⑫詰所に向かう途中
タイサは念の為と断った上で、いくつか事前に確認しておく事があると彼女に声をかけた。
「一応知っていると思うが、我々の騎士団は様々な事情をもつ騎士が集まっている。序列としては騎士団の中でも底辺と言っていい」
バイオレットは何も答えない。ことさら『はい』と正直に答えられても困るが、タイサはそのまま話を続ける。
「貴族出身だからといって特別扱いするつもりはない。それは理解できるか?」
「はい、問題ありません。ウィック家が名門と言われたのはもう随分と昔の事です。今では領地を削りながら生活している貧乏貴族の一員。むしろ他の方々と同じ様に扱って頂けると助かります」
どうやら平民と貴族が知っている情報では随分と時差があるらしい。タイサ達平民から見れば、ウィック家は大貴族とまではいかなくとも、大人ならば一度は聞いた事はある程度には知られている。
だがそんな貴族でも貧しい生活をしているのが今の時制なのか。タイサは頭を掻いて誤魔化し、他の質問に切り替えた。
「ちなみに得意な武器は何だ? 剣か槍、それとも弓か」
王国騎士団の伝統の一つに装備の固定化がある。騎士団は集団としての統一性を高めるため、決められた防具と武器のみ装着が許されている。武器は片手剣か槍、そして弓と定められていた。
「どれかと言われれば剣です。五歳の頃から父に教わっていました」
タイサが小さく口笛を鳴らす。
貧乏だと自称しているものの、そこは貴族出身。平民のイメージに漏れず英才教育はしっかりと施されているらしい。お陰で、彼女を異動したジャックの位置にするだけで、陣形の問題が解決する。




