第2章 私の大事な大事なお店
◆○◆○◆sideアリアナ=デボラ
ティムちゃんはああ言ってたけどリチルの街は広いわ。エルフの大工さんなんて、見つけられるのかしら。
案の定、昼まで足が棒になるまで歩いただけ。チェンバーくんもティムちゃんも体力オバケね。あ、あそこカフェの看板があるわ!
「疲れちゃった。休みましょう?あそこで」
「見つけた!セトさん!!!」
2人は私を置き去りにしてそのカフェに入って行ったわ。目的地が分かってるならゆっくり行ってもいいじゃない。
私はそのスッキリとしたオシャレなカフェに入って行ったわ。
「誰だ?!オメェ!!」
イヤだわ、乱暴ね。このおじさん。
「さっきここに入ったティムちゃんとチェンバーくんの連れです」
「奥だ!」
店の中にはもう魔導具のペンダントライトが天井から釣り下がっていてとてもいい雰囲気!客席数も36席と多くも無く少なくもない。
ここが私のお店なら完璧ね!
「アリアナ先輩!ここ、チョコレート菓子専門店だから、あと二つある店見てこようよ」
「チッ!」
「舌打ちしないの!2つの店もステキみたいだよ」
誰かが呼んだのか、辻馬車が店の前に止まった。エルフの美青年が表で待っている。
やだぁ!初エルフ♡ステキ。
「初めましてレディー。私はセトと申します。店の改装の件を任されております。何なりとお申し出下さい」
「私はアリアナ=デボラよ。学園の商業学科の2年。セトさんは大工さんなの?」
「はい!そこまで。お触り禁止」
「ちょっと失礼じゃない!チェンバーくん」
「セトさん偉い人の子供だから、色気づかないように!」
「失礼ね!色気づいてなんかないわよ!」
ただ、ステキ男子のいろんなことが知りたかっただけよ!
「はいはい、馬車乗るよ!」
置いて行かれてたまるもんですか!
連れて行かれた2店舗は甲乙つけ難い物件で、やはり、1番最初に見たあそこが1番良い。
「セトさん。1番最初の物件がどうしてもいいわ。何とかならないかしら?」
チェンバーくんも味方してくれた。
「チョコレート菓子売るなら物販スペースも広く取った方が良いと思いますし、工場で生産してるから、客席数ももっと多めでも、構わないでしょう」
セトさんはうなづくとチョコレート菓子専門店を候補3の物販スペースが1番大きなお店にした。
「アリアナ様、お店の名前は決まってますか?」
「【青月の星】よ」
「良いお名前ですね」
「まんまだよね?」
ちょっとティムちゃん!余計なこと言わないで。
「青月から始まるからちょうど良いでしょう。うちの紅茶をよろしくお願いします」
「あら、チェンバーくんちはお茶屋さん?!ステキ!お友達になりましょ!」
「取引先で結構です」
ああん!冷たいのね、チェンバーくん。
そこが良いんだけど!私の好みって、チェンバーくんがうんと育った感じなのよね!
ツンばかりだけどクールでかっこいいわぁ!
1番目の店舗まで戻って細かい事をお願いする。ちょっと乙女心をくすぐる仕様にしてもらった。だって男の子が建てたカフェって感じだったんだもの。いくら、青月に営業開始するからって、青過ぎるのよ!壁紙をピンクの蔦薔薇模様に変えて腰板をアンティークブラウンにしてもらったら全く別の店になった。絨毯も変えたいけど勿体ないかしら。
「お気になさらずご要望はキチンとお伝え下さいアリアナ様」
「床にアンティークブラウンの板張ってほしいのよ。絨毯だと、掃除が大変でしょう?」
「では、次の金曜日にお引き渡しになりますがよろしいですか?」
「構わなくてよ!」
ついに手に入れた私の大事な大事なお店!離さないんだから!
「それでですね、投資金額の回収を里長から命じられていまして、ひと月どのくらいづつ還元して下さいますか?」
「お店の売り上げの1割じゃ駄目かしら?」
「結構です。返すという事さえわかれば構いませんが、1割以下ではお話しになりません」
ホッとした。初めての店でこけたら嫌ですもの!
契約書を取り交わして晴れてこのお店は私の物になった。
あとは菓子職人の育成と食器なんかの用意ね!腕が鳴るわ~!!
しかも、食器を見に行くと言ったらセトさんがお財布になってくれて、お買い物にも付き合ってくれるらしい。
デートじゃない?!ああん!もっと良い服着てくるんだった!
ちょっと、ちょっと!磁器を買ってるけど良いのかしら?
ちびっ子達はお高そうなティーセットを見てるし、やだぁ!胸がドキドキしちゃう!
「ここは、私達エルフがやってる店の一つです。好きに買い物して下さい。商品によっては、普通の木の皿よりお買い得ですから。もちろん身内割引が効いてのお値段です。
チェンバーくんが見てるティーセットも割引価格で銀貨3枚程度です。他のは小銀貨3枚くらいですね」
「これ、お茶する用に買ってく!」
「何言ってんの?!自宅用はダメよ!セトさん買わなくて良いですからね!!」
「青月中に返す目算が立つ借財なら構いませんよ」
「「買う!」」
「誰が払うのよ!」
「チアーズクラブで払うんだよ!赤休みの間に1番小さな店借りてサンドイッチ屋さんやるの!」
候補2の店舗は、食べる場所は少ないけど、立地がすごく良い。各種ギルドのど真ん中にある、持ち帰り専門店。
確かにあそこなら、稼げる!
「あら、レーゼのパン屋にしないの?」
「「レーゼ先輩はまだ修行中!」」
意外と厳しいのね、可愛いのに、折り目正しいのがステキね!
私も遠慮なくケーキ皿や焼き菓子を載せる皿を選んでセトさんに渡したら鼻で笑われたけど、何故?
私の店に帰って食器を洗うともう夕方。セトさんが私たち3人を学園まで送って下さってステキな一日が終わったの!
弟子パン屋に行くと炊き出しをしていて、誰でも食べられるみたいだけど、茶色のご飯って何よ?
ティムちゃんとチェンバーくんは大喜びしてるけど、美味しいの?
「美味しかったわ…塩っぱかったけど。チェンバーくんはロギくんと今から夜食作り?」
オークカツを揚げているのだが、チェンバーくんが揚げる係なの!いつもはロギくんが譲らないのに。
「ううん、明日から大通りで売るからその準備中。俺は夜しか手伝ってあげられないから、昼にも出来るようにチェンバーに教えてるんだ」
「あらあ、ねえ、私たちの菓子職人育成は?」
すると、魔法カバンを探り出したロギくんは、片手で持つにはやや余るくらいの紙束を私に差し出す。
受け取って驚いた!
「やだ!これ全部レシピじゃない!」
「さんざん、お茶会で作ったんだから、材料の量った数さえ分かってるなら作れるよ!。お昼は俺ら、ここ使わないから、焼き菓子の在庫作るといいよ」
「ありがとうロギくん!」
抱いて頰にキスしたら、ビンタされた。ヒドいわ!




