①報告
作戦会議を行った際に使っていた椅子に座っているタイサは、鎧や体に着いた血や汗を拭いた手拭いを無造作にテーブルへ放り投げる。
「………状況を」
厳しい表情を続けながらも傍に立ち、口を開くタイミングを計っていたエコーに報告を求めた。
「南門及び東門は健在。障害物の被害も最小で、修復も既に完了しています。ゴブリン達はこれまでと同様に、障害物を叩く、切る、飛び越える事しかしてこなかったようで、街の住民や冒険者達だけでも、十分対応できていたようです」
「北門は? あそこは退路として障害物を設置していなかっただろう」
エコーはタイサの言葉を肯定して頷いたが、不思議そうに事実を伝える。
「結局、我々が避難した後も北門に敵は一匹も現れませんでした。また、避難民の出発は予定の早朝とはいきませんでしたが、ゴブリン達が撤退した隙を見て東門から出発しました」
さらに北門からも第二次の避難民を出発させている。隣のグーリンスの街程、近隣ではないが、それでも北からも援軍が頼めるのであれば、多いに越した事はなかった。
「東と北、隣街にこの状況が伝われば、王国騎士団は援軍を送ってくるはずだ」
タイサはテーブルに投げた手拭いを掴み、再びテーブルの上に落とす流れを繰り返した。
「………ルーキーとボーマの容態は?」
覚悟を決め、タイサは顔を上げてエコーと視線を合わせた。
彼女も言わねばならぬと唾を飲み、大きく息を吸い込む。
「ボーマは体が大きかった事もあり、毒が回り切る前に薬と街に残って頂いていた神父の解毒魔法で一命を取り留めました。ただ、毒よりも両足の裂傷の方が激しく、以降の戦闘には参加できないと思われます」
恐らく、彼女に預けた薬を応急処置として使用したのだろう。タイサは彼女の報告からそう察したが、特に何も言う事なく、話を最後まで聞き続けた。
エコーの声が一瞬詰まる。
「ですが、ルーキーは………」
「………駄目か」
経験上、薄々分かっていたがと、タイサが代わりに結論を発し、エコーが無言で小さく頷いた。
「………つい先程、息を引き取りました」
「そうか………彼には………」天井を仰ぐ。
タイサは昨晩の彼との話を思い出し、目頭を押さえながら、それ以降の言葉を紡ぐ事が出来なかった。
一瞬の沈黙。
タイサは、汚れた手拭いを握り締めた。




