3.
パーティーでは私とカインデット様の婚約発表が伝えられた。
突然決まったからかスピアお姉様にカルティナが驚いていた。二人が私をよく思ってないことくらい知ってるわ。
私たち姉妹以外は男の子は生まれていない。
私も立派な王位継承権があるからだ。
今までは婚約者をつけなかったから敵視どころか無関心でいられたけど、カインデット様との婚約が決まったからそうもいっていられないのだろう。
「レティアおめでとう。まさかあなたが婚約するとは思ってなかったわ。」
「スピアお姉様ありがとうございます。幸せですわ。」
私の隣にいるカインデット様を見てフンッと鼻で笑った。
その態度にイラッとしたが何も言えなかった。
ここで言い返せば更に酷いことを言うだろう………私ならいいがカインデット様のことを悪く言われたくない。
カインデット様の良さは私だけが知っていればいいから。
「いつまで続くかわかりませんがカインデット様もレティアをよろしくお願いしますわ。」
いつまで私が生きてるかわからないがって意味なんだろう………………嫌な言い方だ。
言うだけ言って去っていく、いつものスピアお姉様のやり方だ。
自分の意見しか言わず、人の話など聞かない………全く人をばかにするのがうまい人だ。
スピアお姉様はお父様よりで目が少しつり上がって睨まれると怖い。
「スピアお姉様がすみせんでした。いつも私に対してあのような感じなんです。カインデット様いい気持ちはしなかったでしょう?私の婚約者になったことで嫌な気持ちにさせてしまいすみません。」
カインデット様がこれで私との婚約を考え直してしまうんじゃないかと怖くて下からカインデット様の顔を覗いてみた。
「レティア皇女様、そのような顔をしないでください。私はなんともないですよ。だからこんなことで婚約は解消したりないので心配されないでください。」
私の思ってることを何でわかったの??
ビックリして目を見開くとカインデット様はくすりと笑った。
「レティア皇女様は表情豊かですよね~。心は読んでません、顔に出てましたよ。」
知らなかった。私のことをしっかりと見てくれた人がいなかったからそんなことを言われたこともなかった。
「カインデットさ「レティアお姉様、婚約おめでとうございます。」
私の言葉を遮ったのは妹のカルティナだった。
声のする方を振り向くと、私にお祝いを言ったのに視線はカインデット様の方に向いている。
はぁ。カルティナは極度の男好きだ。
婚約者がいるのにも関わらず他の男性にもアピールする危ない女である。
「カルティナありがとう。」
「レティアお姉様と婚約してくださる方がいるなんてねー。よかったですわね。ふふ。」
カルティナはお父様とお母様を足した見た目で、見た目より雰囲気が女の子らしく可愛いが、性格は悪魔である。こうやって私が姉に関わらず、自分よりも劣ると思った相手には見下して喋ってくる。
ああ、また私の姉妹が立て続けになんてことしてくれたのだろう。
こんな姉妹しかいないと思われたら婚約すら嫌になりかねない。
私だったらこんな面倒くさそうな家族がいるとわかった時点で例え王族だろうが嫌なものは嫌だ。
カルティナはカインデット様をチラチラと見ている。
昔からカルティナは自分が目線を合わせると男はみんな落とせると思っている。
そういう方がいたのはいたが、全員がそうではなかった。
やはり男好きでも王族だ。影で男性が断りきれないと嘆いていたのを聞いたことがある。
カルティナも婚約者がいるのにやめたらいいのに。
カインデット様に色目使うとは………私の婚約発表の場で。
「カルティナ、そうなのです。私と婚約してくださる方に巡りあえて今一番幸せですわ。ふふ。あちらでカルティナの婚約者がお待ちですわよ。」
言葉を素直に受け取り穏便に返すが、カルティナからはギリッと歯軋りが聞こえ妹ながら怖いなと改めて思う。
「それではレティアお姉様、生きてるうちに捨てられないようにお気をつけて。」
そう言うとスッキリした顔でカルティナは婚約者の元へ戻っていった。
はぁ。何故カルティナは一言多いのかしら。
スピアお姉様もカルティナも心配になるじゃない…………これでも姉妹だから。
「ぷっ。あっすみません。あまりにも姉妹方は個性溢れていて面白くて。」
「重ね重ねカルティナが本当にごめんなさい。私は姉らしいことも出来ず、家族とは別に過ごすことが多かったので関わりが薄いのです。」
「……………そうでしたか。…………………………………………。」
カインデット様は何か話したそうであったが口を開けては口を閉ざすを繰り返していた。
