30 最初の課題「コスプレをお願いします」
「一体、何を……」
俺は嫌な予感がしている。
「早速ですが、幸斗様から女の子たちに課題を出していただきましょう」
「へ……?」
「リアル恋愛バラエティでは定番ですよ、選ぶ側が選ばれる側に課題を出すというのは。課題をどうこなすかで女の子を評価するんです。この同棲はバラエティ番組じゃありませんけど、やってみるのも面白いじゃないですか」
「一発芸とかですか……パーティーの余興なんだから」
俺は恐る恐る確認を求める。
「ふっ 一発芸の上手さで、幸斗様はお嫁様を選ぶつもりですか? 一発芸なんて、無能なサラリーマンが職場の飲み会でやることです。お嫁様の役目じゃないでしょう」
氷室さんは鼻で笑った。
「そ、そりゃそうだけど。じゃあ何を?」
「例えば……裸になれ、はどうですか?」
氷室さんがさらりと言う。
「いいいい……」
俺はドン引き。
「バトルロワイヤルに参加する覚悟のない子には早々にお引き取りいただいた方がいいでしょう。お互い時間の無駄ですからね。幸斗様、ぜひ厳しめの課題を出して下さい」
「よーし、ゆきとー あたしのおっぱい見せてやるよ」
桃香が立ち上がり、セーラー服の胸元のホックを外し始める。
裸になるのを全く気にしない子もいるのだが……
「先輩は変態ですね」
藍が冷たい視線を向けてくる。
「待って、待って。俺は裸になれなんて言ってない。桃香、脱ぐな」
俺は桃香のピンク色のブラが見えかけたところで押しとどめる。
「ふふっ では課題をどうしますか。司会者の私としては、ここで絶対に何か出してもらいたいところです」
「うう……」
俺にみんなの視線が集まる。
麿莉奈がゴクリとしている。みんな、俺の出す課題を固唾を飲んで待っている。
どうしようどうしよう。
俺は腕組みして考え込む。
覚悟のない子は、早く帰った方がいいというのはそのとおり。
でも非道な課題を出すと、俺の人間性を疑われる。女の子たちが苦しむのはかわいそう。
桃香は裸になるのが嫌じゃなくても、他の子は絶対嫌だろう。
…………
そうだっ
俺のハッとした様子に、氷室さんが気づいた。
「思いついたようですね。では課題を出して下さい」
「こほん……コスプレです。みんなにはコスプレをお願いします」
言うのが恥ずかしい。
「え、どんな?」
女の子たちがキョトンとしている。
「クローゼットにコスプレ衣装がたくさんあったから、みんな、どれか選んで着替えてよ。何のコスプレをするかはお任せで」
俺は恥ずかしさをごまかすために早口で言い切る。
「なるほど……幸斗様が喜ぶコスプレをした子が高評価を獲得ということですね」
氷室さんが納得。
「い、いや、別にそんなつもりは……」
俺に明確な採点基準があるわけじゃない。何か課題を出さなくちゃってことで、苦し紛れの思いつきだ。
「コスプレは一発芸の一種なのでは?」
麿莉奈は腑に落ちてない感じ。
「いいえ、コスプレは夫婦になるからこそ大事ですよ。お嫁様がいつも同じ姿では夫は飽きてしまいますからね。お嫁様は時にメイド服などのコスプレでご奉仕したりして、夫を新鮮な気分にさせないとっ」
氷室さんが力説。離婚弁護士は、夫婦生活を円満にするアドバイスもできるのか。
「やっぱり先輩は変態」
藍の視線がますます冷たい。
「わーい、コスプレやりたいです」
ニーナちゃんは喜んでいる。アニメ大好きっ子だから。
「では、皆様、コスプレに取りかって下さいね。クローゼットから一つずつ選んで自分の部屋で着替えて下さい。着替えたら、一人ずつ幸斗様にお披露目しましょう」
氷室さんが促すと、女の子たちは立ち上がる。
ニーナちゃんが、とたとた走って行く。桃香はニヤニヤして歩いて行く。エロいコスプレをしてやろうと考えてそう。
麿莉奈はうつむいて恥ずかしそう。千紘姉さんと藍は、しれっとした顔だ。
コスプレ課題の受け止め方は様々なようである。
「さてと、私はパーティーエリアで、支度をします。幸斗様はおくつろぎになっていて下さい」
氷室さんはそう言い残して去って行く。
パーティーエリアなんてあるのは、さすがタワマン最上階。
ぼっちだった俺がパリピになるのは、違和感がすごい。
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