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ムレスズメ  作者: リンネ カエル/霖廻 蛙
売れない作家のリトライ
5/38

第四話「思いがけない結果と目標」



[現在]


 三年後、オレは中学を卒業し、『私立 鬼灯(ほおずき)学園高等学校』に入学していた。


 ここは、前回もオレが通っていた高校だ。

 もちろん入試は問題なかった!

 過去にやったからな!ある程度は予測できる!

 まあ、いい思い出……だけでは無かった場所だけど。

 ココを選んだ理由はある。


 木陰(こかげ)雛子(ひなこ)。当時三十一歳。

 オレの担任教師だった人だ。

 そして、オレの前の人生の恋人だ。


 彼女との出会いはこの場所だったから、また会えると思ったんだ。


 世間からしたら、禁断の恋とかはしゃぎ立てるだろうけど、そんなもん関係ない。

 好きになってしまったものは、もうどうしようもできないもんなんだよ。


 恋にルールなんてない。

 自制心は確かに持たなきゃいけないけど……好きな気持ちを伝えないまま終わることなんて出来なかった。


 何よりも……オレのことを救ってくれた、恩人だったから。

 

─────────────


「えっとー、クラスは同じ二組だ! よしっ!!」


 掲示板でクラスを確認したオレは教室に向かった。

 クラスの席に着くと、そこには見慣れた顔がズラリと並んでいた。

 懐かしむ顔もあれば、嫌な思い出も蘇ってくる顔ぶれもあった。


 でも、オレにとっては、そんなことどうでもよかった。


 クラスが二組なら担任は(ヒナ)だ!

 やった!また会えるんだ!


 そう、思っていた。

 だが、教室に入ってきた先生は、別人だった。



「……え?」



 なんで?過去に戻ったなら、担任は雛のハズじゃ?

 オレが戻ったことで過去が変わった? 

 ウソだろ……。


「なら、ヒナはどこに……。」


 オレは走り出していた。


「……ハァッ……ハァ、ハァ……。」


 他のクラスの扉を開け、職員室にまで駆け込んだ。

 しかし、雛はどこにもいなかった。


 高校入学初日に、とんでもない奇行に走ったオレの噂は、瞬く間に全校生徒に知れ渡った。

 でも、そんなことはどうでもよかった。

 それで孤立しようが、雛に会えればそれで良かったんだよ。


 なのに……。


「なんでだよッ!! なんでヒナがいないんだよッ──!!」


 その日は学校を飛び出し、叫びながら走り回った。


 登校初日から授業をバックれたオレは、次の日めちゃくちゃ怒られた。

 このことは、その日のうちに母親にも連絡がいき、オレは怒られていた。


 昨日の夜は、頭痛が激しくて、痛みでなかなか眠りにつけなくて、いくら考えてもモヤモヤするだけで、時計の秒針の音が頭の中に鳴り響いていた。


 オレが過去に戻った影響で、過去が変わったのか?

 そういうのって、普通は未来が変わるもんなんじゃないのか?

 なんで、過去が変わるんだ?

 過去を変えられることなら出来るよな。でも、あらかじめ変わってることなんて、あり得るのか?


 どうなってるんだ。

 クソッ……。頭が……パンクしそうだ。


 そうして、いつの間にか窓の外は明るくなっていた。


─────────────


 学校に着いたオレは、授業を適当に聞き流しながら、自分の考えをまとめていた。


 まず、現状を把握しておこう。

 中学生の頃からしたバイトで、携帯電話は中一の頃に買った。

 パソコンも中三の時までには買ってる。

 まあ、置き場がないからノーパソにせざるおえなかったけど。


 SNSもスマホを買って、すぐに始め出した。

 順調に作家志望のサークルに入って、フォロワーも千人は超えた。


 中学時代の残りは全て執筆に当てた。

 寝る間も惜しんで何作品か仕上げた。


 ここまでは、完璧だった。


 そう、ここまでは。


 高校の担任だった……。

 オレの元恋人の木陰(こかげ)雛子(ひなこ)がいない……?


 なんでだ?

