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あなたへと導く光  作者: 霜月卯月
第Ⅰ章
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8





タッタタタタタタ・・・・


雛華は姉に見つかりまいと森の中を急いで逃げる。見つからないように走っているせいか、迷子にでもなりそうな足取りだが、遊び慣れた森の中である。器用にもどんどん進んで行く。


(皆華お姉様に見つからないようにしなくては。一応声は聞こえなくなったけど、油断は禁物だわ。でもお姉さまが探しに来るなんて珍しいわね。昔はよくあったけど、最近は放っておいてくれてたはずなのに・・)



探しに来ることに疑問は感じるが、見つかってサボっていることを怒られるのは嫌である。雛華もサボりが良いこととは思っていない。だからこそ、逃げて1番優しいお兄様が帰ってくるのを、自分を庇ってくれる存在を待つつもりである。だからこそ見つかるわけにはいかない。よって、家までの一本道がある付近まで全力で走って行く。何故道の付近なのかというと、わざわざ森から道の付近には来ない。即ち、道の方を見張っていれば見つかりづらい。そしてここには、秘密の隠れ場所がある。雛華が編み出した逃げる方法である。今回もいつも通りの方法で逃げようと周りを気にしながら走っていた。そして周りに気を取られ、木から出てくる人に気がつかなかった。気付いた時には遅かった。雛華は盛大にその人に突撃したのである。











一方、神殿までの一本道を歩いていた裂翔は森の様子に首を傾げていた。何かがおかしい。それは幾度となく戦地に赴き、養われた五感のような感覚である。森がざわついている。人が蠢いている。そんな感覚がある。普段なら野生の動物だろうと思うような、敵意のないざわめきである。しかしここは神聖なる巫女のいる森。ざわめきや人の移動があるものなのかと首を傾げていた。


(何かいるのか。この森には。それとも何かが入りこんだのか。後者なら確かめた方がいいのかも知れんな。害なすものがいるとなるとやはり放ってはおけんしな)



武官の職務に忠実なのか、己の性分なのか、気になったもの、答えが出ないものは放っては置けない。確かめて、何もなければ引き返そう。そう決意し、一本道から森へと足を踏み入れた。



森の中は想像よりも明るく、とても綺麗な森だった。森の中を歩くすべも一通りわかっている為、迷いなく何かの気配がする方へと足をすすめる。


(ここら辺が近いか。ん?何か足音が聞こえる。人か?だが何かに追われているような・・)


考えながら大木から体も出した途端、小さい物が体にぶつかってきた。



「うわぁ!」「きゃあ!」



どんと衝撃がきた後、体にぶつかった小さな物が倒れそうなのが見え、咄嗟に手も伸ばす。そして捕まえたのは、小柄な愛らしい顔の少女だった。










ぶつかった雛華の方も驚いていた。とても大きい、山のような岩のようなものとぶつかったような感じがした。だがそれは人であり、ぶつかった後、自分が倒れないように咄嗟に腕も掴んでくれた。そのおかげで、地面に倒れずにすんだし、汚れずに済んだ。しかし雛華にはすぐに状況の整理ができなかった。



「いゃあぁぁぁぁぁーー!!!」



凄まじい悲鳴をあげた雛華に裂翔も驚き戸惑った。「おいっ!」となんとか落ち着かせようと声をかけてみるが、「いや、いやぁ」と声を出すだけでまるで要領をえなかった。



それも仕方がないことではある。雛華は所謂、箱入り娘のようなものである。生まれてから両親や兄たち以外と森の外に出たことは数える程度。その時も1人になったことなどないし、家族以外の人を見たのも遠くいる大勢を見ただけ。それも高いとこから覗くといった感じに。裂翔のように背の高い、がっしりとした男の人を間近にみたことは生まれて初めてである。更にその人に体を支えてもらっているとはいえ、触れられている。家族以外では、年配の優しげな女性以外経験のない触れ合いに驚き戸惑い、恐怖心以外なかった。



そんな事情は知らない裂翔は大いに焦っていた。転びそうな少女を助けただけなのに、悲鳴を上げられ、嫌と拒絶されている。手は離した方がいいとはわかるが、離したら確実にこの少女は倒れるとわかる体制になっている。戦場においてもここまでどうしたらいいかわからなかった局面は片手で数えれる程度だろうと思う。


(どうにかして落ち着いてもらわないと。だが、どうすれば・・・・)




ほとほと困り果て、いっそ怒鳴りでもし、正気にさせた後、きちんと立たせるしか・・。しかし、それをすると泣きながらこの少女は逃げる気がする。大いに傷付くがそれも仕方がないのかも知れない。この少女の為にも・・。





そんな自分を犠牲にした決意を実行しようかと考えていた時、落ち着いた、しかし凛と澄んだ声が聞こえてきた。




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