!」
コワイコワイコワイ!!大人コワイ!!
ジョボジョボ涙を流しながら、よく周りを観察すると、笑いをこらえているセラックさんが、俺の着替えを一揃え持ってすぐ側にいた。
「あぅ、う、ゼラッグざん、おばよう゛ございまず」
「はい、もうお客様が馬車で並んでらっしゃるので起こそうと思っておりましたら、坊ちゃまが素敵な朝にしたいとおっしゃって身ぐるみ剥いでしまったのです。何もしておりませんよ」
隣で笑死してるレオをポカポカ殴る。
「アーハッハッ!お腹痛い!痛いよロギ様」
片手で両手を封じられて、レオが意外と力が強いのにびっくりした。
「私が力が強いのは、給仕が意外と力仕事でね、何十枚も皿を持つ時なんてザラにあるからね。後は不埒な輩を叩きのめす為かな?私がお金持ちで美しいから妙な気起こす輩がいるんだよね。ロギ様も綺麗だから気を付けなよ」
「うわぁああああん!バカァアア!!」
「さ、お顔を洗いましょう?ロギ様」
セラックさんにお世話されて顔を洗い、服を着るとやっと落ち着いた。
レオもセラックさんにお世話されて身だしなみを整えると、俺に手を振って出勤した。
振り返してなんかやらないけどな!ツーンだ!
2~3時間すると、お腹が空いて来た。
こっそりナナ様の部屋に戻って調理した。ナナ様の部屋には小さな台所があるのだ。
一応50人前作った。厨房との連絡筒に手紙を落とすとセラックさんが賄いを運びに来た。
「午後1時にまた50人前お願いします!出来たらガツンとお腹に溜まる料理を!」
「了解!」
炊飯器を魔法カバンから2つ出して6升チキンライスを炊く。炊いてる間にオムレツを50個作った。オムライスだ。オムレツが真ん中でパカッと開いてチキンライスを覆い隠すヤツ。スープは、手抜きだけどオニオンスープで。サラダはハーブドレッシングで爽やかに。
出来たから連絡筒にメモを落とす。
ショルツとディキソンとケンが来た。
魔法カバンにしまってから渡す。
「その魔法カバン使用者制限無いから持って行って。あ、でも返してね!」
「若芽茶飲んでもダメでしたか?」
そうなのだ。うんともすんとも言わない俺の体。
「飲み過ぎは副作用が怖いからまだ、今日は1回しか飲んで無いんだ」
「元に戻らなくても明日は厨房に入ってもらう!忙しくて手が足りないんだよ!」
「じゃ、何で3人も来たの?」
「材料が足りなくて作業が止まってるからです」
「何が足りないの?」
「卵と小麦粉です!」
「小麦粉かぁ。さすがに店で使うほどは無いよな。卵はまだまだあるけど」
不意に背中がゾクッとした。
店に雷が落ちた。階下からご婦人方の悲鳴が聞こえる。
ああ、誰か天罰下っちゃったんだ。
俺達は店に急いで駆けつけた。
すると、4人の給仕達を雷が射たようで酷いケガをしてるが天罰なのでポーションをかけようが治癒魔法を使おうが、治らない。ショルツ達が1人づつ各々の部屋に運びセーブルさんが後処理をする。
サロンとダンスホールでは何で天罰が下ったか、給仕長が説明して、混乱を収めていた。
これでこの店でスパイ活動を続ける気はなくなっただろう。何人かが青い顔をしているが、手遅れにならないといいな。
店に降りたので厨房まで行くとチョコレート菓子を必死に作るレン達と賄いを食べているショルツ達がいて、あまりにも落差が大きいので生チョコを作るのを手伝った。
「ガトーショコラの在庫は?」
「午前中で捌けました。小麦粉と卵待ちです!」
「クーベルチュールの在庫はある?」
「明日までは保ちそうです」
「チョコレート菓子ストップ!ガトーショコラにクーベルチュールを廻そう!売れ行きをレオに聞いてくる。賄いを食べてて!作業は全部ストップで!」
ダンスホールに行くともう混乱は収まっていた。レオは各テーブルに挨拶してお詫びのティーサービスをしている。……忙しそう。
会計に行くと焼き菓子が飛ぶように売れていてカウンターの中に入ってチェックした。
フロランタンサブレが全滅。マフィンが王都では人気っぽいな。これももうすぐ無くなる。クッキー類ピンチ?!あれ?ブラウニーがクソほど残ってる。ボンボンショコラが、全く無い!
レジ係をやってるスパイの一人にオマケとして、ブラウニーを2切れづつ声掛けしてから入れるように言って含めた。
ブラウニーはこの店でしか売ってないから上手く軌道に乗れば限定商品として、売れるはず!オレンジピールのビターチョコ掛けは紳士達が買い求めている。
見てる内にソールドアウト!
急いで厨房まで戻ったら、スパイ達が交替してオムライス定食を食べている。
「あのね、ショルツ。この店マフィンが売れ筋みたいなんだ」
ショルツは赤さんにミルクを飲ませながら目を見開く。
「それは、珍しいですね?何でかな?」
答えはスパイ達の一人がくれた。
「ある程度大きくて、パンより柔らかくて美味しいからですよ。あれ、安いし、貴族の朝食にぴったりなんです!」
「「「「「「へぇ~、スコーンは?」」」」」」
「あれ、あんまり味が無いし、ジャム買わなくちゃいけないでしょう?自然と高くなるし、セッティングも面倒だし、使用人達の間では不人気なんです」
はあー。なるほど!いろんな人の意見が必要だなぁ。使用人がお菓子の一つ一つをどう見てるかなんて、想像しなかった!
「俺はロギ=ウェルバー。君は?」
「ギルバート=ロッテと申します。よしなに」
「ギルの意見が聞きたいからちょっとまだここにいて」
「「「「「俺らも聞きたい!」」」」」
「あ、っと。給仕長に言って来ますから少しお待ち下さい」
厨房から出て行く一団を見送って、ポツリと呟く。
「誰の為のお菓子かじゃなくて、誰がどんな目的で買い求めてるのかも考えないと冬将軍の台頭するこの国では商品作りが難航するかもしれないな」
「まさか、使用人達の判断で買ってるとかビンガ王国ではあり得ない事だからな」
ショルツが赤さんの背中をポンポンしてゲップさせてる。
ギルがレオと戻って来た。
「ロギ様、ご飯!」
レオはたくさん食べるから2人分盛ってやった。
着席するなり、食べ始めるレオを景色にギルに次から次へと質問が飛ぶ。
「お使いする使用人にはどこまで自由が許されてるんだ?」
「だいたいお使い賃はいくらぐらいが平均だ?」
「使用人も自分のものは買わないのか?」
「だいたい何日間分を買い求めに来る?」
「パンがあれば買うか?」
「どういう基準で選んでる?」
「ギルならどういう買い物をする?」
ギルは眉間を指先で摘まんで揉むと、口を開いた。
「まず、菓子屋に使用人を遣いに出すような貴族はお金に困ってません!」
「だろうな。ロギ様美味しかった!また明日もよろしく!ギルバート、もう今日は終業にするから、質問に納得いくまで答えてあげなさい」
「もう食べたの?!いくらなんでも体に悪いよ!」
「夕飯はゆっくり食べる!」




