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生まれ変わって救済を望む  作者: 大月 爽
2.全ての始まり
9/26

9.いろいろ辛い

やっと更新。

受験生はつらいよ…



 「じゃあ彼方、そいつの言うことをよく…は聞かななくていいが、しっかり鍛えてもらってこい。彼方の冬休みは2月13日までだったな。その前日には迎えに行くから」

 「…へ?」

 「じゃあ頑張れよー」


 父さんが無責任なことを言って俺を置いていった。

 俺は1つの部屋にいた。4畳程度のごく狭い部屋で、ベッドと机、それからクローゼットがあるだけ。俺はここでこれから1ヶ月半を過ごすことになるらしい。父さんは俺のことを冠に話し、それから「やり方は任せるが変なことまで教えんなよ?」などと言って放任した。そして、俺は「今日からここにしばらく住んでもらうからな」と言われてこの部屋に案内された。

 荷物を置き…とは言ってもカバンだけなのだが、それをなぜか鍵のついているクローゼットにしまって首から下げているカードをかざしてロックをかける。


 「よおし。準備はいいな?」

 「はぁ」

 「行くぞ。さっさと歩けい」


 俺は冠に促されて部屋から出て、同じようにロックをかけてから冠に続いて移動する。しばらく廊下を歩いたところで1つの扉を開けてそこに入った。

 その扉の先には3つのエレベーターが並んでいた。


 「あ〜…よし、解除されてるな」

 「えっと、ここってどこなんです?」

 「んだよ、知らねぇのか?ここはエレベーターで地下にある訓練室に行けるようになってんだ」

 「へぇー…」


 そう言うと冠はエレベーターの本来上や下のボタンのあるところの画面にカードをかざし、何かの操作をした。

 すると扉が開き、冠がそこに入っていった。俺がぼーっとしていると「何してんだ、早く来い」と言われ、俺もそこに入った。


 「んじゃあ簡単にやることだけ説明するぞ。まず今のお前の状態をこれから確認する。それから、オレが足りねぇところを補うように訓練してやんよ」

 「わかりました」

 「ああ、あとその微妙な敬語やめろ。イラっとする」

 「え?あ、はぁ。わかった」

 

 そんな間にチンッと音がして、エレベーターが止まった。扉が開き、部屋が見える。2,30m平方くらいの直方体の部屋で、全体が鈍く光る金属のようなものでできている。冠が出るのに続いて俺もエレベーターから降りると、扉が閉まったあとその上に分厚い装甲が被さり、完全にエレベーターの扉が消えた。


 「え?ちょっと、帰りは?」

 「ん?ああ、初めて来る奴は大抵驚くんだよな。安心しとけ、簡単に開けるからよ」

 「あ、そう。ならいいか」

 「よし、じゃあ始めるか。何か武器は必要か?」

 「ああ、大丈夫だ」


 俺がそう答えると、冠がその死神のような長い黒いローブの中から一振りの刀を取り出した。

 いや、俺を殺す気?間違いなく切られれば重症じゃ済まされないと思うのだが。

 そんなことを思っている間にもう片方の手にいつの間にか持っていたコインを俺に見せてくる。


 「んじゃ、コインが床に落ちたら開始。俺を倒すんじゃなく、殺す気で来いよ?」

 「いや、その前に俺が死ぬと思うけど?」

 「ん?あ、別に殺しゃあしねぇから安心しろ。峰打って奴だ。まぁ全身打撲ぐらいは覚悟しとけよ」

 「いや…はぁ。わかった」

 「んじゃ、いくぞ?」


 冠は指でピンッとコインを弾く。

 クルクルと回って落下していく。

 床に届き、カーン…と音が響く。

 俺は腹の辺りを蹴られて後ろに吹っ飛んだ。


 「がはっ⁉︎」

 「おせぇ。テメェ、さっきオレの動き見てただろうが?このぐらい予想して避けろや」

 「む、無茶な…」

 「さっさと立て。続きだ。オレに1回でも攻撃当てない限り終わらせねぇから」

 「はぁあ⁉︎」

 「んじゃ、いくぞ〜」


 冠は俺に向かって刀を向け、次の瞬間姿が掻き消える。

 俺は目の前にダイヤモンドで壁を作る。

 脇腹に痛みを感じて横に吹き飛んだ。


 「んだよ。もっと上手く能力使えや。壁作るぐらいなら自分を囲やいいだろうが」

 「…な、なるほど」

 

 確かに防御するならどこから来るかわからないわけだし、そっちの方か確実だ。


 「感心してねぇで攻撃しろ」

 「はぁ。わかった」


 俺はダイヤモンドで大量の砲弾を生み出す。結局、一番固いものを使うのがいい。エメラルドよりずっとダイヤモンドの方が硬く、攻撃には適する。ま、とっさに出すときはエメラルドの方がいいが。

