29 ペントハウス
「ど、どうも」
俺は緊張感マックスで、部屋に入って行く。広い玄関で靴を脱ぐ。
玄関だけで児童養護施設の男部屋より広い。
「こっちだよ、幸斗。とっても素敵なお部屋だよ」
女の子に取り囲まれて、廊下を歩く。学校の廊下より幅がある。
廊下を行った先、急に視界が広がる。
一面がガラス貼り。青空が見える。
俺たちは窓際に立つ。
「ゆきとさぁ ここ、海が見えるんだぜ」
桃香が指し示す。
今岡市内にこのタワマンほど高い建物は存在せず、視界を遮るものがない。彼方に日本海が見える。
太陽が水平線に沈んでいく幻想的な光景だ。
「反対側は北アルプスの絶景なのです」
ニーナちゃんもはしゃいでいる。
「私、こんな素敵なところに住んでいいのかしら」
千紘姉さんはそう言いつつも、ニコニコしている。
「オンボロ児童養護施設とでは天と地の差があるもんな」
左右を見ると、だだっ広い空間が広がっている。フローリングで、バスケットボールができそうなくらいだ。
所々に観葉植物が置かれてるし、リビングっぽくソファやテレビが置かれた一角もある。
突き当たりにはカウンターキッチンが見える。
「ふふ、これならば6人が同棲しても、息苦しくないですね」
氷室さんが含み笑い。
「ええと、氷室さんは一緒に暮らすんですか?」
「私は下の階の部屋で暮らしています。バトルロワイヤルの司会役ですので、ちょくちょくやって来ますよ」
氷室さんは関わる気まんまん。
でも氷室さんが同居しないと聞いてホッとする。
俺は氷室さんに案内されて、部屋の中を一回りする。
バスルームは3つ、トイレも3つ。
ウォークインクローゼットには色んな服が吊り下げられている。メイド服とかコスプレ衣装もたくさんある。
俺たちはリビングのソファに腰を下ろす。
10人くらい並んで座れる長いソファだ。俺の左右には美少女5人がずらっと侍っている。
氷室さんが向き合って立つ。
「皆様、お集まりいただきありがとうございます。いよいよバトルロワイヤル開幕です」
女の子たちが息を飲んでいる。空気が急に張り詰める。
「幸斗様のお嫁様の座を巡って競っていただきます。といっても露骨に他の女の子を貶めるような行為は、かえって幸斗様の印象を悪くしてしまいます。表向きは皆様、ほのぼの、仲良くなされた方がいいでしょう」
「はーい」
ニーナちゃんが明るく応じる。
わかってんのかね。
「今日のところは初日ですので、私の方で幸斗様歓迎パーティーを開催させていただこうと思います。この後、お寿司やケータリングサービスが届きますので」
「寿司!? やったやった」
桃香が歓声を上げる。
「わーい」
千紘姉さんも拍手して喜んでいる。貧乏だったもん。
「パーティーには余興が付きものですよね、ククク」
氷室さんが急に邪悪な顔をする。
いきなり何をさせるつもりだ……?
まさかジャージに着替えさせて、ダルマさんが転んだとかじゃないだろうな。止まらないといけないタイミングでちょっとでも動いたら射殺……
いまだに俺は女の子たちがデスゲームに参加させられるんじゃと気が気じゃない。




