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Lost19 底辺の隊長と呼ばれた男  作者: JHST
第六章 蛮族を指揮する者
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⑬生への足掻き

 タイサはアロクスの気を逸らそうと立ち上がり、体を左右に揺らしながら巨体に向かって騎槍(ランス)を水平にして走り出した。

「人間ノ分際デェ!」

「ぐぅ!」

 アロクスは穴の開いた右足の痛みを怒りを込めた雄叫びに変えると、突撃してきたタイサを右手で掴み取る。タイサは隙間をつくろうとアロクスの手の中で藻掻くが、両腕がアロクスの丸太の様な指の間に挟まれており、十分な力が込められない。

 小石のようにアロクスがタイサをバイオレットが進む先の建物に投げつける。タイサは商店らしき建物の一階奥に轟音と共に押し込まれ、大通りに埃と建物の残骸を舞い散らかした。


「隊長!」

 バイオレットの目の前で、横一閃に吹き飛んでいくタイサが視界に入る。彼女は、砕かれた建物から降り注ぐ破片から自分やエコーを守ろうと足を止めて目を瞑り、体を背けた。


「逃ガスモノカ」

 アロクスがバイオレットの目の前に姿を現した。

 そして持っていた右手の斧を空高く振り上げる。

「………負けられない」

 バイオレットが頭上で振り上げられている斧を見上げながら歯を食いしばる。

 アロクスはバイオレット目がけて斧を振り下ろした。

「私は、こんなところで負けられないんだぁぁぁ!」

 バイオレットは左腕に付けていた盾を腕から引き抜くと、振り下ろされた斧に向けて投げ放つ。投げられた盾はアロクスの斧と接触すると、強烈な青白い光を放ちながら粉々に砕け、同時にアロクスの斧も何かに弾かれるように空に向けて掲げた位置まで戻された。


「小癪ナァァッ!」

 弾かれたのならばもう一度振り下ろすまでと、アロクスが再び斧を構え直す。


「バイオレット! そのまま下がれ!」

 建物の中からタイサの声が響き、バイオレットはすぐにエコーを担いだまま元来た道を戻る。

 間一髪。空気を伝わる僅かな振動が次第に大きくなり、アロクスはすぐ隣にあった建物の崩壊に巻き込まれて足を取られた。崩壊は北門へと続く大通りの建物へと連鎖し、ついには北門へと続く大通りを瓦礫で封鎖するに至った。


 タイサは崩れた建物の瓦礫の中から這い出ると、バイオレット達の無事を確認する。

「………済まん。仕掛けを動かすしか方法が思いつかなかった」

 アロクスの攻撃を防ぐ事はできたが、タイサ達は北門に続く最短の退路を自らの手で塞いでしまった。学校を抜ければ、北門へと辿り着く事は可能だが、それを素通りさせる程、目の前の敵の足は遅くない。

 

 タイサ達は逃げ場を失った。

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