22.疑問が浮かぶ
またちょっと久しぶりです。
これからもゆったり更新していきます。すみませぬ。
「で、またテロに巻き込まれたの?」
「まぁな」
俺はいつものように集まった部活で茜に肩を掴まれ振り回されている。
ついでに言うと両腕に幸と咲が抱きついているためにそれを止めることもできない。さっきから忍とヒロトに助けを求める目線を送っているが、忍は苦笑いを、ヒロトに至っては部長にしがみつかれてむしろ助けを求める目線を送り返してきている。
「よかったです」
「彼方先輩が無事で」
「おう。いやな?せっかく新しくショッピングモールができたからみんなで行こうと思って忍と下見に行ったわけだったんだが…」
「そ、そうなんだよ。け、けどこんなことになって残念だよね…はは」
じっと全員に見つめられて俺らはしどろもどろになりながらあらかじめ決めていた言い訳を言う。
いや、まぁこんなことにならなかったらみんなで行こうとは思ってたんだ。事実だ。嘘ではない…はずだ。
「ところで諸君。これは何かね?」
そんな俺らのことを盛大に放置して部長がそう言った。
今、部長の目の前にはケーキ屋の箱が置かれている。俺らもとりあえず手頃な位置の椅子に座った。
「いや、部長の復帰祝い?まだやってなかったと思って」
「遥先輩。お帰りなさい」
「まぁ、みんなの無事を祝ってっていうのもあるけどな」
用意したのは俺とヒロト。
考えたのは忍。
前世でも今世でも友達の多くない俺にはこういうときどうすればいいのかとか分からなかったし、第一にしようと思ったことがなかった。
「それでここ学校よね?大丈夫なの?」
「その件については一応及川先生に協力を頼んでおいたし…ま、大丈夫だろ」
「怒られても準備した俺たちだけだからさ」
「じゃあ、改めて…部長、おかえりなさい!」
俺とヒロトと忍は手元に隠し持っておいたクラッカーを鳴らす。
部長がクラッカーの音に少し驚いて、それから嬉しそうに笑顔を浮かべた。
「ああ…ただいま」
…本来だったらすごくいい絵面な所だが、部長がヒロトの膝の上なせいでいまいち締まらないのはこの際置いておこう。
何はともあれ、またみんなでこうやっていられてよかった。
「さ、ケーキとりわけようよ。遥先輩はチョコレートケーキですよね」
「うむ。チョコレートは至高なのだよ」
「あ、俺イチゴのモンブランな」
「え〜、私もそれがいいんだけど」
「だろうと思ってちゃんと2つ買ってきたぞ!」
「さすがは彼方ね!」
ケーキを取り分け、椅子に座る。
机を4つ繋げて並べてその上にケーキを乗せた皿を置き、それをみんなで囲んだ。
飲み物を注いで、みんなと談話する。
「ヒロトっ!ヒロトっ!」
「はい?なんですか?」
「あ〜ん」
「え、あ…あ〜ん」
ヒロトが押し付けられるチョコケーキに口を開く。
そして、それを見てひらめいたかのように咲と幸がこっちを見た。
「…イチゴはやらんからな」
「彼方先輩…あ〜ん、です」
「あ〜ん、です」
俺のケーキを見ていたので欲しいのかと思ったが逆であったようだ。
2人から向けられるフォークに乗ったケーキを食べる。
ショートケーキだ。
「うん。うまい」
「よかったです」
「まだ欲しいですか?」
さすがにそんなに貰うと悪いので首を振っておく。
そんなところで部長が爆弾を落としてくれた。
「ヒロトっ。間接キスであるな!」
「ゴホッ…⁉︎」
ちなみにむせたのは俺だ。
ヒロトはただ顔を横に背けている。
咲と幸がしてやったりな顔をしていた。
…茜がこっちにフォークを出そうとプルプルと手をのばしかけていたのを引っ込めたのは見なかったことにする。というか茜と俺のは同じだろ。
「責任…取ってくれますか?」
「くれますか?」
「嵌められたな…全く、部長は」
部長に目を向けると、こっちを見てニヤッと笑った後。
「ヒロト、直接でも良いのだぞ?」
「勘弁してくださいよ…」
「もう…付き合っちゃえばいいじゃない!」
