⑦絶望への確信
「盾を構えろ!」「―――っ!?」
バイオレットはタイサの声に反応して盾を前面に構えると、バウンドドックの爪が盾と接触すると同時に、盾から青白い光が一瞬放たれた。バウンドドックは一緒に乗っていたゴブリンごと光に弾かれると、放物線を描きながら建物の前にあった樽に体を叩きつけられ、木材の破片を撒き散らかす。
「………この光は、まさか」「まだよ、バイオレット!」
目の前の光景に動揺するバイオレットの前にエコーが馬ごと割って入り、砕けた樽に体がはまって動けなくなったバウンドドックを見捨てて飛び上がったゴブリンを、彼女の騎槍が正面から突き刺した。
「済まない、エコー。助かった」
一足間に合わなかったタイサが顎の汗を拭い、バイオレット達に合流する。
「隊長、私の装備はまさか―――」
「………その話は後だ、バイオレット。俺達もすぐに学校に向かうぞ」
タイサは動こうとしないバイオレットの背中を無理矢理押し出し、南北を貫く大通りの坂を進ませた。
道中、逃げ遅れや負傷して動けない住民や冒険者達の姿を確認しながらタイサ達が進むが、人らしき姿が見えても、返事は一つも返ってこない。
街中では、未だにガラスが割れる音があらゆる方角から聞こえてくる。家屋に侵入したゴブリン達は、目に留まった食物を我先に、それこそ争う様に口の中へ入れ、価値の分からないガラスや陶器類は窓や壁に向かって投げつけるなど、文字通り好き勝手に暴れていた。
馬に乗るエコーが先導しながら、苦い表情を生み出す。
「ここまで奇襲を成功させておきながら、追撃が来ません………本当に、隊長の言った通りですね」
蛮族達が、防衛準備も整っていない避難所の学校や、少数で退却するタイサ達を襲う事が十分に出来るにも関わらず、それを実行しない。タイサもエコーの言葉に小さく頷き、自分の考えが合っていた事に確信をもった。
―――だがその確信は、タイサ達にとって絶望を認める意味でもある。
「次は、避難所まで攻めてくるぞ」




