⑪夜はまだ続き
「さて、お前達。気を付けて帰れよ?」
きっかり2時間。
大通りに面している店の前だが、往来する人の数が随分と少なくなった夜。二人を祝した会はここで解散となった。
騎士団本部から渡されたゴブリン退治の臨時報酬で支払いを済ませ、残りを均等に分けて全員に配り終えたタイサは、店の前で千鳥足になっているボーマやその横で体を支えるジャック、頭を下げて帰ろうとするルーキー、そして最後までタイサを待っていたエコー達にそれぞれ声をかけた。
酔うほどには飲んでいないが、火照る程度には温かくなったタイサの体を、大通りを吹き抜ける風が丁度良く冷やしてくれている。
「絶対、あいつら二軒目に行く気だ」
歓楽街へと向かって行くボーマとジャック、そして帰ろうとしていたルーキーの腕が二人に無理矢理組まされた姿を見送りながら、タイサは隣で苦笑していたエコーに呟く。
「隊長は………その、この後どうなさるのですか?」
褐色の肌を持つ彼女は酔っているのか分かりにくい。初対面であればなおさらだが、付き合いが長い今でも、彼女が酔い潰れた所を未だに見た事がなかった。
タイサはエコーの言葉の意味をある程度理解しつつも、申し訳なさそうに両端の眉を下げ、自分の鼻頭を指で触りながら彼女の言葉に答える。
「ああ、少し寄り道してから家に帰るよ」
「………また、教会に行かれるのですか?」
エコーの言葉にまぁな、とタイサは小さく答えた。
タイサが自分の給与や報酬の一部を特定の教会に寄付している事は、同じ部隊の中ならば誰もが知っている。
だが、その理由は誰も知らない。
エコーは、この騎士団にかつていた先輩達にそれとなく尋ねた事もあったが、誰一人その理由を知らなかった。




