第四話「思いがけない結果と目標」
[現在]
三年後、オレは中学を卒業し、『私立 鬼灯学園高等学校』に入学していた。
ここは、前回もオレが通っていた高校だ。
もちろん入試は問題なかった!
過去にやったからな!ある程度は予測できる!
まあ、いい思い出……だけでは無かった場所だけど。
ココを選んだ理由はある。
木陰雛子。当時三十一歳。
オレの担任教師だった人だ。
そして、オレの前の人生の恋人だ。
彼女との出会いはこの場所だったから、また会えると思ったんだ。
世間からしたら、禁断の恋とかはしゃぎ立てるだろうけど、そんなもん関係ない。
好きになってしまったものは、もうどうしようもできないもんなんだよ。
恋にルールなんてない。
自制心は確かに持たなきゃいけないけど……好きな気持ちを伝えないまま終わることなんて出来なかった。
何よりも……オレのことを救ってくれた、恩人だったから。
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「えっとー、クラスは同じ二組だ! よしっ!!」
掲示板でクラスを確認したオレは教室に向かった。
クラスの席に着くと、そこには見慣れた顔がズラリと並んでいた。
懐かしむ顔もあれば、嫌な思い出も蘇ってくる顔ぶれもあった。
でも、オレにとっては、そんなことどうでもよかった。
クラスが二組なら担任は雛だ!
やった!また会えるんだ!
そう、思っていた。
だが、教室に入ってきた先生は、別人だった。
「……え?」
なんで?過去に戻ったなら、担任は雛のハズじゃ?
オレが戻ったことで過去が変わった?
ウソだろ……。
「なら、ヒナはどこに……。」
オレは走り出していた。
「……ハァッ……ハァ、ハァ……。」
他のクラスの扉を開け、職員室にまで駆け込んだ。
しかし、雛はどこにもいなかった。
高校入学初日に、とんでもない奇行に走ったオレの噂は、瞬く間に全校生徒に知れ渡った。
でも、そんなことはどうでもよかった。
それで孤立しようが、雛に会えればそれで良かったんだよ。
なのに……。
「なんでだよッ!! なんでヒナがいないんだよッ──!!」
その日は学校を飛び出し、叫びながら走り回った。
登校初日から授業をバックれたオレは、次の日めちゃくちゃ怒られた。
このことは、その日のうちに母親にも連絡がいき、オレは怒られていた。
昨日の夜は、頭痛が激しくて、痛みでなかなか眠りにつけなくて、いくら考えてもモヤモヤするだけで、時計の秒針の音が頭の中に鳴り響いていた。
オレが過去に戻った影響で、過去が変わったのか?
そういうのって、普通は未来が変わるもんなんじゃないのか?
なんで、過去が変わるんだ?
過去を変えられることなら出来るよな。でも、あらかじめ変わってることなんて、あり得るのか?
どうなってるんだ。
クソッ……。頭が……パンクしそうだ。
そうして、いつの間にか窓の外は明るくなっていた。
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学校に着いたオレは、授業を適当に聞き流しながら、自分の考えをまとめていた。
まず、現状を把握しておこう。
中学生の頃からしたバイトで、携帯電話は中一の頃に買った。
パソコンも中三の時までには買ってる。
まあ、置き場がないからノーパソにせざるおえなかったけど。
SNSもスマホを買って、すぐに始め出した。
順調に作家志望のサークルに入って、フォロワーも千人は超えた。
中学時代の残りは全て執筆に当てた。
寝る間も惜しんで何作品か仕上げた。
ここまでは、完璧だった。
そう、ここまでは。
高校の担任だった……。
オレの元恋人の木陰雛子がいない……?
なんでだ?
