⑭最後の賭け
体勢を崩されたアロクスが体を起こすと、何度も小さく肩を震わせ、喉の奥から低い声で笑い始める。
「実ニシブトイ。人間共ガ蛮族ダト油断シタコトハ反省シヨウ」
蛮族の親玉が人間を蛮族だと呼び捨てる。
タイサはその言葉に何も返さず、バイオレットの前に立つと、騎槍の先端をひび割れた石畳に突き刺した。
「参ったな………このままじゃ埒があかない」
タイサが一度だけ鼻で笑う。
体が大きいと言うだけで、攻撃力も防御力も桁違いになる。通常のオークでさえ、人間離れした体格と力をもっているのだから、その倍以上の大きさとくれば、それだけで想像を絶する世界に突入する。
タイサは目の前の騎槍を上から下へと視線を向けると、柄を逆手に持った。
「ここまで来たら………仕方ない、か」
タイサは顔だけそっと振り返り、後ろにいるバイオレットとエコーに視線を送る。エコーはいつの間にか意識を取り戻していたが、目を細くさせたまま焦点が合っていない。だが、心なしかタイサには、彼女が二人を案じているように見えた。
「心配するな、二人共。必ず生きて帰すさ」
まるで自分に覚悟を決めさせるようにタイサは呟き、持っていたランスの柄に力を込める。そして片手で柄に掛けられていた複数の留め具を外すと、全てを受け入れる声で言葉を放つ。
「封印解放」
―――その瞬間、世界が黒と白だけになった。