「ふふ。言いにくいことは言わなくていいのですよ。私はカインデット様と婚約発表ができただけで思い出ができて幸せです。」
「………レティア皇女様……………。」
「カインデット様、正式に婚約者になっていただいてありがとうございます。どうか私をレティアとお呼びください。」
「では、遠慮なく呼ばせていただきます。レティア、少しきついのではありませんか?」
耳元に顔を近づけてきたと思ったら呟かれ、いろんな意味で意識が遠退きそうになった。
私そんな素振りは見せていないと思ってましたが、気づかれてましたのね。
「はい…………少しだけ。」
そう言うと私の肩を抱き寄せみんなに悟られないように私を部屋まで誘導してくれる。
カインデット様にこのような事をしてもらい涙が出そうなくらい嬉しい。
みんなに見られたくなく、涙をこらえるのに必死だった。
部屋までたどり着き、ソファーに座る。
婚約発表前とは違いカインデット様は私を支えたまま隣に座った。
そんな些細なことが嬉しくてたまらない。
「レティア、大丈夫ですか?」
「はい。ありがとうございました。」
名前を呼ばれてドキドキしながらカインデット様に返事をする。
名前を呼ばれただけでも意識が消えかかりそうなほど嬉しい。
「会場では人目があり言えなかったのですが、レティアが一番綺麗でした。そんなレティアの隣に居れて幸せです。」
「カインデット様……。」
お世辞でも嬉しい。
「レティア、あなたは外の世界に疎すぎます。今日の周りの様子から誰も教えていないだろうと思いますが、レティアはとても美しくて民にとても人気なのですよ。」
えっ!?そんなの聞いたことがない。
確かに、国の国宝と言われているお母様に姉妹の中で一番私が似ているとは言われていたが………。
「俺からみたら姉妹の方々はそういう妬みもはいっているように見えますよ。」
笑顔でカインデット様から伝えられる話はビックリするものだった。
「実は………白状しますが、魔法使いの間でもレティアは人気があるのです。滅多にお目にかかれないのでレティアを見かけるとみんな嬉しがっていました。」
「カインデット様は!?」
「…………私もその中の一人でした。」
頬を赤らめて言うカインデット様の言葉で私も顔が熱くなっていく。
カインデット様が私のことを綺麗と思ってくださっていた。
嬉しくてまた目頭が熱くなる。
「カインデット様にそのように思ってもらい嬉しいです。ふふふ。」
笑顔で答えるとカインデット様の頬が赤くなった気がする。
「レティアの体調も気になりますし、よろしければ読書はこちらの部屋に来てよろしいでしょうか?」
是非お願いします!!と言いたいが……………。
「ですが…………今日は体調が本当にいいのです。体調が悪いとベッドから起き上がれず、おもてなしもできません。」
悲しいが本当のことだ。カインデット様には元気な私を見せたいがせっかく婚約者になったのだから会いたい。
「全然構いませんよ。おもてなしは気にしないでください。俺もレティアの顔が見れると安心します。それにレティアといれる婚約者と言う特権を頂いたので会いたいです。」
カッカインデット様って律儀なのね。
そういってくれるのなら、是非来てほしい。
「身なりが整っていない日もあるかもしれませんが、それでもよろしければ是非来てください。」
ジーと横から顔を見つめられ、動揺してしまった。
「今もあまり化粧をしていないでしょう?素顔も綺麗ですよレティアは。それに、ピンクの瞳はピンクサファイヤのように煌めいていてとても綺麗で、サラサラとした金色の髪は部屋の中でも輝いて見えますよ。」
にっこり笑ってカインデット様は言ってくれて心が温かくなったと同時にカインデット様からの言葉にどう答えたらいいのかわからず戸惑った。
今までこんなこといってくれる同姓も異姓もいなかったから。
どんなに着飾っても私は痩せ細っていていつも体調悪そうにしているから…………。
今はまだ痩せてる程度だが、もう少ししたら血を吐き食事もろくにとれなくなるだろう。
その時から自分の姿を鏡で見るのが嫌になったことを覚えている。
「………ありがとうございます。カインデット様に言っていただいて嬉しいです。」
今日はさすがに色々とあったから疲れた。
この幸せな時間を少しでも長く過ごすためにも、明日からまた医学書に薬学書…………をニチェに持ってきてもらおう。
チラッとカインデット様の顔を見るとそれに気づいてにこりと微笑んでくれた。
真っ赤な瞳が揺らめいていてとても綺麗だった。
…………もっと長く生きてこの瞳に見つめられたい。