「確かにそうすればもうアピールが治るかもなー」
ふざけた口調で俺と茜がからかう。
「そ、その時は彼方くんが指輪を作ってくれるよ」
「ダイヤモンドでもなんでも来いだからな」
「ヒューヒュー、です」
「スピーチはしてあげるのです」
「みんなも勘弁してよ…」
ヒロトが疲れたような顔を浮かべ、そしてみんなで笑った。
「ふふふっ…また、皆でこうして集まりたいものだな」
「なんですか、部長。もう集まれないみたいな言い方して」
「この私は後1ヶ月足らずで卒業だぞ?こうしてこの教室に集まるのはもう少ないのだよ」
そういえばそうだった。
他の先輩と会う機会がないからすっかり忘れ去っていたが、もう2月半ば。卒業式は3月16日だ。
…もうすぐで部長が卒業するとなると何か感慨深いものがある。
いつも見ていたこのヒロトの上に部長が乗り、俺の横に咲と幸がいて、それを茜と忍が見ている。
「ああ、そういうことですか…じゃあ、酔い亀で集まればいいじゃないですか」
「そうよっ。いつでも集まろうと思えば集まれるじゃない」
「部活としてという話なのだが?」
「…あ、ああー。なるほど。じゃあ、次は部長の卒業祝いをしないとか」
「え、ええ…ぼ、僕もうアイデアないよ?」
「う〜ん…あ!彼方が卒業式で宝石を散らせば華やかになるわ!」
「アホか。危ないし、宝石の価格が下落するだろ」
「いいじゃない。いくらでも出せるんだし」
いくらでも出せる方がよっぽど問題ではあると思うがな。
その気になれば俺は一人で世界恐慌紛いなことが起こせるのだから。
きっと札束を燃やして暖をとるように、宝石を砂利の代わりに敷き詰めることになるだろう。
「ふむ…彼方はどのように宝石を出しているのだ?」
「へ?いや、普通にですけど」
「普通にとはどのような感覚なのだ?」
「オードをイメージしたものに変換する感じですけど、それがどうかしたんですか?」
「少し違うのかもしれん。この私の能力は知っているな?」
「ええ。それでどれだけやられたことか」
「身体強化をする時、オードがエネルギーとして勝手に消費されているような感覚なのだよ」
「…?つまり、能力の系統によって感覚が違うと?」
俺の場合、オードを払う代わりにものを生み出す。オードを消費する代償によってものを操作する。そんな感覚に近い。俺のそれはオードがそのまま物や動きに変換されているようなもの。
だが、今の部長の言い方だと車のガソリンのように勝手に使われるような感じだ。今までそんなことを考えたこともなかった。
ただ、何かを作ろうと思ってオードを消費すれば物が作れたし、動かそうと思ってオードの消費すれば動かせた。
”この世界だから”と考えていたが、改めて考えるとありえないことだ。
「今日の議題はそれとしよう。さぁ、本日の部活を始めようではないかっ!」
「俺はいつになったらこの部活の部長になるんだろうな」
「さぁ?遥先輩がいなくなっても彼方は副部長なんじゃないかな?」
「では次はヒロトだなっ!ヒロトはどのような感覚なのだ?」
「え?あ、ああ。俺の感覚は…物にオードを込めるような感じ、かな?オードを込めると込めた分だけ発動する感じでさ」
「なるほど…」
「どうせ次は私でしょ?私は捧げるような感覚よ。治したいものにオードをあげるの」
「ふむ。そうか」
部長の言葉を聞く間もなく茜が喋る。
確かにこう聞くと色々と異なっているようだ。今度英雄軍に行ったらいろんな人に聞いてみるのもいいかもしれない。面白い答えが聞けるかもしれないな。
「ん?じゃあ忍の場合ってどうなんだ?忍はいつも勝手に使われてるのか?」
「え、えっと、僕は、その…発動すると勝手に持って行かれる…だよ」
「へぇー。それって勝手にオードを使い切られて気絶したりしないのか?」
「し、してたよ…昔は」
「あー、なんか大変だったんだな。色々と」
「うん…」
そう、色々と。複雑な表情を浮かべた忍。
これから死ぬ未来を見せられ続けるのはどんな気分なのだろうか?
