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世間からは神聖な場所、得体の知れない場所など言われているこの森も雛華にとっては、小さいころからの遊び場。新鮮な果実のとれる木や森を一望できる場所、兄達と作った秘密基地、すべてが雛華にとって癒しの場所、1人のさみしさをうめてくれる空間だった。
今日も神殿から抜け出して大好きな川辺でのんびりと過ごしているときだった。
遠くの方から皆華姉さんの自分を呼ぶ声が聞こえてくる。また自分を神殿に連れ戻しにきたのかと思い雛華は慌てて川辺から立ち上がった。
「雛華ー!ひーなー!!」
ふぅ。とため息を吐き辺りを見回す。サボり魔である妹を探しに森までやってきた。いつもならサボっていてもよっぽどのことがない限り呼び戻したりはしない。妹の置かれている立場、境遇などもなんとなく理解している。それに巫女の力が本当に必要な事件など起こっていない。妹の力などなくても姉と2人で十分やっていけている。だからこそ、妹の脱走にも、目をつむっていた。
しかし今日は違う。母である最高位巫女、千華の要望で雛華を探しにきたのだ。なんでも王宮から偉い武官が来るとかなんとかで、巫女全員が集合せよとの思し召しなのだ。しかし、妹がいなくなってしまい、慌てて探しにきたのだ。だが、見つからない。
「もう!どこにいったのよ!あの子は」
皆華はこの広い森で途方にくれたのだ。