アイリーンの攻撃を受けてしまった。
何故攻撃を受けたのかはフローラの話でクロードやフローラとユリシーズの事で、仲違いしたからです。フローラのお話29話でわかります。
良い天気の朝、雪掻きも終わり、グリザスは騎士見習い達の訓練に入ろうと、騎士団寮からクロードと共に出ようとした。
その時である。アイリーンが魔法陣を展開して現れた。
「クロード。グリザス。あんたたちだけは許せない。殺してやるわ。」
クロードがグリザスを庇って前に出る。
「グリザスさんは俺が守る。」
「クロード。俺はお前の剣技の指導者だ。守られるより、守って見せる。」
アイリーンは邪悪に笑う。
「上等ね。二人纏めてあの世に行くがいいわ。」
アイリーンの身体から数本の触手が伸びて来た。
グリザスは次々襲い掛かる触手を魔剣で弾く。
触手と言っても、先が鋭く尖っており、突き刺さったら、身体を貫く程の危険な物だ。
クロードはグリザスと、アイリーンの激しい戦いに、手が出せずにいた。
だが意を決したように、アイリーンに一撃を与えるべく、前に出て、素早い動きで聖剣を繰り出そうとした時に、何かに気が付いた。
それが油断になった。
凄い殺気がアイリーンの背後から、湧き出て、ユリシーズが現れ、クロードに斬りかかろうと聖剣をふるってきた。
「危ないっーーー。」
グリザスが飛び出て、クロードを庇う。
しかし、ユリシーズの聖剣は、グリザスの首ぎりぎりの所で止められた。
ユリシーズが叫ぶ。
「逃げろっ。早くっ。」
凄まじい勢いで、アイリーンの触手が体勢を崩した二人を襲う。
ユリシーズが二本の触手を両手で掴んで止めてくれた。もう一つは彼の腿に刺さる。
よけきれずにグリザスも、クロードを庇い、触手の鋭い先を腹と腿に受けてしまった。
クロードが叫ぶ。
「グリザスさんっ。ユリシーズっ。」
叫んだクロードの口から血が…
グリザスがダメージを受けたので、クロードにもダメージが跳ね返ったのだ。
魂の分割で。
アイリーンが、串刺し状態のグリザスと、膝をつくクロード、そして腿から血を流しているユリシーズに近づいた。
「ユリシーズ。なかなか思い通りにならないわね。勇者だからかしら。隷属からは逃れられないのよ。せっかくお父様もごまかしたというのに。」
ユリシーズはグリザスとクロードに向かって。
「俺…正気を保つのが難しくて…。アイリーンを牢から逃がしてしまった。ああ、クロード。グリザスさん。貴方達だけは殺させない。」
急にうっとりしたような表情に変わっていったユリシーズ。
「ハァハァ。あああ、アイリーン。もっともっと痛くして…。愛してる…。」
グリザスは腹と腿を貫かれている傷が痛くて朦朧としていた。
クロードも苦しそうだ。ユリシーズは、正気と狂気の間を行ったり来たりしている。
このままでは、愛する人を守れない。
串刺しになったまま、魔剣を手に立ちあがる。
「クロードは俺が守る。」
アイリーンは邪悪に笑い。
「今度こそあの世へ帰りなさい。」
触手が、再び襲い掛かってくる。
全てグリザスは魔剣で弾き返すが、意識が更に朦朧としてきた。
立っているのも辛い。
その時である。
魔法陣が展開し、フォルダン公爵が現れた。
「ここまでだ。アイリーン。まだ悪さをするとは…」
「お父様。私を邪魔しないで。ああ、でもお父様には勝てないわ。」
しかし、不利だと思ったのか、アイリーンはユリシーズを連れて、姿を消した。
フォルダン公爵は、クロードとグリザスに近寄って。
「王立病院へ転移する。いいかね?」
返事も聞かず、ツルハ医師のいる王立病院へ転移した。
二人はベットに運ばれて、手当を受けようとした。
しかし、グリザスは死霊、クロードはグリザスの怪我のダメージを受けているのだ。
どうしたらよいか。
ツルハ医師は二人を見て、すぐに判断し、神官長や、王宮の聖女リーゼティリアを連れてくるよう、フォルダン公爵に頼んだ。
神官長と、リーゼティリア、そしてフィーネがやってきて、
意識がなくなってしまった、グリザスに向かい、
リーゼティリアはその手を握り締め、
「まだ逝くのは早いですわ。貴方は幸せにもっともっとなる必要があります。
神官長様、フィーネ、力を貸して。」
3人はグリザスの腹と腿の傷に力を注いで、癒していく。
ツルハ医師はクロードに。
「グリザスさんが助かれば、君の身体も楽になるはずだから。大丈夫だよ。」
「ありがとうございます。ツルハ先生。ああ、グリザスさん。魂に呼びかけても反応ないんですよ。貴方が死んだら…俺…」
フォルダン公爵は、フローラに通信魔具で連絡しているようだった。
危険である。
あの二人、フローラとディオン皇太子の元へ行ったのではないか?
