56 タワマンの部屋
◆◇◆
俺と女の子5人の部屋は、俺がタワマンにやって来る前から決められていた。俺より一足先に女の子が入居していたからだ。
窓が海側に面していて、並び順は……
桃香、千紘、俺 、ニーナ、藍、麿莉奈
……である。
どの部屋も同じ広さで、内装も同じである。ドアには鍵がかけられるし、覗き穴もついている。
俺が真ん中の部屋ってのが先に決められて、女の子たちの部屋はジャンケンで決められたらしい。俺の部屋に近いほど良い部屋ということだという。
「壁がぶ厚いので声が漏れ聞こえることはないんだから、近さは意味ない気がするんだけど」
俺が素朴な感想を述べると……
「ウチは近い方が、幸斗さんを感じられていいんです」
「そうだぞっ あたしは端っこで嫌だ。1ヶ月おきに部屋を入れ替えさせろよ」
麿莉奈と桃香が不平を訴えていた。
「お部屋の入れ替えはたいへんなのです。ずっとこのままでいいのです」
ニーナちゃんは涼しい顔で言い返して、俺の隣の部屋を守り抜こうとする。
俺としても、おとなしめのニーナちゃんと、千紘姉さんが隣の方が落ち着くからこのままがいいというのが本音である。
廊下には防犯カメラが1台天井に取りつけられている。
昨日、氷室さんがタワマンを案内してくれた時に、説明があった。
「皆様の部屋の前の廊下にだけ、防犯カメラが設置されています。皆様の部屋の出入りを録画させていただきます」
「録画されているってなんか気持ち悪いな。録画は何のためなの?」
「イジメを抑止するためですよ。誰かを蹴落としたい女の子が、勝手に部屋に入って物を破壊するとかのイジメをしないように」
「そんなことする子いるのかな……」
俺が見たところ女の子たちは5人とも性格の良さそうな子ばかり。麿莉奈と藍は策略家で、高度な戦術を駆使する。露骨なイジメなんて低レベルなことはしなさそう。
「もしイジメなんかやったら、すぐに犯人が特定されて幸斗様の評価を大きく落としてしまいますからね。やらない方が身のためでしょう」
「うんうん、みんな仲良く暮らそうね」
俺が呼び掛けると、
「「「「「はーい」」」」」
と5人とも笑顔で応じてくれる。
「自分は防犯カメラがあった方が安心です。いちいち鍵をかけて出掛けるのは面倒なので」
藍はノーガードを宣言。
「私も見られて困るものはないなあ」
千紘姉さんも鍵を掛けないつもりらしい。
「ゆきと、いつでも遊びに来てくれよな」
桃香が気軽に言ってくれる。
「行かないと思うけど……」
俺はつれない返事をしてしまう。桃香の部屋に行ったら桃香とエッチなことをしていると思われかねない。
「ええ~ 来てくれていいじゃん」
「女の子の部屋に入るっていうのは男子の夢だから行ってみたいんだけどね。俺は女の子に公平に接しないといけない立場だから、誤解を招く行為は慎むよ」
「ゆきとは真面目だよなぁ」
「先輩、自分が部屋にいない時にこっそり入ってくださっていいですよ」
藍が俺の耳元でささやく。
「入らないってさ」
「自分の下着を泥棒されたとしても、自分は訴え出ませんからね。先輩にクンクンしていただけたら本望です」
「……藍は俺を変態だと思っているんだろう。違うからな」
俺はどうしてそういうことを言われるのか理解に苦しむ。防犯カメラに録画されているんだから、女の子の部屋に勝手に入り込むなんてするわけない。
「ふふっ 幸斗先輩はここでは王様なんだから、下着を盗み出すくらいじゃなくって、女の子に夜這いをすればいいと思うんですけどね」
「まったくです。幸斗様にはマスタキーをお渡ししておきましょうか?」
氷室さんが横から口出ししてくる。
「要らないよ……夜這いはしないから、みんな安心して寝ててね」
「つまんねーの」
「ウチは、肩すかしを食らわされた気分やわ。幸斗さんにすぐに抱いていただけると思うてたのに」
桃香と麿莉奈はがっかりしている。
うう……俺の気遣いが歓迎されてない……むしろ不評……
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