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あなたへと導く光  作者: 霜月卯月
第Ⅰ章
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9




「雛華。大丈夫だから落ち着いて」



その澄んだ声の持ち主は、転びそうな雛華の体を後ろから支え、安心させるように頭を撫でた。その仕草にパニックになっていた雛華も落ち着きを取り戻し、声のする方へと顔を向けた。




「源龍お兄様・・」


雛華の1番上の兄蒼月源龍(そうげつげんりゅう)である。大好きな兄が現れたことによって、雛華の体から力が抜け、崩れ落ちそうになるのを慌てて、2人が支える。



「雛華。しっかり立って。じゃないと裂翔も手を離せないじゃないか」



兄の言葉に、やっと目の前の人物が自分が倒れないように腕を掴んでくれていたと気付いた。雛華は慌てて、身を起こし、頭を下げる。




「あ、あのすみません。私、よくわかってなくて、いきなりで、その、びっくりしてしまって・・叫んだりして、暴れて、本当にごめんなせい」



「いや・・おれも急だったし、突然で驚かせた自覚はあるから・・」



誤解が解けて、謝ってもらえてそれだけで裂翔は安心した。最悪な状況は回避できたし、少女は転ばずに済んだし。自分とて、勝手に人様の森を歩いてしまったのである。悪さで言えば自分の方が悪い可能性がある。少女にとっては、自分の庭のような場所で、知らない男性に腕をとられたようなものなのかも知れないと改めて考えると、自分は誘拐犯のようなものなのかも知れないと思う。たとえそれが、きちんと招待された身であってもだ。








「偉隊長。雛華が悪かったね」


「っいえ。私の方こそ出過ぎた真似を致しました」



裂翔は自分が源龍に認知されていたことに驚いた。源龍は王族の信頼厚い近衛騎士である。若くして近衛の地位に就き、王や王妃、その子供達の間を行ったり来たり警護している珍しい騎士であり、それが許される立場の人間だと有名だったからである。自分にとっては雲の上の存在。まさか名前まで認知しているとは思ってもみなかった。





「なんでここにいたかは、あえて聞かないが、母上に会う予定だろう。流石に間に合わないのは不味いだろう」



その言葉に、自分の当初の目的と、思いの外、時間がたってしまっている事実に気付いた。内心焦っていると


「案内するよ。雛華が迷惑かけたお詫び。但し、離れないでしっかりと着いてきてね。余所見したらどうなっても責任はとらないと始めに伝えとくよ」



なんとも意味深な言葉を述べながら、雛華も担ぎ上げ、歩き出す源龍。雛華の「えっ!歩けるからおろしてお兄様!!」の声を軽く無視して森の中を歩き出した。


色々と言いたいこと、聞きたいことはあるが、教えてはくれないだろうと諦め、言われた通り、源龍の背中を余所見をせず追っていった。









見失わないように源龍の後をついていくと、不意に開けた場所にやってきた。そして眼前には大きな建物が建っていた。


白を基調とした新しげな建物。お城とは違う、人が住んでいると感じる、とても大きな建物がいきなり現れ、裂翔は少しだけ戸惑った。



「ん?どうかしたかい?」


一瞬、怪訝そうな顔をした裂翔の様子を見逃さなかった源龍はそう尋ねた。



「いえ。なんでもありません」



「そう?」


誤魔化そうとした様子を感じながらどうしたものかと考えていたが「一本道はこちらに繋がっていたにですね」と話を変えられ、仕方がなく話を合わせる。



「いや、途中で分かれるんだ。あっちに見える神殿とこの家への道に。初めてきた人は戸惑うかも知れないが、一応もう一本の道の先に神殿が見えるようにはなっているから、あまり間違えたりはしないはずさ。偉隊長の場合は迷う可能性はあったかも知れないけどね」



源龍の向いた方をみると、確かに大きな神殿らしき建物がみえる。この国にとって崇める象徴ともいえる建物である。緑神の神殿や星の神殿など数々の呼び名があり、姫巫女達が熱心に祈りを捧げる場所であり、神に願いを届けたい者達が訪れる場所でもある。



裂翔にとっても馴染みのある建物とは言えないが、小さい頃から絵などで見ていたこともあり、なんとも言えない気分にささられる建物だった。







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