第十話「太宰治賞」
「えっ?」
『今月の二十八日、お会いできませんか?』
「マジか」
あまりの驚きに、オレは頭がフリーズしていた。
い、いや、まぁ……もう三年も話してるしな。
そんなことを思ったりもするもんなのか?
オレはオフ会とかはしてこなかったタイプの人間だし、ネットの人と会いたいなんて思ったこともなかったからな〜。
でも、なんで二十八日?
ん?待てよ、もしかして……。
オレはスマホのカレンダーを覗き込んだ。
小説披露会か!!
新人作家だが、賞を受賞した作家による。いわば、宣伝みたいなものだ。
開催地は東京都三鷹市……『太宰治賞』か。
確か、受賞者の名前は……『巫卜占 行方』だっけか?
変なペンネームだなぁ。と思ったけど、印象には残った。
作品は『明晰夢の列車旅行』だったかな。
まあ、良くも悪くも無難な作品だ。
異世界で、列車の旅をしながらいろんな場所を訪れてトラブルを解決する主人公だったが、実は全ての物語は夢オチだった。
という物語だ。
まあ、夢オチとはありきたりだからオレは作品として書こうとは思わないけどな。
ヒワさんからの日程から推測するに、その巫卜占の小説披露会に一緒に行きたいってことらしいな。
まあ、その日はちょうど暇だし……せっかく三年も話してきた友人だ。
男同士、酒でも飲みながら……あ、向こうの年齢は知らないけど、オレはまだ未成年だった……。
てか、向こうもオレの年齢は知らないんだっけ?
「くぅ〜〜……タイムトラベル前なら酒を飲めたのに…!!」
ガックリしながら肩を落とすオレは、スマホを片手に、『いいけど、何時からどこで待ち合わせにするんだー? ヒワさんに合わせるけど』とヒワさんに返信した。
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正直。人見知りなオレにとっては、ハードルが高い。
文面ならスラスラと言葉が出るけど、それは、考える時間があるからだ。
そう。余裕が生まれるし、焦らなくて良い。
でも、リアルは違う。
どうしても間を空けないように、何か会話を繋がなきゃ。話題を振らなきゃ。と焦ってしまい、そのことが頭の中で踊り出している状況だ。
まあ、踊ってるのはとち狂った素人の踊りだけどな。
脳内時間でそうこうしてる内に、実際には数秒の無言タイムが訪れているわけだ。
これには、流石に焦り散らかしてしまう。
相手が楽しめてないんじゃないか?
オレといて良かったのか?
退屈させてないか?
とか、余計に考えてしまうんだ。
まあ、対処法は知ってるんだが……簡単にできれば苦労はしないっつー話だよな。
まあ、今回は男同士だし、その分気楽に過ごせるとは思う。
なんにせよ、ヒワさんに会うまでにあと二週間以上はあるんだ。
それまでに新作ミステリを書いて、ヒワさんに見せてやりたいな!
よし!途中だったけど、もうおおまかな見た目は決まってるんだ!
このままパートナー役の名前も決めるぜッ!!




