11 第2の課題【俺と一人ずつデート】
◆◇◆
6月1日(月)夜
リビング。
パジャマでソファに座った俺と女の子5人の前に、グレーのスーツ姿の氷室さんが立つ。
「みなさま、引っ越しして3週間。新生活に慣れたことと思います。そこで司会進行の私から、課題を出させていただきます」
氷室さんの言葉に、みんな緊張する。
課題って、女の子が俺をどう喜ばせるかってことだ。俺の方も評価をしなくちゃいけなくて大変なんだよね。
先日のコスプレ大会は俺の発案。変な課題を出すと、俺は女の子たちに白い目で見られてしまう。課題を考えるのって難しいから俺が決めるより、氷室さんが決めてくれた方が楽ではある。
「課題は、幸斗様とデートです!」
氷室さんが、ビシッと言い聞かせる。
「デートって……?」
俺は思わず聞き返してしまう。なんとなくわかるんだが、俺はデートをやったことないから。
「もちろん、女の子と幸斗様が外出してイチャイチャラブラブすることですよ。これから毎週の土曜日か日曜日に1人ずつ、幸斗様とデートに出掛けていただきます」
「いいねー たのしそーじゃん」
桃香は早速乗り気になる。
「ふふ、でも大事なのは幸斗様を楽しませることですよ。女の子の方ばっかり楽しんで、幸斗さんが楽しくなければダメです」
「え? 一緒に楽しめばいーじゃん」
「そう。一緒に楽しめることをするのが最善手でしょう。えてしてデートというものは、男の方が女の機嫌を取らなくちゃいけなくて、気疲れしちゃうんです」
氷室さんが、俺とデートという課題のポイントを解説する。
「デートって疲れんの!?」
「男の方はとても疲れると思いますよ。男にとってデートの目的は、女とエッチすることですからね。男が女の機嫌をなんとか取ろうとするのは当然。女は文句ばかり言う生き物ですから、世の男子は涙ぐましい努力をしているわけです」
氷室さんにとっては男の求愛活動は、昆虫の求愛活動と同レベルっぽい。オスのセミが鳴いて、メスゼミの気を引こうとするのと同じだ。
「……さすが身も蓋もない話をする人だ……まあでも、そうなんだろうね」
俺は女の子とデートしている男ってリア充で羨ましかったんだけど、実は結構大変なんだね。
「幸斗様とのデートでは、幸斗様は女の子に気を遣う必要はありません。幸斗様がお嫁様を選ぶ立場ですから。どの子が俺を一番楽しませてくれるのかなって、えらそーにしていればいいんです」
「えええ……俺にそんなつもりは……」
「そう、幸斗様はやさしいですからね。女の子に頑張らせると悪いなーと思っちゃう人です。女の子が頑張り過ぎても良くない。加減が難しいわけです」
氷室さんは俺の人間性をよくわかっている。課題デートの攻略法は一筋縄ではいかないということをみんなに説明する。
「ウチが幸斗さんとデートに行く前に、幸斗さんの希望を聞いてもいいんでしょうか?」
磨莉奈が手を上げて質問。
「構いません。事前に幸斗様と相談するのはOKです。あるいはどこに連れていくか内緒にして、幸斗様にサプライズを与えるのも一つの作戦ですよ」
「奥が深いわー ウチ、男の人とデートしたことないし」
磨莉奈がちょっと困っている。
デートしたことがなければ、どうすればいいか見当がつかないかもしれない。課題デートは俺と外出するだけだから一見簡単そうに見えて、女の子にとってはとても難しいことのようだ。
女の子5人の中でデートしたことがあるのって……
桃香だけだろう。パパ活をデートに含めるならば、だが。
磨莉奈と藍は女子校に通っていたから、あまり男と接点がない。
千紘姉さんは、学校でよく男子に告白されていたけど、全部断っていたからな。
ニーナちゃんは、小学生みたいな子だからデートなんてしたことないだろう。
桃香がパパ活みたいなことをして俺に媚びても、俺はうれしくない。桃香はむしろ経験が邪魔をすると言えるくらいだから、有利ではない。
全員がほぼ平等な条件で、課題デートに取り組むことになる。
よく考えられた課題だ。さすが氷室さんと感心してしまう。
「デートの行先は自由ですが、日帰りできることを条件にしましょう。朝6時以降に出発して、夜の12時までに帰って来ないといけないということで。あと、予算も自由です。お金を出すのは幸斗様なので、幸斗様が許可するならいくらお金を使っても構わないこととします」
「日帰りでも、行けるところはほとんど無限ですね」
藍が難しい顔をしている。
確かに……
いくらでも金を使っていいなら、新幹線で東京に行くのも可能。飛行機で九州に行って帰ることもできそうだ。
行先ですることも無限の組み合わせが考えられてしまう。
デートのプランをどうするか女の子たちの創意工夫が試されると言える。
そして、デートの楽しさにきっと差が出てきてしまう……