それから、フォルダン公爵はグリザスの鎧の修復を、聖女達の癒しと合わせて始めた。
グリザスは深い深い闇に落ちていた。
眠い。たまらなく眠い。
もう、このまま眠っていいのではないか?
「グリザスさん、俺を置いていかないで。お願いだから。ねぇ。結婚するんでしょう?俺と。正騎士になったら、一緒に家を借りて住みましょう。一軒家は無理かな…本当は一軒家がいいんだけど。小さな庭があって、テラスで二人でのんびりして。時には友達が遊びに来てくれるといいなぁ。ギルバートとかカイルとか。
見習いの仲間達と庭でバーベキューをやってもいいよね。
夜は静かな時を、二人で過ごすんだ。外では虫が鳴いていて、静寂が心地よくて。
白いベットの上の薄明りの中、貴方の身体をまさぐりたいよ。
まぁ鎧だから、イチャイチャするだけだけどね。
沢山沢山キスしてあげる。兜にも、鎧に覆われたその全てに。
勿論、魂の世界でいちゃつくのもいいよね…貴方の顔が見られるし、貴方の身体を感じる事が出来る。貴方が鳴くのはとても可愛すぎるし。もっともっと鳴かせたくなる。
話は戻るけど、家具は白がいいかな…。花も飾った方がいい?俺、かなえたいよ。
その夢を…お願いだから戻ってきて。」
やけに長いその願いは、勿論、クロードのものだが…
長すぎないか?
お陰で、何だか頭がさえてきてしまった。
目を覚ましてみれば、聖女様が手を握り締めてくれて。
「目を覚ましたわ。」
フィーネが泣きながら。
「良かった。グリザス様。」
「クロードは無事か?」
急いで聞いてみれば、
クロードがベットの傍まで来て。
「俺は大丈夫です。よかった。戻ってきてくれた。」
クロードは泣いているみたいで。
その時、ミリオンが転移魔法で現れた。
「重傷を負ったみたいだな。俺がお前達を守る。フローラはディオン達が守るから、安心しろ。」
グリザスは礼を言う。
「ありがとう。ミリオン。そして、みんな…聖女様、何度も命を助けて下さって感謝する。
クロード、あの言葉は長すぎないか?」
クロードは泣きながら。
「俺の願望を述べたんです。グリザスさん。本当に良かった。」
ツルハ医師はクロードに。
「さぁ、ベットに戻りなさい。グリザスさんも完全に治った訳ではないのだから。君もまだ安静に。」
「はい。先生。」
神官長が自分の長いひげを触りながら。
「まさか、死霊に癒しを使うとは思わなんだ。」
フォルダン公爵が神官長に。
「有難うございます。神官長様。御足労頂き、助かりました。」
フィーネが涙を拭きながら。
「愛は偉大ですねー。グリザス様。お二人の新居に私も招待して下さいね。」
グリザスはどきりとした。
「まさかとは思うが、あの長い言葉はクロードは声を出して言ったのか?」
ミリオン以外、皆、一斉に頷く。
あああああっーー。穴があったら入りたい。いや、俺みたいな背の高い死霊が入る穴なんてないに違いない。
ベットの上のクロードがグリザスに向かって。
「願望なんだけど、正騎士になったとして、俺とグリザスさんの給金じゃ、家一軒は難しいかな…ローンを組むとかすれば、買えると思うけど。借りるのも高いからもったいないし。だから願望になっちゃうんだよね。」
「俺は…どんな所でも、お前と一緒にいられれば、それで幸せだ。クロード。」
「嬉しいです。グリザスさん。」
ふと、気になった事を聞いてみた。
「アイリーンにお前が攻撃をかけようとした時、何かに気を取られたな?あれは何だ?」
グリザスの問いにクロードは。
「アイリーンのお腹に、何だろう。小さな光が見えたんだ。あれってもしかして。」
フォルダン公爵が驚いたように。
「子供が出来たというのか?ユリシーズとの間に。」
「多分、まだ弱々しい物でしたけど。」
何とも複雑そうな顔をしてフォルダン公爵は。
「私はディオン皇太子殿下の元へ行ってみる。アイリーンが姿を現しているかもしれん。後はミリオン頼んだぞ。」
「任せておいてくれ。」
フォルダン公爵は魔法陣を展開して姿を消した。
グリザスに眠気が襲ってきた。
「少し眠っていいか?クロード。」
クロードもベットの上から答える。
「俺も、眠ります。皆さん有難うございました。」
リーゼティリアが立ち上がって。
「おやすみなさい。私は神官長様とフィーネと共に帰ります。」
フィーネがにこにこしながら。
「お大事にね。」
3人は帰っていった。ツルハ医師は仕事に、ミリオンだけが護衛だと言って残ってくれている。
アイリーンとユリシーズの事が気になったが、後はフォルダン公爵やディオン皇太子殿下に任せておけば何とかなるだろう。
今は、命があった事を有難く、眠る事にしたグリザスであった。
読まれているんだろうか?自分自身、こんな長い話読まないけど、大汗。
今年もお世話になりました。来年もよろしくお願いします。




