第2章 サンドイッチ屋チアーズ
◆○◆○◆sideティム=ガラン
「ヤバい、眠い」
レーゼ先輩の根性ナシ!
新しいチアーズクラブの街中のお店はとにかく可愛くて目立つ!
月ごとの色を白い壁に虹みたいな淡い色で縞々に塗った変わった外観のお店で道の邪魔にならないように3つ円卓が置いてあり、そこで食べてもいいよ、って感じ。
今は学園の弟子パン屋で作って来たサンドイッチやコッペパンにいろいろ挟んだ惣菜パンをチェンバーがジュース係になって、冒険者達に売りつけてる最中だ。
まだ、夜も明けてないから開いてる店ここだけ。かなり用意してきたつもりだったけど、も、大変!!
ボヤッとしてるレーゼ先輩の足を蹴り飛ばし、カツを入れて一生懸命包装する。
冒険者さんって一人でこんなに食べるんだ。
新しい商品考えた方が良さそう。
初日は日の出前に売り切れ。銀貨5枚と小銀貨2枚の売れ行き。
食パンとコッペパンを焼いて店に鍵を掛け学園に帰り、裏庭でチェンバーと狩りをする。普通のスラッシュボアなら弓で仕留められる。うり坊は見逃してやって一番大きなスラッシュボアの眉間を2人して狙った。
「すばしっこいね」
「次は行く!」
チェンバーは魔法と弓の合わせ技でスラッシュボアの眉間を射貫いた。
「ずるじゃん!」
「やったもん勝ちだよ」
ロギの魔法カバンに入れて弟子パン屋に行くと、イアン先輩達が菓子作りの片付けをしてる最中だった。
「お前ら、寝てるか?すごい顔色してるぞ」
「今日は寝る!」
ブートキャンプの日々を思えば温いくらいなんだが。ただ、寝てないくらい何とでもなる。
スラッシュボアを魔法カバンから出すとイアン先輩が解体してくれた。
まだ、解体はすいすいと行かないから解体してくれると助かる。
「ありがと!イアン先輩」
「よしよし、ほら、これ喰え」
素早く口の中に入れられた柔らかい甘味。
キャラメルだ!
会釈してありがとうの言葉に代えさせてもらう。
チェンバーが白菜を切り始めた。
慌てて僕も解体したばかりの肉を薄切りする。今日の炊き出しは豚汁だ。
エルフのブートキャンプ中にロギを手伝ってたのが実になり僕ら2人でも簡単な和食なら作れるようになった。
レパートリーは、豚汁、炊き込みご飯、ミルフィーユ鍋、具だくさんのお味噌汁、カレー、シチュー、ポテトサラダ、ハンバーグ、コロッケ、トンカツ、から揚げだ!
お総菜はシンジ様が教えてくれたスペシャルバージョンだ。
ロギがドライフルーツを作ってる間の3日間でいろいろ料理を教えてくれたが僕らが覚えられたのは、パン屋に関係あるお総菜だけだった。ちなみにロギには内緒だと言われた。
から揚げとか、ロギの下味だと焦げやすくて揚げるのが難しかったのに、シンジ様のは簡単に揚げられて美味しい!
僕もチェンバーもすっかりシンジ様が料理のお師匠さんになってしまった。
でも、黙っているのは後ろめたい。
豚汁を手早く作ってご飯を炊くといつも通りに炊き出しの長い列が並ぶ。
「今日はロギ遅いね」
「何か無茶して無いといいけど」
「おい!俺のには肉があんまり入ってなかったぞ!」
「食べるのに、困っている子はそんな文句言わないよ!」
くう!かっこいいチェンバー!でも正論だよね。
ただ、チアーズクラブの炊き出しを食べたくて並んでたらしい。皆さんの冷たい目に耐えられなくなって逃げた。
その後は変なお客様もいなくなって僕らは惣菜パンの具を黙々と作るのだった。
夜中の22:00にやっとロギが帰って来たが様子がおかしい。
いきなり吐き始めたので紙袋に吐かせて額に手を当てると信じられないくらい熱い!
チェンバーと僕が両脇から支えて歩き、部室棟の監督室のベッドに寝かせた。
チェンバーがエルフの里でもらった「とっておきの時に使うポーション」をスプーンでロギに飲ませた。
2匙くらいで効いて来て呼吸も落ち着き、顔色も普通に戻った。そして眠り始めた。
「明日はジュースを休んでチェンバー、ロギの看病してあげて」
「レーゼ先輩と2人で大丈夫か?」
「蹴っ飛ばすから平気だよ!」
僕らは顔を見合わせて笑った。
2日目の深夜、サボり魔のレーゼ先輩と辻馬車に乗り込み、通称ギルド通りまで来てサンドイッチと惣菜パンを作って昨日と同じ時間に店を開く。
ウワーッ!昨日よりお客様がいっぱいだ!
レーゼ先輩がドン引きしてるから蹴っ飛ばす。おら、やるんだよ!
「ごめんなさい、一人病欠で今日はジュース出来ません!」
先頭のお兄さん達が後ろの人達に伝える。
「お~~~い!今日はジュース無しだって!」
「「「「「「「了解!!」」」」」」」
「ジュース無くていいから、もっと肉がガツンと入ってて食べ応えのあるパンが食べたい!」
「その分高くなるけど良いですか?」
「大銅貨3枚くらいなら、皆買うぞ」
「いろいろ作ってみます!」
「カツサンド6つにから揚げパン3つ!」
「「ありがとうございます!」」
大体皆、3つは買っていく。
今日は昨日より早く売り切れパンの仕込みをしようと思ったら、小麦粉が無い。
仕方なく明日を休みにした。
学園に帰ってロギの部屋に行くとロギはおらず、チェンバーがベッドで寝てる
ロギ、また仕事行っちゃったの?
2人分の朝食を作ってるとお風呂からロギがひょっこり現れた。
「あ!卵焼きだ。食べたい!」
「何だ!お風呂か!食べよ!」
「チェンバーの分は?」
「起きたら作るよ!」
食べながらサンドイッチ屋さんの事を話すと、ロギは思案顔になり、サンドイッチを挟むだけの素人と商品の受け渡しと会計を任せる学生と、ジュースを絞る大人を雇おうと言う。
「その間にどんどん作ってどんどん売ればいい!」
「となると、パン職人も必要だね!」
「炊き出し待ってる子達から募集かけてみようか?」
「ジュース絞るのは何で大人なの?」
「あれ、力いるから、大人ならいいかなって」
「でもさ、あんまりいろんな人雇ってると秘密が漏れるんじゃない?」
「それな」
卵焼きは気に入ってもらえたようだ。
「エルフさん達に頼むのはダメかな?」
「……有りだな!」
僕らは早速セトさんに連絡を取った。
◆○◆○◆
「ほう、出稼ぎ、ですか。里で希望者を募ってみましょう!皆、面白がることでしょう」
「それでエルフさん達がくらす宿舎と燻煙小屋が欲しいのですが」
「リチルに燻煙小屋作ったらさすがに怒られますから現物支給します。必要な分言って下さい。私たちが暮らす屋敷は手入れしたら使えるでしょうから、心配しないで下さい」
屋敷?!エルフさん達ってホントは偉い人なの?
「サンドイッチパリジャンみたいな豪快に何か詰めたパンが食べたい人達がいるらしくて」
「ああ、サ○ウェイのパンみたいな」
「わかります!」
他の2人で盛り上がってるうちに僕は眠くなったので寝た。
目が覚めるとチェンバーがロギのベッドに寝てる僕を見下ろしていた。




