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ライフコース  作者: 只野 唯
ショートケア編
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小さな約束


 週に一回、火曜日。

 ショートケアは十四時から。


 最初に言われたことは、とても簡単なことだった。


「お昼ごはんは食べてきてくださいね」


 それだけ。

 難しい課題も、目標設定もない。

 ただ、“食べてくること”。


 以前の私は、一日中何も食べない日もあった。

空腹なのかどうかも分からないまま、夕方になり、夜になり、布団に入る。


 食事は生活の一部ではなく、気分次第の行為だった。


 でも火曜日だけは違う。

 十四時に間に合うように家を出る。

 その前に、何かを口に入れる。


 パン一枚の日もある。

 バナナとヨーグルトの日もある。

 コンビニのおにぎりの日もある。


 栄養バランスなんて考えられないけれど、

 「食べてきてくださいね」という約束を守るために、私は食べる。


 守らなければ、と思った。


 不思議だった。

 会社の約束は守れなくなったのに、

 この小さな約束は守りたいと思える。


 もしかしたら、

 “守れなかったら終わり”ではないと知っているからかもしれない。


 ショートケアでは、途中で帰ってもいい。

 話さなくてもいい。

 黙って座っていてもいい。


 それでも、「お昼ごはんは食べてきてくださいね」だけは、生活の芯みたいに残った。


 火曜日のために食べる。

 食べるから、体が少し動く。

 体が動くから、家を出られる。


 たったそれだけの循環。

 でも、それは確かに変化だった。

 一日一回、私は自分を生かす選択ができるようになった。


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