高校は確かに合ってる。
どの先生に聞いても、そんな人物はいなかったって言ってたし。
意味がわからない。
どこにいるんだよ。雛。
今更、高校を中退なんて出来ないし。
なるべく目立たずに、三年間を過ごすしかないな。
とにかく、雛のことはなんとかするとして、いまは出来ることをやろう。
まずは、三年後……高校卒業と同時に持込み用の小説原稿を書き溜める。
そして、ネットでの公募用に向けた新作も、ジャンル別に書き上げておくしかないな。
SNSは、いい調子だし。
仲のいい友達も何人か出来た。
確か、『ジェイド』が「オフ会とかしようよ!」とか話に出していたけど……正直会う気はないんだよなぁ。
まあ、その話もまたしなきゃいけないけど……もしもの時は、服も買わなきゃいけないか。
買いたいものはたくさんあるけど、最低限の身だしなみは、今回はしときたいし。
まあ、同棲するまでは元々ファッションとかは、そこそこにちゃんと気にしてたから。
それなりに出来ると思う。
まあ、オレの好きな香水とかシャンプーとか、今の時代に売ってるのかは気になるけど。
ほんと、同棲して数年後とかは……ファッションとか皆無だったもんなぁ。
雛とのデートもあまり出来なかったっけ。
申し訳ないことばかりしてきたんだなぁ…。
「会いたいよ。ヒナ。」
「ヒナってだれよ?」
その時、隣の席から声が聞こえた。
え?やばっ!?声に出してたのか…!
「あ〜〜ヒナ、ヒナ……鳥のヒナだよっ! あははっ!」
「鳥のヒナ〜? なんでいま会いたいんだよ。 プフッ。」
隣の席で笑うコイツは、高校の同級生。
名前は「花屋手優」
同じ十五歳だけど、誕生日は早生まれでオレより先に歳上になる。
前の人生でもクラスにいたんだけど、そこまで親しい仲じゃ無かった。
まあ、初日から悪目立ちしたオレのことをからかってくる暇人だよ。
「るっせ。 スズメのヒナが落ちてたんだよ。」
「登校前にな。 そんで動物病院に連れてったら、そこの院長が保護してくれるっつーから、思い出してただけだっつーの。」
嘘ではない。
実際に数日前にスズメのヒナを拾ったんだ。
─────────────[回想]
「あ〜、これはマヒワだね〜。」
「マヒワ?」
「そうだよ〜」
「スズメ科の仲間で、鶸色の綺麗な黄色い色をした鳥だね〜。」
「コイツが……。」
と、その時に病院の院長が教えてくれた。
帰ってから調べてみたけど、鶸って鳥とおんなじだった。
普通なら聞いたこともない名前の鳥だろう。
でも、この鶸って鳥の名前を……オレは知っていた。
まあ、鳥の種類なんて何でもいんだけどな。
スズメは可愛くて好きだったから、大きさが似てるアイツのことを、ほっとけなかっただけだし。
SNS『ツブヤキっター!!』の名前も、オレは「スズメ」にしてるくらいだからな。
まあ、そのせいで、よく「スズメ好きなんですかー?」って聞かれるし。
男のくせに少し恥ずかしいけど、まあ、別に良いだろ。
可愛いもんは可愛いんだから。
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「へぇ〜〜、お前がねぇ〜。 プフッ。」
「似っ合わねぇ〜!! ブハハッ!!」
「ッ!! 勝手に言ってろ!」
「おいっ!! オマエらー! 授業中なのにうるさいぞ!!」
ほらみろ。怒られた。
「べ〜〜っ!!」
コイツ……。いつかぶん殴ってやる!
なに舌出してやがんだ。ムカつくぜ。
まあ、悪いやつじゃなさそうだし……花屋手との関係は、おいおい仲良くなればいいか。
とりあえず、今後のやることは決まった。
雛を探しつつ、将来に向けての小説を完成させる!!
今度は失敗なんかしねぇ!
人生一度きりなんてよく言ったもんだよ。ほんと。
でも、オレはやり直しが出来てる。
これは、アドバンテージだッ!!
このチャンスをモノにしないことは、もったいねぇ!!
必ず……見つけ出して見せるからな。雛ッ!!
そうして、オレの高校生活は始まった。
それと同時に……この時のオレは、自分の違和感にまだ気づいていなかった。