 俺を中心に四方八方にダイヤモンドの砲弾が飛ぶ。攻撃は最大の防御という言葉がある。ならば近寄らせなければいい。…まぁ部長のように受け止めて投げ返すようなことがない場合に限るが。


 「ぬるいわっ!」

 「…ッ⁉︎」

 

 ところどころでキンッとダイヤモンドがはじかれて火花が散る。一瞬だけ冠の姿が見える。さっきまでとは話にならないほど早く、ほとんど冠の姿を捉えられなかった。

 その火花の数はだんだんと増えて、俺に近づいてくる。

 俺は一瞬だけ見える冠の姿から向かう方向を予測して砲弾を打つが、一向に当たる様子がない。

 そして、背中に蹴りが来た。


 「及第点だが、やり方がぬるい。どうせなら尖らせるとかでもっと早く打て。そんなんじゃオレには当たらねぇよ」

 「さいですか…」

 「ま、大体は理解した。テメェは判断力が浅い。俺が向いた方向に必ず行くとでも思ったか?んなわけあるか。戦闘中だろうともっと良く考えて行動しやがれ。それとさっきから近づいた途端受身は取ってるみてぇだが、攻撃に回ろうとしてねぇ。近接戦闘もできねぇみたいだな。まぁまずはそんなとこか。ああ、そうだ。まず、筋力が足りてねぇ。今日から最低オレが言う訓練10セットな」

 「は、はぁ…」

 「テメェは友達が守りてぇんだろ?ならオレの言うこたぁちゃんと聞け」

 「わ、わかった」


 今のちょっとした時間でそれだけのことがわかるものなのだろうか?

 言い方も結構きついし、強面だが能力は高いということは理解できた。


 「んじゃ、続きだ」

 「…へ?理解したって」

 「そうだが言ったろ?1回でも当てねぇと終わらせねぇってよ」

 「マジか…」

 「喜べ、マジだ。まぁこっからは近接戦闘の訓練のために能力使わねぇでおいてやる。もちろんテメェも使用禁止だがな」

 「はぁ」

 「ほれ、どっからでもかかってこい。とりあえず武器を使うのは許してやるから、適当に何か作れ。無手がいいってんなら別に強制はしねぇが」

 「わかった…」


 俺は昔から殴り合いの喧嘩なんてしたことがなかった。せいぜい柔道や剣道程度。部長との模擬戦だって、俺は遠距離から物を飛ばすことばかり。

 じゃあ何を作ればいいのか?相手は刀を持っていて、俺は無手。距離的にも間違いなく冠が有利だ。まぁだから作れと言ったのだろうが。で、俺が使えるような武器は何か?間違いなく何を使っても醜態を晒すだけだ。お粗末な殴る蹴るよりはマシになるかもしれない物を選ばなくてはいけない…

 よし。


 「ほお。西洋剣な」

 「一応、学校で剣道はやったし、見たことがある刀剣類ってこれしかなかったから」


 俺の手には両刃の幅の広い剣。前にライトノベルを読まされた時、何のことを言ってるのか全く分からなくて調べたことがあった。これはブロードソードと呼ばれる剣。全体が1mくらいの長さで、軽量化のための血溝という刀身の真ん中の窪みを大きめにとっている物が多いらしい。片手用の武器でライトノベルなんかでよく出てくる冒険者や傭兵なんかなどによく使われる癖のない武器だそうだ。本来はその広い刃を使って切りつける攻撃がメインらしい。

 それをとりあえず銅(Cu)で作ってみた。やっぱり初心者と言ったら”銅のつるぎ”だと思った。ついでに言わせて貰えば残念ながら思ったよりも重い。

 

 

 「んじゃあ、かかってきな」

 「ええと…胸を借ります?だったかな」


 俺はアニメなんかのように振るつもりで剣を冠に向けて振り下ろす。

 冠は刀でガードすることなく、俺を蹴り飛ばした。


 「よし、ちょっと待て。問題外だ。もう当てるとか、んな問題なんかじゃねぇ。テメェ、ふざけてんのか?」

 「いやぁ…一応真面目に」

 「ならばなおのことだ。まず第一に基礎もクソもありゃしねぇ。そんなの以前の問題じゃねぇか」


 やれやれといった風に冠が首を振った。

 俺は剣道で振り方だけは覚えたが、それ以外を授業でやらなかったためにからっきしだ。つまり、俺は剣をバカみたいに縦に振ることしかできない。しかも授業で教わるような基本の基本みたいな型で。

