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正しい最強の使い方  作者: バルス
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プロローグ

初投稿です。

誤字脱字、文法ミスが多々ありますので指摘よろしくお願いいたします!


   ~プロローグ~

 小学校生活も中盤に差し掛かり、水泳の授業の際の女子の動向が気になり始めた思春期真っ盛りの俺。

「父さん!俺、女の子にモテたい!」

―それは男ならば皆一度は思うこと。

可愛い女の子にカッコイイとこ見せて『きゃ~!カッコイイ♪』と言われたいと思うことの何がいけない?

体育のドッチボールの授業で好きな子を庇って、

『大丈夫かい?○○ちゃん?』

『う、うん大丈夫…。…ポッ♡』

なんてシチュエーションに憧れて何が悪い?

…別段おかしいことではない。

―ないのだが…

「モテたい?それなら殺し屋になるしかないな!」

…小学校4年生になったばかりの俺は、この時、致命的な間違いを犯してしまった。

―それは、そんな思春期な悩みを、ガチの殺し屋の父に相談してしまったことだ。

「殺し、屋?」

殺し屋と言えば、良く金曜日や日曜日の夜にテレビの中でトンパチやって、たまに外国人の綺麗なお姉さんとHなことをしているアレのこと、である。

「ああ!そうさ!殺し屋は強いんだぞ!だからモテる!俺も殺し屋やってたお陰でお母さんと出会えたんだぞ~♪なあ~、母さん?」

「もう♪お父さんったら~、正樹の前ですよ?自嘲してください?」

「照れるなよ。母さん!」

「もう、子どもの前でこんなこと、ダメですよ?」

実の息子の前で乳繰り合う両親の姿を見ていた当時の俺は、そういうものか、と納得してしまったのだ…。

「…うん!分かった!俺、父さんみたいな殺し屋になるよ!」

「そうか!聞いたか母さん!正樹が俺たちのお手伝いをしてくれるってよ!」

「あら~?これは心強いですね~。人手も足りなくなってきたところですし…助かるわ~」

「そうと決まったら早速教育を始めないとな!」

「でもお父さん?この子、まだ小学生ですよ?」

「大丈夫さ!伝説の殺し屋様が直々に教えるんだ!何の心配もない!」

「お父さんがそう言うなら大丈夫ね!」

「よーし!正樹!お前を一人前の殺し屋にしてやるぞ!」

俺は何の疑いも持たずに

「うん!お父さん!頑張るよ!」

笑顔の両親に元気にそう答えてしまった…。

…こうして俺は、当時『伝説の殺し屋』として裏の世界を騒がせていた父から、殺し屋の英才教育を施されることになった。

―英才教育が始まって初めて迎えた夏の日に

「正樹!お前は父さんそっくりでホントに才能がないな!」

「…え?」

父さんからにこやかにそんなことを言われた…。

熱さでだださえ気が狂いそうなのに、それに加えてそんなことを言われたら頭がおかしくなってまう。

「そ、そんなぁ…」

父さんのキツイ練習に耐えて、一息吐いたらこの仕打ち…。

―もう、やめようかな?

そう思ったのだが…

「でも、そんなことが言い訳になると思うなよ?」

炎天下の中、蝉がミンミンとしてる中でもはっきりと聞こえる野太い声。

「で、でも!才能がないなら止めた方がいいんじゃ?」

…てっきり、俺は止めさせられると思っていた。

才能が無いなら諦める、この世にありふれた誰もが行き当たるベルリンの壁。

怖そうと思えば壊せる、されど大多数の人がただ見上げるだけのその壁の前に立たされた俺は、ただ見上げる側に回ろうとていた。

しかし、

「お前は、女の子にモテたいんだろ?」

壊す側の父の勧誘により、俺は国境を超えることになる…。

「…うん。」

「それは、才能がない程度で諦められることなのか!」

「…諦めたくない!」

こうして、一度は元の真っ当な道に戻りかけた俺は、再びアブノマールな革命派の道へと舞い戻る。

父さんの勧誘が一番の原因であったことは間違いない。

だが、それ以外にも俺を革命へと誘う要因は存在していた。

…当時の俺にはもう後に引けない事情があったのだ。

放課後、小学4年生なら部活なり、友達と遊ぶなりするのが不変の真理。

少なくとも、それが人生の楽しみである年頃であるのは間違いない。

俺のクラスメイト達もその例に漏れず、純朴な小学4年生ライフを満喫していた。

「正樹!放課後第五公園でサッカーしようぜ!」

あるクラスメイトは俺を元の真っ当な道へのチケットを差し出してくれた。

―俺はこの時、そのチケットを受け取るべきだったのに…

「ごめん!家の用事があるんだ。」

当時の俺は、受け取るどころか完膚なきまでに破り捨てたのだ…。

「そっか~、なら仕方ないな。」

 こんなことを繰り返していれば必然的に孤立していく…

―こうして俺は友達0人を貫き、『ぼっち』そのものに成り果てていた…。

だから、俺はもう頑張るしかなかったのだ。

結果、俺はそのまま友人らしい友人を一人も作ること無く小学校を終えることになる。

「…正樹、諦めるか?」

練習中、俺が地にひれ伏す度に父さんはこの問いを浴びせてきた。

―友達0人など毛ほども気にしない当時の正樹少年は、決め顔でそれにこう答えるのだ…。

「ここまでやって、諦められるわけないだろ!」

…いや、そこ諦めるよ?

