⑨王女とタイサ
「細かい動きについては、先発してもらう銀龍騎士団からの偵察が終わってから、つまり道中で行う事になるだろう。それ以外の遠征組の出発は二日後の朝、東の大正門前広場に集合とする。各団長は本日中に部下を招集させ、当日までに準備を済ませておくように」
「「「「「「はっ」」」」」」
全員が立ち上がる。
自分からは以上だと騎士総長が一歩下がり、視界を開けるように体を横に向ける。
「王女殿下」と、宰相。
奥で座っていたアイナ王女が静かに立ち上がり、団長達の円卓へと足を運ぶ。団長達も一斉に頭を垂れ、為政者の言葉を待つ。
王女はテーブルの前で立ち止まると、参加している団長の視線を1つ1つ確認するように見回し、凛とした表情で口を開けた。
「クライル宰相とシーダイン騎士総長の両名が言ったように、今回の戦いはかなりの規模である事は言うまでもありません。相手は文化も戦い方も野蛮な者達ですが、油断する事なく、全員生きてまたここに戻ってくることを切に願っています」
王女の言葉に全員がさらに深く頭を下げる。そしてゆっくりと頭を元の高さに戻すと、会議は終了となった。
「タイサ団長。少しよろしいですか」
団長達が部屋を出ていく中、タイサは王女殿下に呼び止められる。
デルを含め他の団長達が一瞬、呼び止められたタイサの方に視線を向けたが、すぐに視線を戻し、誰一人立ち止まらずにそのまま扉の外と消えていった。
「………はい。王女殿下」
踵を返し、タイサだけがその場で立ち止まる。会議室に残っているのは王女とタイサ、そして彼女の傍で直立する宰相クライルだけとなった。
最後にデルが扉を閉めていく。
王女殿下は、円卓を挟んでタイサに尋ねる。
「タイサ団長は、此度の遠征をどう思いますか?」
「殿下!?」
声を上げたのはタイサではない、傍に立っていたクライルの方だった。
「殿下、何をお考えですか!? 騎士総長殿に尋ねるならばともかく、一介の、しかも『色なし』の者から意見を求めるなど!」
会議とは打って変わって宰相の口調が変わる。彼もまた大貴族の出身である事をタイサは理解しているが、それ以上深く考えないように聞き流す。
「クライル。静かに出来ないのであれば、あなたにも席を外してもらいますよ?」
殿下の横眼の一言でクライルはそれ以上何も言えず、口を閉じた。
「今一度尋ねます。タイサ団長、自由に意見を述べなさい」
「は………」
タイサは姿勢を崩さぬまま視線だけを泳がし、頭の中を整理する。




