⑮鎮魂
タイサが拳程の大きさ麻袋を胸元から取り出し、それをテーブルの上に置いた。
麻袋の中に入っていた何かが崩れ、高い音を立てながら袋の口を項垂らせる。
「今月の分だ」
「………本当にいつもありがとうございます」
シスターは深々と頭を下げた。
「しかし、毎月こんなに頂いて………その、タイサ様の生活は大丈夫なのですか?」
銀貨、それより多い銅貨が入った麻袋を彼女は大事に両手で持ち上げたが、金額はそれほど多くはない。二階で寝ている食べ盛り達の食費、それに建物の修繕等を考えれば決して十分ではない。
タイサが彼女に渡した分は、エコー達に渡した討伐報酬の一人分の額、つまりは自分の分である。額だけでいえばこの街で働く日雇い労働者の数日分に相当するが、集団生活ならば二、三日間送るだけに過ぎない。
「いつも言っているが、あまり気にするな。うちには優秀な家計簿がいるからな」
湯気が徐々に少なくなってきた白湯をタイサは何度も丁寧に口に運ぶ。アルコールを入れた後だからか、何も味のない白湯が喉に落ちる度に体によく染み渡っていく。
「今度はその優秀な家計簿の妹さんも連れてきてください。きっと子ども達も喜びます」
「そうだな。今度の休日にでも声をかけてみよう」
年が近い妹の方が、子ども達と馬が合うだろう。タイサはシスターに白湯のお礼を済ませると、その場を立ち上がり、コレットの墓の場所まで案内してもらった。
教会の裏庭にある無数とも呼べる小さな石の列、その一番手前にある粗末だが手入れの行き届いている小さな石の前で膝をつき、タイサは小さく目を瞑る。
小さな石には金属の角で削ったかの様な文字で、彼女が存在した証が彫られていた。
目を瞑ったのは時間にして数秒の流れだったが、動物も虫の声もない夜の静かな空間ではそれが倍のように感じられる。
「………また来るよ」
タイサは立ち上がり、シスターに体を向けた。
「はい。タイサ様に天のご加護がありますように」
シスターが自分の両肩に指を這わせると、彼女なりの感謝の気持ちを込めた言葉をタイサに贈った。