しかもそれによってオードを勝手に消費されて気絶するとか、実は相当使い勝手の悪い能力だったんだな。
「う〜む…」
「どうしたんですか部長?」
「これでは数が少ないではないか」
「え?ああ、確かに。こんな数人の答えだけじゃ統計も何もないですしね」
「…聞き込みだ!さぁ、諸君。外へ行くぞ!」
「あ〜、始まった。部長の変なところで発揮されるやる気が」
こうなった部長は止められない。
ニッコニッコとヒロトの手を引いてカバンを片手に教室を出て行った。
「あ〜…茜、部長は頼んだ。俺はこの後英雄軍に昨日の報告しに行かないといけないから帰るわ」
「えっ?…わかったわよ。しょうがないのはわかってるわ」
「じゃあ、頼んだ。咲と幸も悪いな」
「いいです」
「しょうがないのです。義務ですから」
「じゃ、忍。後は頼む」
「え、ちょ、ちょっとそれって片付けのこと?」
俺は返事の代わりににっと笑って教室を出る。
時計を見ると17時35分を示している。約束していた時間がもう近い。
…と言うかレイヴィスのことだからもうすでに待ってる可能性もあるんだよな。
階段を駆け下りて、下駄箱で靴を履き替え、外に出ると部長とヒロト…そしてレイヴィスがいた。
レイヴィスは部長に詰め寄られて困っている…英語で対応して日本語が話せないふりをしようとしているのが見えて少し笑った。
「Oh!Kanata!」
「彼方よ!彼に是非聞いてみてはくれないか?」
「ああ、はい。後で聞いておきますよ。じゃ、俺はこの後事情聴取みたいなの受けないといけないんでお先に失礼します。聞き込みは英雄軍の人から聞いておくので」
「ふむ。期待しておくぞ」
「じゃ、さよなら」
部長からレイヴィスを引きずりながら離れていく。
校門を出て、少ししたところでレイヴィスがため息をついた。
「はぁ…最近の女の子って怖いんだねぇ〜」
「いや、部長が特殊なだけだから。それよりさっさと終わらせてくれ」
「はいはい。全く、彼方くんも冠に似たんじゃない?人使いが荒いよ〜」
俺が腕に触れるとパッと視点が切り替わって見慣れた部屋に着いた。
ついいつもの癖で認識証に手を伸ばすが、そこに俺の認識証はない。まぁ、当然だ。
俺が手を伸ばしてたのを見てか、レイヴィスが俺に認識証を渡してきた。まちがいなく今まで俺が使っていたものだ。
「彼方くんの認識証返しておくね。あ、それともそういう時用のやつのほうがいい?」
「いや、勘弁してくれ。なんか俺が事件を起こしたみたいじゃん」
「あはは〜。そうかなぁ?ま、いいや。じゃあ、行こうか」
俺は見慣れた白い通路を通り、見慣れた白い扉を開け、見慣れていない面子に囲まれる。
いや、1人は知っている。父さんの秘書のような人、俺が初めにこの本部に来た時に転移した人だ。
「さぁ、掛けて掛けて。飲み物は何かいる?アイスティー、オレンジジュース、麦茶、コーヒーがあるけど」
「あ、じゃあアイスティーで」
「はいは〜い」
俺は目の前にあるパイプ椅子に座る。
コップに淹れられたアイスティーを一口飲み、前を見た。
長机の向こうに座る眼鏡をかけ、あごひげを生やした厳格そうな人がこちらを見ている。
「初めまして、だね。彼方君。私は進藤明だ。よろしく頼むよ」
「あ、いえ。こちらこそよろしくお願いします」
差し出された手を握る。
戦闘をしていない、硬くなっていない手。ただ、なぜか嫌な感じがした。
「では、聴取を始めさせてもらおうか」
「あ、はい」
余計なことは喋っちゃいけない。
俺らがやったことは間違いなく危ない行為なだけでなく、問題行動だ。言動には気をつける。鉄則だ。
そして何より、余計なことまで口走って俺らの行動がばれることを避けること。
答えは最小限に、なおかつ有意義に。
「まず、あの場にいたのは何人だったかな?」
「リベラリズムはフードコートに初めは1人…転移持ちで重力操作と思われる敵が加勢、というか回収に来ました」
「ほう。初めの1人はどんな者だった?」
「よくわからないんです。これ、ずっと考えてたんですけど、あんな能力見たことないんです。俺、昔から超能力に憧れてて人一倍知ってる自信があります。でも、自分自身を突然成長させたり、硬化させたりする能力は見たことがなかったです」
この能力についてはできるだけ話して次に会った時の対応をできるようにしなくてはいけない。
「…⁉︎そのことについてもう少し聞かせてもらえるかな?」
「ええ。もちろんですよ。俺は今日このことについて話しにきたと言っても過言じゃないです」
できるだけ会話の内容をここに向ける。
そうすれば余計なことまで聞かれずに済むし、何より俺が知りたいことも知れるかもしれない。
この後は少し閑話を入れます。




