リーダー、無双します 2
「契約は『攻略目標が達成され、無事地上に戻るまで。または契約に基づき、わたしたちが救助するまで。このいずれか』なんですがねえ」
「え? 合ってるじゃん。
『攻略目標が達成され無事地上に戻るまで、契約に基づきわたしたちが救助する』
だろ?」
「そんな真顔で無理筋な解釈をされても」
「さあ入り口についたぞ~、いざ攻略!」
うきうきと先頭に躍り出たシルヴァが、転移門へと駆け込もうとする。
アリエッタはその襟首を引っ掴んで、我先にと前へ出る。
「そこ! 順番を守りなさい!
子どもでもちゃんと列に並ぶわよ!」
「え~? 俺が先に着いたじゃん!」
「リーダーが先なの!」
まるで幼児のケンカだ。
「……その、今更なのだが……大丈夫なのか?」
イシュアのツッコミに、ギヨームはにっこりと微笑んでみせた。
「ご自分でなさった契約です。
まあ、諦めてお付き合いください。
殿下の選択を後悔させないことだけは、保証いたします」
転移門から降りた一行は、大広間から廊下へ出て、左へと折れた。
第一階層の廊下は相変わらず、まるで街の普通の通りのように、ひっきりなしに冒険者たちが行き交っている。
先頭を行くシルヴァはちらちらと前後の様子をうかがいながら、歩く速度を緩めていた。
すぐ後方、大広間の出口から廊下へと現れるものが途切れ、前と、そして反対方向へと向かうパーティーも後ろを振り返ることがなくなった瞬間を逃さず、シルヴァは素早く扉に手をかけ小部屋の中に身を滑らせた。
「え?」
「王子様、早く!」
アリエッタに腕を取られ、イシュアも続く。
しんがりのギヨームが廊下の前後に鋭い視線を投げると、そっと扉を閉めた。
何もない殺風景な小部屋だ。
魔物がいるようには見えないが、他にも何かがあるようにも思えない。
すたすたと壁の一角に歩み寄ると、シルヴァがついと左手をかざした。
すると側面の漆喰の白い壁に、見覚えのある魔力の揺らぎが浮かび上がった。
「これは……まさか転移門なのか?」
驚きのあまり声を上げるイシュアへ、三人一斉に「しいっ」と指を立てる。
イシュアは慌てて自分の口を両手で塞いだ。
木の扉一枚隔ててすぐ外の廊下を、談笑しながら冒険者が歩いて行った。
やや声を抑えて、ギヨームが応える。
「おっしゃる通り、下の階層へと降りられる転移門のひとつです」
「どういうことだ?
転移門とは、大回廊の決まった位置にあるのではないのか」
イシュアは興奮でつい大きくなりそうな声をこらえた。
シルヴァがにっと笑って、小声で解説を加える。
「こっちは裏ルート。近道だ。
浅い階層じゃ大回廊が一番安全なルートなんだが、なにせ次の階に降りられる転移門までが遠いからな。
グラータで長くやってる冒険者ならたいてい、こういう近道をいくつも知ってる。
まあ、魔導士が起動しないと使えないものが多いし、大回廊の転移門と同じでほとんどの転移門が一方通行。
それほど使い勝手は良くないが、上手く組み合わせれば最速で深部まで降りられる」
「ではあのとき、あんなに早くぼくを助けにきてくれたのは……」
「そういうこと。
隠れ転移門の情報は、とびきり高値のお宝。
王子もここだけの話にしてくれよ?
商売あがったりになっちまう」
シルヴァは悪戯っぽく片目を閉じてみせた。