 高校は確かに合ってる。

 どの先生に聞いても、そんな人物はいなかったって言ってたし。


 意味がわからない。

 どこにいるんだよ。雛。


 今更、高校を中退なんて出来ないし。

 なるべく目立たずに、三年間を過ごすしかないな。

 とにかく、雛のことはなんとかするとして、いまは出来ることをやろう。


 まずは、三年後……高校卒業と同時に持込み用の小説原稿を書き溜める。

 そして、ネットでの公募用に向けた新作も、ジャンル別に書き上げておくしかないな。


 SNSは、いい調子だし。

 仲のいい友達も何人か出来た。


 確か、『ジェイド』が「オフ会とかしようよ!」とか話に出していたけど……正直会う気はないんだよなぁ。

 まあ、その話もまたしなきゃいけないけど……もしもの時は、服も買わなきゃいけないか。

 買いたいものはたくさんあるけど、最低限の身だしなみは、今回はしときたいし。


 まあ、同棲するまでは元々ファッションとかは、そこそこにちゃんと気にしてたから。

 それなりに出来ると思う。

 まあ、オレの好きな香水とかシャンプーとか、今の時代に売ってるのかは気になるけど。

 

 ほんと、同棲して数年後とかは……ファッションとか皆無だったもんなぁ。

 雛とのデートもあまり出来なかったっけ。



 申し訳ないことばかりしてきたんだなぁ…。


「会いたいよ。ヒナ。」


「ヒナってだれよ?」


 その時、隣の席から声が聞こえた。


 え?やばっ!?声に出してたのか…!



「あ〜〜ヒナ、ヒナ……鳥のヒナだよっ! あははっ!」

「鳥のヒナ〜? なんでいま会いたいんだよ。 プフッ。」


 隣の席で笑うコイツは、高校の同級生。

 名前は「花屋手(かしやで)(ゆう)

 同じ十五歳だけど、誕生日は早生まれでオレより先に歳上になる。


 前の人生でもクラスにいたんだけど、そこまで親しい仲じゃ無かった。

 まあ、初日から悪目立ちしたオレのことをからかってくる暇人だよ。


「るっせ。 スズメのヒナが落ちてたんだよ。」

「登校前にな。 そんで動物病院に連れてったら、そこの院長が保護してくれるっつーから、思い出してただけだっつーの。」


 嘘ではない。

 実際に数日前にスズメのヒナを拾ったんだ。


─────────────[回想]


「あ〜、これはマヒワだね〜。」

「マヒワ?」


「そうだよ〜」

「スズメ科の仲間で、鶸色(ひわいろ)の綺麗な黄色い色をした鳥だね〜。」


「コイツが……。」


 と、その時に病院の院長が教えてくれた。


 帰ってから調べてみたけど、(ひわ)って鳥とおんなじだった。

 普通なら聞いたこともない名前の鳥だろう。


 でも、この鶸って鳥の名前を……オレは知っていた。


 まあ、鳥の種類なんて何でもいんだけどな。

 スズメは可愛くて好きだったから、大きさが似てるアイツのことを、ほっとけなかっただけだし。


 SNS『ツブヤキっター!!』の名前も、オレは「スズメ」にしてるくらいだからな。

 まあ、そのせいで、よく「スズメ好きなんですかー?」って聞かれるし。

 男のくせに少し恥ずかしいけど、まあ、別に良いだろ。

 可愛いもんは可愛いんだから。


─────────────


「へぇ〜〜、お前がねぇ〜。 プフッ。」

「似っ合わねぇ〜!! ブハハッ!!」


「ッ!! 勝手に言ってろ!」



「おいっ!! オマエらー! 授業中なのにうるさいぞ!!」


 ほらみろ。怒られた。


「べ〜〜っ!!」


 コイツ……。いつかぶん殴ってやる!

 なに舌出してやがんだ。ムカつくぜ。


 まあ、悪いやつじゃなさそうだし……花屋手(かしやで)との関係は、おいおい仲良くなればいいか。


 とりあえず、今後のやることは決まった。

 (ヒナ)を探しつつ、将来に向けての小説を完成させる!!


 今度は失敗なんかしねぇ!

 人生一度きりなんてよく言ったもんだよ。ほんと。


 でも、オレはやり直しが出来てる。

 これは、アドバンテージだッ!!


 このチャンスをモノにしないことは、もったいねぇ!!


 必ず……見つけ出して見せるからな。雛ッ!!



 そうして、オレの高校生活は始まった。



 それと同時に……この時のオレは、自分の違和感にまだ気づいていなかった。


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