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6 妖精ロリ【挿絵付】

◆◇◆


 キンコンカンコーン キンコンカンコーン

 放課後になった。


 今日は部活に行く。アニメ研究会に所属しているのだ。


 部室は4階の奥にある視聴覚室。校内最果ての地と言っていい。

 今どきは生徒ごとにタブレットが配布されているから、視聴覚室は使われない。我がアニメ研究会が他の部活や同好会との部室争奪戦に見事勝利して、4月から使えるようになったのだ。


 敗北した部活の奴らは、アニ研はキモいとかディスりまくっていた。

 しかしマンガ、アニメが日本の出版業界を支えているんだ。何も後ろめたく思うことはない。


 俺がアニ研に入っているのは無論アニメが好きだからだ。

 昔から孤児院育ちとイジメられてきたからな。自ずと俺は内にこもるようになり、二次元の世界に癒しを求めるようになった。


 俺は視聴覚室の後ろの戸をガララと引く。

「こんちはー」


 中では部員の男女がスマホ、タブレットを覗き込みながらワイワイ話をしている。アニ研は部活といっても、ただ駄弁っているだけのところだ。


「あ、ゆきとさん」

 セーラー服の一人が、ぱあっと笑顔になって、とたとたと掛けてくる。


 ニーナ・オーディンちゃん。ノルウェー出身の1年生だ。真っ白な肌と銀髪のツインテール。身長140センチだから小学生のように見えるロリッ子。碧い目で人形のように整った顔立ち。

 まさに北欧の妖精である。苗字が北欧神話の神様でかっこいい。厨二心をくすぐられる。


「ゆきとさんは『からかい上手すぎ高木さん』の最新話、見たですか?」

 ニーナちゃんは舌ったらずでたどたどしい日本語なのがかわゆい。俺たちの間で今一番来ているアニメだ。


「見た見た。最高に萌えたね」

「ですです。東片(ひがしかた)君も面白かったです」


 ニーナちゃんと俺は好みが似ていて、やたら懐かれている。

 ツインテールって、ツンデレっぽいイメージがあるけど、ニーナちゃんは至って素直な子だ。


 ニーナちゃんの親は今岡市内で3年くらい前にノルウェー料理レストランを開店した。

 去年、皿洗いのバイトを募集していたから雇ってもらった。中学生ながらお店の手伝いをするニーナちゃんとは俺はすぐに仲良くなった。

 

 孤児院育ちの俺を雇ってくれる店って、滅多にないのだ。店の物を泥棒されるって疑われているから。

 ニーナちゃんの親は俺に偏見を持たずに、優しく接してくれる。

 バイトで稼いだお金でネトフリとかの有料コンテンツを視聴できるから、俺はとてもありがたい。


 ノルウェー料理って馴染(なじ)みがない人がほとんどだろうけど、ノルウェーサーモンが有名なように、魚料理が美味しいのだ。

 

 ここ北陸では魚が美味いし、ニーナちゃんのパパは日本料理の要素を取り入れる修行も兼ねてやって来たという。一家そろって、大の親日家である。


「へくちゅ」

 ニーナちゃんがくしゃみをする。


「まだ花粉症?」


「ぐす……ふ、この程度の攻撃、無尽蔵の魔力を有する我にはカケラも効かぬ、です」

 ニーナちゃんはアニメで日本語を覚えた。時折、厨二病的なセリフが混じるのがかわゆい。


「日本は花粉症がなぁ」

 俺はニーナちゃんに申し訳なくて、日本中の杉を切り倒したくなる。


「へくちゅ」

「ごめんね。花粉が飛ぶのはもうちょっとの間だから」


「く、こうなったら伝説の妙薬(アムリタ)を飲むです」

 とたとたと(かばん)の方に走っていくニーナちゃん。


 伝説の妙薬じゃなくて、ただのアレルギー薬じゃん。

 ニーナちゃんのやることの全てがかわゆくて、微笑ましく見てしまう。


 とまあ4月早々、アニ研に北欧の妖精が降臨した。

 たちまち入部希望者が殺到。

 アニ研はキモいとディスッていた奴まで来る始末。


 にわかオタクどもが、ニーナちゃんに群がるなど汚らわしい。

 俺たち上級生によるオタク知識を問う入部試験が初めて課されることになった。俺でも2割くらいしか解けない難問ぞろい。9割解けないと合格にならない、ハードモード。


 ニーナちゃんだけはもちろん試験が免除だ。

 結果、ほとんどの1年生は入部申請を却下され、部員は総勢10人ほどのまま。


 ニーナちゃんはたいがい俺とだけ雑談して、のびのび寛いでいる。


 そう、アニ研部員は他にもいるのに、なぜニーナちゃんは俺にばっかり構ってもらいたそうにしているんだろうね。他の男の方がオタク知識は豊富なのに……


 バイト先の子だから、もともと仲良しなんだけどさ。俺は皿洗いを真面目にやっているし、ニーナちゃんは俺の話を熱心に聞いて、オタク知識を伝授されるとともに、日本語を学び取ってるようだった。


 ニーナちゃんはイマイチ高に進学して、アニ研に入ってくれた。ニーナちゃんが俺を慕って後を付けているように感じるんだけど……俺なんかがこんな良い子と接していていいんだろうか。


 まあ、いいや。


 俺は幼い頃に親を亡くして、ド底辺人生を強いられてきた。

 北欧の妖精と一緒に過ごせるくらいの幸運で埋め合わせがあったっていいじゃないか。

 至福の時間を楽しもう。


挿絵(By みてみん)

知人の絵師さんからニーナちゃんのイラストをいただきました。

(イラストの姿は本文とは直接関係ありません)

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