 俺はその旨を冠に説明した。


 「…はぁ。ったく、んなこたぁ初めに言いやがれってんだよ」

 「あ、はい。すみません」

 「まぁいいだろう。なら初めっからしっかりと仕込んでやんよ。まず持ち方だ。んな持ち方じゃあ、思いっきり振れなかっただろ」

 「いや、その通りです。はい」

 「ちょいともう1本作ってみてくれるか?」

 「わかった」


 俺は同じ剣を作って冠に渡した。

 冠はその剣をひょいっと持つと、軽い感じに縦に振り下ろした。


 「テメェ、剣は今までに作ったことあんのか?」

 「いや、ないけど」

 「よくまぁ、ここまでバランスのいいもん作れんな。普通は無理だと思うぜ?」

 「そう?」

 「ま、オレはもっと重ぇ方が好みだがな。で、持ち方だったな。こうだ」

 「こんな感じか?」


 俺は俺の目の前でその剣を持って見せてくる冠の持ち方を真似て持ってみる。


 「そうじゃねぇ。もっと緩く」

 「こうか?」

 「ちょいとちげぇ。その人差し指のところを…ああ、そうそう。そんな感じだ」

 「なるほど」


 俺は手取り足取り持ち方を教えてくれる冠に感謝しつつ、持ちやすい持ち方に感心した。

 冠がじゃあ次だとでも言わんばかりに俺の前で剣を振り上げる。


 「次はとりあえず振り方だ。あんな剣道の振り方を無理やり捻じ曲げたような振り方じゃあ危なっかしくって見てられねぇ」

 「それはまぁ…」

 「まぁ先ずは見てろ。わかりやすく振ってやるからよ」

 「お願いします」

 「こうだ」


 ヒュン…と剣が空を切った。

 そんな早く振ったわけじゃないが、剣が微塵もぶれずに下まで振り下ろされる。


 「よしやってみろ。まずそこで構えて…ああ、そんな振り上げなくったっていい。敵にこれから攻撃することをわざわざ伝えるわけじゃねぇんだからよ」

 「確かに。じゃあ、こう?」

 「あ〜…何か的があったほうがよかったかもしんねぇな。ちょいと待ってろ」

 

 冠はエレベーターがあった場所の近くまで行き、壁に触れて何かをつぶやいた。

 少しすると、扉が現れてエレベーターが開いた。その中にはカカシが数体置いてあった。冠がそれを担いでこちらに戻ってきた。


 「こいつの頭のあたりを切るつもりで振れ」

 「なるほど。的があれば位置がわかりやすい」

 「感心してねぇでさっさとやれ」

 「わかった」


 ブンッと俺は勢いよく剣を振る。

 冠が俺を蹴り飛ばす。


 「いってぇ…」

 「テメェはやる気あんのかっ⁉︎どうせできねぇのに早く振ろうなんざ考えるか普通はよぉ?」

 「あ、はい。すみません」

 「ゆっくりでいいんだ、ゆっくりでよ。剣先がぶれねぇように気をつけて、相手をよく見て振り降ろせ」

 「はい」

 

 俺は再び剣を振った。

 冠が微妙な表情を浮かべた。


 「どう?」

 「何かが惜しいな。お前にその剣があってねぇのか…?ちょっと、刃先の部分を軽く作れるか?」

 「ええ、まぁできるけど」

 「じゃあやれ」

 

 俺は言われた通りに剣の先のほうを軽めに作り直す。


 「こんな感じで」

 「ちょいと貸せ。ああ、こんなもんか。いいぞ、振ってみろ」

 「うん」


 俺は返された剣を振るう。さっきよりスムーズな感じに触れた気がする。


 「ああ、そっちだな。剣のバランスはそのうちもう1回考え直す。今日はそれがまともに振れるようになるまで継続だ。できるようにならなねぇなら徹夜でもしろ」

 「わかっ…え?」

 「んだよ、聞こえねぇのか?」

 「マジですか?」

 「当然だ。徹夜だろうがなんだろうが、できるようになんねぇなら休ませねぇからな。まぁオレは休むがよ。ほら、さっさとやれ」


 冠はそう言って俺の横で監視するように俺を見ながら地面に座った。

 俺はできるだけ言われたことに忠実に剣を振るう。

 それに対して悪い部分を冠が言って、俺はそれに気をつけながら次を振る。

 しばらく続け、結局終わることができたのは夜中の3時半だった。朝の7時過ぎから始め、1日を剣を振ることだけに費やした日となった。 

 冠は意外といいやつなのかもしれない。


暇ができて書けたら投稿します。

できれば期待しててくだせぇ…

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