47 ハーレムランチ2
Sランチの中身は、トンカツ、サバの味噌煮、ハンバーグ、サラダ、ご飯、味噌汁、プリン。高校生にとって何より重要な要素のボリュームは十分に満たしている。味もおいしそう。
これで700円なんて、むしろ安いだろう。学食ってお得だと思う。
6人掛けのテーブルで俺たちはまとまって座る。配置は……
藍 千紘 ニーナ
桃香 俺 麿莉奈
……である。
「お茶です、幸斗先輩」
藍が上下関係を重んじる体育会系らしく、俺に冷たい麦茶を汲んで来てくれる。他の子も自分で汲んでくる。
「ありがとう、じゃあ、いただきまーす」
俺の合図でみんな箸を手にして食べ始める。ニーナちゃんはフォークを使う。
「うめー さすが伝説のSランチ」
桃香が感動している。
「確かにおいしいな。児童養護施設の残り物とは違うと言わざるをえないぜ……」
俺も感嘆する。トンカツは揚げたてでまだ温かい。料理は温かいだけでおいしく感じられるから、残り物弁当とでは比較にならない。
「おいしいわぁ 幸斗、ありがとうね」
千紘姉さんが喜んでくれる。千紘姉さんに学食を食べさせてやれて、俺は感無量。
相変わらず俺たちの周囲はザワザワしている。
俺の向かいのテーブルの男子は、俺に露骨な敵意の視線を放ってくる。
「何あいつ。美少女を独り占めにしやがって」
「今朝も一緒に登校してたぞ」
「千紘さんは孤児院で一緒だからだが、他の子はなぜなんだ?」
「孤児院を大事にしろみたいなチャリティーイベントでもやっているのか?」
男子どもは俺が児童養護施設から出たことをまだ知らないから、孤児院と侮蔑している。
俺がお前らより遥かに格上になったというのは受け入れ難いだろうからな。真実を知らないままでいた方が幸せだぞ、ククク。
学食にいる他の女子もザワザワしている。
「あの男子はなんで女の子たちに囲まれてるわけ?」
「ニーナちゃんに聞いたけど、ものすごい金持ちの家の子らしいよ」
「うっそ!? まじで!?」
「イマイチ高近くにできたタワマンの最上階に住んでるって」
「やば、超金持ちじゃん」
「千紘に聞いたけど、2年生の六文銭幸斗くんって言うんだってさ」
「私も六文銭くんと一緒に食べよっかな」
女子の情報収集能力には驚かされる。プライドが無駄に高い男子よりもよっぽど現実的で、早速俺に取り入ろうとしている。
ニーナちゃんと千紘姉さんが、今朝の登校シーンを見た同級生に問い詰められて話したんだろう。二人とも素直で嘘つかない性格だからな。
「無駄だよ、六文銭さんの周りはSランクの女子で固められてるから、あんたが行っても相手にされないって」
「うう……確かに全然かなわなさそう」
女子は俺のお嫁様候補5人の顔ぶれを見て、怯んでいる。
「私はセフレでいいから、遊んでくれないかな」
「うん、私を好きにしていいから、お金欲しい」
イマイチ高にも品のない会話をする女子がいるようだ。俺は相手をする気はない。
「幸斗さんに自分で食べさせてて、悪いわー いつもウチがお弁当を食べさせているのに」
右隣の麿莉奈がしまったという顔をしている。
俺は勝手に食べ始めていたが、そう言えばそうだ。
先日から教室で麿莉奈がお弁当を「あーんして下さい」と食べさせてくれていた。
「いいよいいよ、恥ずかしいから今日は遠慮しとく」
すでに俺たちは大変注目を集めているしね。
「それではウチが落ちつきません。幸斗さんのお箸を貸して下さい。食べさせてあげますので」
「えええ、さすがに……」
俺は引き気味。
他の4人の女の子もキョトンとしている。
だが麿莉奈は俺から箸を奪い取った。
「さ、どれにしはりますか」
「じゃ、じゃあ、トンカツを」
「はい、あーんして下さい」
麿莉奈がトンカツを一切れつまんで、口に入れてくれる。
教室ではもはやお馴染みになっている麿莉奈の必殺技【食べさせ】だが、学食では初めて。
周囲に唖然とした空気が広がって行く。
「孤児院が女子に食べさせてもらってやがる」
「一体どうなっているんだ!?」
男子がうめいている。うらやましくてしょうがないだろう。
恥ずかしいが、これは恥ずかしさこそが快感なんだよね。
美少女が俺をとことん甘やかしてくれる。金持ちになって良かったと思えるひと時だ。
「幸斗先輩は赤ちゃんでちゅねー」
藍がすかさず毒を吐く。
「い、いやこれは、麿莉奈がどうしてもさせてくれというから。俺は恥ずかしいんだよ」
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