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⑩戦友として
その行動に気付いたのか、それとも偶然か。ウェイトレスは他の空になった複数のジョッキを右手に集めると、勢い良く左を振り返った。そして彼女が持っていたジョッキの束が不幸にもボーマの顔の正面にめり込むように当たった。
不届き者は空のジョッキの水滴で顔を濡らしたまま床に倒れ、赤くなった鼻頭を手で覆いながらうずくまり、藻掻きはじめた。
「あら~!? お客様申し訳ありません。お怪我はないですね」
ウェイトレスが意地悪く、申し訳なさそうなフリの声のまま眉間にしわを寄せていた。
タイサが額手に手を乗せて呆れかえる。
「………お前という奴は。その内、食べ終えた串で刺されても、俺は知らないからな」
「いやぁ、この流れもついに見納めかぁ。何かずっと続くと思っていたのですが………寂しいですね」
タイサはボーマの蠢きを無視して自分のジョッキを口に傾け、ジャックは寂しそうに何度も頷いてから笑い始めた。
タイサとエコーは、ジャックのジョッキと再び合わせた。
三人とも何も語らなかったが、互いに言いたい事は通じ合うことができた。




