リーダー、無双します 3
なるほどこれが救援隊の鮮やかな救出譚の秘密なのか。イシュアは息をのんだ。
いくら魔物をものともしない勇者であっても、依頼者の命があるうちに駆けつけられなければ意味がない。
深い階層へ、誰よりも速く降りる秘策を持っているからこそ成り立っている業なのだ。
シルヴァが無造作に転移門へと姿を消す。ギヨームもそれに続いた。
イシュアもおそるおそる片足を白い壁にかざそうとして、ふと後ろを見る。
少し離れたところにいたアリエッタが、珍しく淀んだ声でぼそりとつぶやいた。
「やっぱりこのルート、気が進まないわ……」
するといきなり、壁からシルヴァがぬっと頭だけ出してきた。
「うわ!」
「どうしたアリエッタ、置いてくぞ~」
愛らしい口元を思い切り歪めて、アリエッタもしぶしぶ門へと足を進めた。
門の向こう側に立ったイシュアは、その場所の空気の重さに思わず膝が折れそうになった。
魔法のたしなみのないイシュアでも、とんでもなく濃密な『要素』が空間に満ちているのが判る。
ギヨームは背負った鞄から魔法道具を取り出し、中空に浮かせた。
明るい光源が照らし出したのは、岩を掘り抜いて造った坑道のような空間だった。
上方は暗くはっきりとは見えないが、人の背の数倍の高さはあるようだ。
シルヴァたちの降り立った場所は開けており、そこから数本の横道が伸びていた。
「ここは……第二階層にもこんな場所があったのか……?」
一気に緊迫した表情のイシュアに、シルヴァが相変わらずのんきな口調で応えた。
「いや、ここ、第十四階層」
「はあああっっっ?」
声にならない声で叫ぶ。
ギヨームが苦笑いして、再び口に指を当ててみせた。
なにも魔物に大声で自分たちの存在を教えてやらなくてもいい。
「近道って言ったろ?」
何を驚くと言わんばかりに、シルヴァがきょとんとした顔になる。
イシュアは必死に声を抑えて、シルヴァを問い詰めた。
「言ったが……!
……第十四階層といえば、ルーファス兄の命題の魔物がいる場所ではないか!」
王子直属の精鋭の隊が全精力を上げ、時間を掛けて、なんとかたどり着けるかと言われた場所だったはずだ。
それが迷宮に降りて数分、汗もかかずに到着してよいものか。
そして何より。
「……凶暴な魔物がいるのだろう?」
緊張で肌が粟立つ。
あからさまに肩に力を入れすぎたイシュアの背を軽く叩き、シルヴァは明るく笑い飛ばしてやった。
「大丈夫、心配すんなって。
このあたりはたま~に大鎧百足が大発生したりするけど、その時以外はむしろ安全地帯なんだ。
なに、大発生に当たるなんて万にひとつの確率だ。
滅多なことじゃ……」
シルヴァの台詞の影で、ぞわぞわと何かが擦れ合う音が聞こえてきた。。
音はみるみるうちに大きくなり、激しく金属を打ち鳴らすような音が坑道に反響する。
「……どうやら万に一つの日に当たったようですな」




