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44 相合傘2

 藍が傘を差す。

「先輩、自分が最初ってことで」


「お、おう」

 俺は藍のそばに寄って、傘に入れてもらう。でも藍とはお互いに緊張感があるから、10センチくらい開けてしまう。


「もっとくっつかないと雨で濡れますよ」

「そ、そうかな……」


「先輩は遠慮してばっかりですね。じゃあ自分がくっつきます」

 藍の方から俺に身を寄せてきて腕がくっつく。半袖だから、藍の肌と触れ合ってしまって、ドキドキする。


「……」

「ふふ」

 藍は横目で俺のドキドキを見透かすように含み笑いする。


「行きますよ」

 藍はゆっくりと歩き出す。雨除(あまよ)けの下から出ると、傘に雨が打ち付けてくる。

 他の4人の女の子もそれぞれ傘を差して後に付いてくる。


「俺はついて行くから、藍のペースで歩いてくれればいいぞ」

「ねえ先輩、手をつなぎませんか? その方が同じペースで歩けると思いますが」

 藍が大胆な提案をしてくる。


「い、いや、それはさすがに」

 相合傘に加えて、手を繋ぐなんて心の準備が全くできていない。


「ですよね」

 藍がまた含み笑いする。生意気な藍は臆病な俺を弄んでいる。


 俺は藍よりは背が高いから、隣で立っていると藍のうなじを見下ろす形になる。髪がショートの藍は、うなじがはっきりしている。つやっとした肌がなまめかしい。


「先輩、相合傘って確かに付き合っているみたいですね」

 藍が話しかけてきてびっくりする。


「そ、そうだな。他の生徒に見られたら恥ずかしそうだ」

 タワマンの敷地から出たばかりなので、まだ他の生徒が周りにはいない。


「先輩、自分といるのは恥ずかしいですか?」

「ち、違う。むしろ逆。藍の方が俺なんかと相合傘しているのを見られるのは恥ずかしいんじゃないかと思って。俺と相合傘なんて、罰ゲームの一種と思われないか」


「ふふっ 先輩の偉そうにしないどころか卑屈なところ、自分は嫌いじゃないです」

 藍がクスリとした。


 100メートルはあっという間に終わった。

 俺は藍に続いて、千紘姉さん、桃香、麿莉奈と相合傘をする。イマイチ高に近づくほど登校中の他の生徒が増えていく。


 ついにニーナちゃんと相合傘。ニーナちゃんの傘は青色だ。ニーナちゃんは背が低いから傘の柄を持つと、傘が俺の頭にぶつかってしまう。


「がんばって、手を上げているです」

 ニーナちゃんは右手を掲げて、傘を俺の頭の上にしようとするけどつらそう。


「俺が傘を持ってあげるよ」

 ひょいと傘を取る。


「ゆきとさんに傘をささせるなんて」

「いいよいいよ。俺がニーナちゃんに傘を差してあげている方が落ち着く」


「し、しあわせなのです」

 ニーナちゃんは俺の傘の下に入って大げさに喜んでいる。


 さらに美少女4人にも取り囲まれて登校する俺。

 他の生徒の注目を集めまくっている。


「わたしはいま、ゆきとさんの彼女なのです……」

 ニーナちゃんはみんなに見られていることで恍惚となっている感じ。

 俺も北欧の妖精さんと相合傘できるのが誇らしい気分だよ。


「お、おい、なんで六文銭が、ニーナちゃんと一緒に傘さしてるんだ?」

「アニ研だからだろ。ムカつく」


「ニーナちゃん以外にも、すげえいい女に取り囲まれてるじゃん」

「千紘さんは同じ孤児院だからだが……他の子はなんでなんだ?」

 男子どもが狼狽(ろうばい)している。

 

 麿莉奈、桃香、藍はまだ存在が知れ渡っていないけど、ニーナちゃんと千紘姉さんはSランク美少女として広く知られている。


「他の子は千紘さんの友達なんだろ。六文銭とは関係ないって」

「たまたま一緒に登校するだけなんだよ」

 男子どもには、5人の美少女全員が俺の物というのは受け入れがたいだろう。どうにか納得のいく説明を考えようとしている。


 しかし今後、俺たちは毎日連れだって登校する。

 男子どもは嫌でも、絶望的な現実を受け入れないといけなくなる。ククク……

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