⑫大人の対応
「その………ご迷惑でなければ隊長についていっても宜しいでしょうか。幸い自分はこの後の用事は特にないので」
視線を合わせられず、両手の指を擦り合う様にエコーが呟く。
だがそれでもタイサは彼女に気を遣いながら、申し訳なさそうにゆっくりと手を左右に振る。
「いや、すまないが教会へは一人で行く事にしているんだ」
「そう………ですか。残念、です」
これが初めてではない。エコーは何かとタイサを気遣い、よく声をかけてくる。底辺の隊長と揶揄されながらも、騎士や同僚、友人として接してくれる彼女の行動は、タイサにとって嬉しくもあり、また十分に報いてやれているのかと、時折申し訳く感じていた。
タイサは褐色の肩に手を置くと、すまなさそうな表情をそのままに頬を緩ませる。
「俺がいつも行っている教会は北地区にあってだな………あまり夜遅くに女の子を連れていく場所じゃない。もしお前に何かあったら、俺は妹に怒鳴られちまうよ」
槍と盾を振るい、蛮族を打ち倒してきた騎士に対して送る言葉の正しさへの疑問を抑えつつ、タイサは『あぁ』と、何かを思い出したかの様に視線を空へと向けた。
「そう言えば騎士団本部の近くに新しい店ができたとか………ほら、前に話してくれただろう?」
「え、あ、はい」
話を変えられエコーはきょとんと眼を大きくして顔を和らげる。
「今度、その店に案内してくれ。何なら明日の昼でもいいぞ?」
「で、では明日の昼で!」
エコーは姿勢を正し、直立してタイサの代案を受け入れた。
「分かった分かった………いつも悪いな」
気を付けて帰れよとエコーに念を押して会話を閉じると、踵を返して夜の道を一人で歩き始めた。




