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55/203

55 汗臭い藍

「合気道が評価されるんですかね。幸斗先輩が汗臭い女が好きっていう変態だったらいいんですけど」

 藍がちろっと横目で見てくる。


「え……いや、その……」

 俺はいきなり話を振られて困る。女の汗は嫌いってわけじゃなく、むしろ好きなんだけど正直に言うとみんなをドン引きさせてしまう。


 実際、藍に変態と罵られるのが結構快感だったりして、俺には少しMな面がある。藍は俺を変態だと見抜いているところがあって、計算ずくで道着姿でいるように思える。


「すぐにシャワーを浴びるつもりだったのに空腹に負けて、幸斗先輩の隣に座ってしまっていました。先輩は変態じゃないから、汗臭いの嫌ですよね。もう取り返しがつきませんよね」

 藍は演技で落ち込んだ声を出して見せる。「変態」という言葉にドキッとしてしまう。


「……道着だろうが、制服だろうが俺は細かいことを気にしないから。うん、どっちでも素敵だよ。てか全然匂(にお)って来ないし」

 優柔不断な応えをする俺。変態であることは否定しない。

 俺と藍の間隔は30センチほどある。匂って来るってよっぽどでしょ。

 

「ほんとですか。良かったぁ」

 藍は一転して安心した声を出す。


「うんうん、大丈夫だよ」

 俺はカレーをぱくぱく食べる。

 ちょうどよい温度に冷めてきた。


「でも、幸斗先輩が本当は変態で、自分の匂いを『くんかくんか すーはーすーはー』したかったら言って下さいね」

 藍がとんでもないことを言う。


 千紘姉さんが、ぷっと吹き出している。麿莉奈も顔を赤くする。


「げほっげほっ」

 むせてしまった。


 藍はやはり生意気な子だ。千紘姉さんの前で、俺を辱(はずかし)める。年下なのに、俺を手の平で転がして弄んでいる。そして俺が密かに喜んでいることに気づいている。


「すいません、先輩。変なこと言っちゃって」


「げほっ 俺は、けほっ」

 変態じゃないと言おうとするが声が出ない。


「幸斗先輩はまさに王様ですからねぇ 女の子5人にどんな恥ずかしいことでも命令できちゃいます。どんな目に遭わされちゃうんだろ、ぶるぶる」

 藍はそう言いつつも全然怖がっている様子はなく、笑っている。

 

 藍は俺に立場を自覚させて、俺の変態性を引き出そうと誘惑してくる。


「けほっ 俺はみんなに変なことはさせないし、するつもりはないって」

 ようやく声が出た。


 すでにみんなには、ご飯を食べさせてもらう赤ちゃんプレイとかコスプレをさせているから説得力がない……


「そうですか……まあ気が向いたら、お命じ下さい、王様の幸斗先輩」

 藍はカレーを食べる。


 この場では、藍はこれ以上俺を弄(もてあそ)ぶのは止めておくが、今後じわじわと俺を変態に目覚めさせていくような予感がしてしまう。


 藍はちゃっかり自分の魅力を俺に伝えている。

 当初、麿莉奈が女子力の高さを見せつけたが、藍が合気道の技のように受け流して切り返した。


 いやはや、策略家の麿莉奈と藍の駆け引きはハイレベルだね。まさにバトルロワイヤルって感じだよ。


 天然の千紘姉さんと、ニーナちゃんの話は素直で、打算がない。だから二人と接するのはとても気楽。一方で、麿莉奈と藍も俺を楽しませてくれる。


 なんだかんだで、俺はバトルロワイヤルの面白さを感じ始めつつあるようだ。

本作の短編版

『1兆円持ってる俺は、競馬で無双して美女にデレられてしまう』を投稿しました。


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