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Lost19 底辺の隊長と呼ばれた男  作者: JHST
第六章 蛮族を指揮する者
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⑥最後の三人 -最初の後退-

「いいぞ二人共っ………そ、その調子だ!」

 僅かに見える横目の視界に入る二人の活躍に、タイサが歯を食いしばりながら叫んだ。


 再度盾を開いて敵を吹き飛ばし、騎槍(ランス)で敵を数体まとめて貫く。タイサの一撃一防は見事に型にはまり、敵の数を少なからず間引いていく。

 ゴブリンもタイサに向けて刃を突き立ててくるが、不利な態勢から繰り出される勢いのない攻撃はタイサの鎧に阻まれ、運よく鎧の隙間を抜けたとしても、『鉄壁』の名を持つタイサの肉体は傷一つつけることが出来ない。さらには毒にも侵されない。

 有効な一撃を与えられないまま、ゴブリン達は三度吹き飛ばされ、五、六匹が宙を舞った。


「………そろそろ限界か」

 依然と敵の数は多い。加えて、タイサへの攻撃が効かないと気付き始めたゴブリン達が、仲間の背中を踏み台にしながら徐々に彼の体を越えていった。


「隊長! 弓の援護はもう無理です!」エコーが叫ぶ。

 既に抜けていったゴブリンは、十匹を越えている。タイサの後ろでは、エコーが状況を知らせながら、漏れてきた敵を抜けさせないよう、バイオレットと共に剣で迎え撃っていた。


「エコー! タイミングを合わせろ!」

 タイサは盾を大きく開いて数体のゴブリンを薙ぎ払うと、大声を上げながら騎槍(ランス)を掴んだ。さすがのゴブリンも、騎槍(ランス)の一突きが来ると身構えたが、タイサは敵に背を向けるや、一気に大通りを駆け上がった。


「バイオレット! 次に行くわよ!」

「は、はい!」

 二人は時間差をつけて後退を始め、エコーが一匹を切り伏せて後退、次のバイオレットに殿を任せる事を繰り返す。タイサの戦術を応用した二人ならではの方法であった。


「悪いが、ここから先はまた命で支払ってもらおう!」

 タイサが大通りを駆け上がりながら、先を走るゴブリンを背後から蹴りつけ、転倒した頭を踏みつける。そして後退するエコー達を狙うゴブリンの背中に向けて騎槍(ランス)を投げ放ち、それを引き抜いて次の障害物(バリケード)へと到着した。

「二回目ぇ!」

 二つ目の障害物(バリケード)の隙間を前に、タイサは再びゴブリン達の波を一手に受け止めた。相変わらず、凄まじい衝撃が全身を駆け巡るが、家屋の支柱を背中にしている限り、タイサは体勢を維持する事が出来ていた。

 既にほぼ全ての蛮族達が、大通りに入り込んでいる。衝突の勢いが繰り返される毎に増していくが、その分、上り坂に角度が付き、ゴブリン達も体重に依存して押す事が難しくなっていた。

 

 タイサは両手の盾で、数体のゴブリン達を打ち払う。


「………そう来たか」

 タイサが両手を開くと、そこには長槍(パイク)を構えたゴブリン達が正面に並んでいた。

 数本の槍が、タイサの胴目がけて突き立てられる。半分は鎧に当たって柄が折れたが、三本が鎧を削り、一本がタイサの右脇へと入り込んだ。

「こいつら………対応が早くなってきているな」

 木製の槍程度では、鉄壁の名をもつ男を倒せない。タイサは両手の盾を思いきり閉じて、正面のゴブリン達を金属の間に挟み込んだ。頭を挟まれたゴブリン達は次々と頭や首の骨が砕け、大量の血液を盾の間から吹き出すと、そのまま地面へと崩れ落ちていく。

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