現実見ようぜ俺?しっかり友達作って人間関係構築する方が、将来モテることに繋がるんですよ?

―なんて、今更言ってももう遅いは分かってるんだが。

「それでこそ俺の息子だ!良し!弾丸避け千本、行くぞ!」

「うん!」

「頑張って~♪」

母さんと父さんの笑顔に包まれつつ、

―『モテる』、それだけのために俺は厳しい修行に身を投じる。


そんな生活を数年間続け…

「正樹!赤外線センサーに気を付けろ!」

「正樹!足元は地雷だらけだから気を付けろ!」

「正樹!あっちの基地の制圧は任せた!」

 中学校を終える頃までには、こうして父さんの仕事の手伝いに連れて行かれるようになった。

―そして迎えた中学の卒業式前日、

「フハハ!すがすがしいまでに完敗だよ!正樹!流石、俺の息子!ついに俺を超えるか!実践経験が不足気味なのが気になるが…能力面では完全に俺を超えているぞ!お前もこれで一人前の殺し屋だ!」

―俺は伝説の殺し屋を負かすほどに成長を遂げてしまった。

 実際に人を殺す仕事の手伝いはさせられなかったが、俺はこうして伝説の殺し屋を超えるまでに成長した。体中傷だらけになってしまって、体育の授業の度に周囲に気味悪がられ、

「…お前、家庭で何か問題を抱えてるんじゃないか?」

と担任の教師に呼び出されたりもした…。

それが以下に以上の事態かなどには、当時の俺は全く気付かない。

―なぜなら

「俺にモテ期がぁぁぁ来るぞぉぉぉぉぉ!」

…なんて舞い上がっていたからだ。

 これで高校生活はきっと輝かしいものになる。今まで、訓練に捧げてきた青春を取り戻してやる!

そうやって、これからの青春に胸をたぎらせていた俺は…

「…なんでアイツはあんなにモテるんだ?」

卒業式を終えた直後に、

―致命的な失敗をする。

…俺は不服だったのだ。彼がモテるのが…。

サッカー部エース、イケメン、俺の彼に対する印象はこのくらいだ。

「わ、私と付き合って下さい!」

頬を赤らめて彼に告白をする、ちょっと良いな?と思っていた気になるあの子。

「…ゴメンよ。」

彼の返事を聞いて駆け出す気になるあの子…。

「ほら!次はアンタよ!」

「で、でも~」

「伝えなきゃ絶対後悔するよ!」

そしてまた女の子が一人、彼の元に向かう。

「…アイツ、俺より強いのか?」

―当時の俺は本気で強い=モテる、だと思っていたのだ。

そんな俺は、彼へ告白する女の子が途絶えたのを見計らって、彼に話しかける。

「おい?」

「ん?え~と、君は確か…?」

彼が俺を知らないのも無理はない。なぜなら、俺は『ぼっち』だから…。

「…B組の鳴神だ。」

「ごめん。同じ学校にいるのに…。」

申し訳なさそうに彼は言う。

その点については彼には何の落ち度もないので俺はさほど気にせず答えた。

「それは気にしてない」

「そう言ってもらえると助かる。」

俺の返答に苦笑いを浮かべるイケメン。

…普通に良いヤツっぽい。

―しかし、そんなことは当時の俺にはどうでも良かった。

「…お前、強いのか?」

そう…。俺が知りたかったのはそれだけ。

「ん?」

「お前は強いのか?」

困ったような顔を向けられたが、それでも彼は応対してくれた。

「え~と、それは喧嘩が、ってことかい?」

「そうだな。」

「殴り合いは趣味じゃないけど…したことが無い訳じゃないかな?一応負けたことはないよ」

恥ずかしそうに言う。

「それじゃあ、俺と勝負してくれないか?」

「…それじゃあ、の意味が分からないんだが?」

今度こそ彼の俺を見る目が変わる。面倒な奴に捕まった、そう彼の表情が俺に訴えてきた。

…しかし、俺は引かない。

「頼むよ」

「君と殴り合いをする意味がない」

「お前がモテてる理由が知りたいんだ」

「つまり、僕が女の子に告白されるのが気に食わない、と?」

「そういうことだな」

溜め息を吐き、彼は続ける。

「…いくら言葉で言っても君みたいな輩には通じないだろうからね。…仕方ない。場所を変えようか?」

そう言って彼は俺に背を向け歩き出す。

そうして、彼に案内されたのは体育館裏。

「…実はさ、君みたいな奴は初めてじゃないんだ」

そう言って、彼は体育館を背にニヒルな笑みを俺に向けてくる。

「そうなのか?」

「…ああ。そうなんだ。だから、さっさと終わらせよう。ああ、言い忘れてたけど実は僕、サッカーだけじゃなくて空手もやってるんだ」

「そうか…。それじゃあ遠慮なく!」

彼は、自分の空手やってる発言になんのリアクションも示さない俺を一瞬訝しげに見たが、接近する俺に集中し、睨みを効かせてくる。そして…

「…あぁ?」

「…あれ?」

…事故が、起こる。

あまりのことに、互いに現状を把握できていなかった…。

やがて、互いに視界に移る非現実的な光景を認識し始める。

先に騒ぎ出したのは被害者の方…。

「な、なんだよ?これは?」

それに答えるのは加害者…。

「お、お前強いんじゃ」

「痛てぇぇぇぇぇぇ!」

彼の絶叫が放課後の校舎に響き渡る。

ひとしきり叫ぶと、彼は意識を失なってしまった…。

「そ、そんな、な、んで?」

動かなくなった彼の体を抱えながら俺は呟いた。

 ―俺の放った貫き手は、見事に彼の胸に突き刺さっていた。

彼は俺の貫き手を捌こうと腕を伸ばしてきたが、遅すぎた。

…その結果が、これ。

俺は、彼の腹から止めどなく流れる赤黒い液体で満たされた水たまりを見ながら一人狼狽した。

「ど、うし、て」

―そんな時、背後から野太い声。

「…正樹、約束を破っちゃならないな」

「父、さん?」

「…あれほど本気になっちゃダメだ、って言っただろーが?」

…そうだ、俺は父さんとそう約束していた。

絶対に学校で本気を出してはいけない、ずっとそう言われきた。

だから、俺は今日までその言いつけをきちんと守ってきた。

鈍足なクラスメイトに合わせながらの50メートル走。

蟻のような腕力に合わせた柔道の授業。

ジャンプすれば易々と手が届くリングを見上げるだけのバスケットボール。

…どれも相当退屈だった。

しかし、俺はその退屈にずっと耐えてきた。

なのに、どうしてこのタイミングで我慢できなかったのか?

―父さんを超えたことで、浮かれていたのだ。

そんな俺の反省を促す野太い声は今も脳裏に焼き付いている。

「いいか?正樹。お前は全身が凶器だ。人を殺すなんて朝飯前な体になっちまってるんだ」

「う、え?」

俺は血塗れになった自分の手を呆然と見つめることしかできない。

父さんはそんな俺を一瞥すると、俺から彼を受け取り告げる。

「…とりあえず、コイツを母さんの所まで運ぶぞ。手伝え」

「俺は、ただ何でコイツがモテる、のか、気になって、それで強さを」

「正樹?腕っぷしの強さだけが強さじゃない」

…俺は何も答えられなかった。放心状態で彼に応急処置を施す親父を見つめる。

「…良し、こんなもんかな。ほら、運ぶぞ」

「は、い」

「全く、母さんが居なかったらコイツ、死んでたぞ?凄腕のお医者さんが母親だったことに感謝しろよ?」

「…ごめん、なさい。」

「…もう少し、この辺りの事をきちんと説明しておくべきだったな。俺も悪かった。…すまん」

それきり親子に会話は無く、そのまま彼を連れて自宅へ。

家に居た母さんは、一瞬不思議そうな顔で俺達を見たものの、父さんが抱いてるものを見て、慌てることも無く容体を確認。

父さんに家の処置室まで彼を運ばせ、手術を始めた。

…こうして、彼は母さんの手で難なく救われた。

母さんはベッドで眠る見知らぬ少年に目を向けながら、事も無げ気に父さんに問う。

「この子の記憶は消してしまった方がいいかしらね?お父さん?」

因みに、どんな治療を施したのか、彼の傷はどこにあったかも分からない位完璧に消えていた。

「ああ。この子のためにもそうした方がいいな」

ベッドで眠る彼を見ながら母さんの問いに答える父さん。

母さんは医者であると同時に優秀な科学者でもあったらしい。

…その手の危ない薬品も母さんの十八番だ。

「それじゃあ、母さんはコイツの記憶操作を頼む。俺は正樹と一緒に目撃者がいないかどうか確認してくる。行くぞ~、正樹~」

「…目撃者はいないと思う。一応周りの気配は探ってたから」

「それでも念のため、だよ」

そうして俺たちは二人で家を出る。

少しだけ心を落ち着かせることに成功していた俺は、夕闇に暮れる街並を見つめながら隣を歩く父さんに問う

「父さん、俺は、人殺しの道具、なのか?」

「…そうだな。お前は人殺しの道具だ」

「父さんは俺を人殺しの道具にしたかったのか?」

「そうじゃない。…俺はお前に大切のものを守る力を与えたかっただけだ」

「それが、これ?」

「…すまんな。俺にはこんなことしかお前にしてやれることがなかったんだ」

「…俺は、モテたらそれで良かったんだ。こんな力、俺には…」

「…そうか、すまん」

ただ謝る父親に、俺はそれ以上のことを聞けなかった…。

 父さんは俺の望みを父さんなりのやり方で叶えようとしてくれただけ。

 そんな父親を責めるのはお門違いも良い所だ。

 だから、俺はそれきり口を閉じる。

―俺は大きな力を持つにはあまりに幼く、愚かだったのだ。

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