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平和?な日常…ともに居られる幸せ

あれから、数日後の事である。魂の世界でクロードとグリザスはいちゃついた後、草地に素っ裸で寝っ転がっていた。

空は夕空が広がっており、ススキがキラキラ煌めいていて、ぽっかりとその中にある空き地の草原なのだが、グリザスは不機嫌だった。


魂の世界では死霊では無く、元の人間の姿に戻れる。

そして、ここは寒くもなく、とても温かい。

それはいいのだが。


グリザスは、ふと疑問を口にしてみる。


「いつも思うんだが、何でこんな見通しの良い外なんだ???」


クロードは身を起こしながら、首を傾げて。


「ちゃんとススキで隠してあるじゃないですか?どこが見通しの良い所なんです?」


「外だろう。外っ…」


「魂の世界に外も内もないですよ。」


まぁ、そうかもしれないが…。ああ、手加減してもらったのに、言えない所が痛い。


俺も歳なんだからもう少し手加減してほしい。


亡くなった時は三十路過ぎていたが、今、俺って何歳なんだ??


寝転がったままでいたら、クロードがグリザスの胸に、甘えるように顔を寄せてきた。


「ん。これが胸枕ですね。」


「胸が無くて申し訳ない。」


「グリザスさんに胸があったら不気味です。」


クロードは胸に顔を寄せたまま、目を瞑りながら、今日、あった事を報告してきた。


「ユリシーズの件は解決しました。アイリーンが魔界の牢獄へ入れられて、ううん。多分なんだけど、第二魔国の魔王は、アイリーンの従兄が継ぐじゃないかな。今、宰相をやっているレスティアス、歳は25歳なんだけど、有能なんだ。本来なら彼が魔王になるはずだったんだけど、彼の父親が早死にしたせいで、フォルダン公爵が実権握っちゃったんだよね。でも、フォルダン公爵が実権を握っているうちはいいけど、ディオン皇太子殿下。レスティアスと上手くやっていけるかなぁ…姉上は大丈夫だと思うけどね。」


「それなら良かった。と言いたいところだが。聖剣を持つ人が一人抜けて大丈夫なのか?」


「それなんだよね。あ、後日、グリザスさんにも話があると思うけど、グリザスさんとザビト総監に協力してほしいって。魔王討伐。」


「え??俺もか?」


今日、遠目で見たが、凄い大きな黒龍だった。


魔女に頼んで、幻を出してもらい、それに向かって聖剣持ち7人は、王宮の庭で訓練していたのだが。


グリザスは答える。


「ディオン皇太子殿下の命ならば、勿論、協力しよう。お前と共に戦えて嬉しい限りだ。」


クロードの髪に口づけを落とす。


その時である。クロードが身を起こして。


「あ、部屋をノックされている。昼間からイチャイチャしちゃったからね。すぐ戻らないと。」


魂の世界から姿を消した。


グリザスも急いで姿を消す。


ガチャっとドアの開く音がして、珍しくローゼン騎士団長がクロードの部屋に入ってきた。


「何だ。お前達。まだ昼間だぞ。」


魂の世界だけでなく、ベットでも一緒に寝ていたものだから、注意される。


ふと、グリザスは思い出した。そういえば、この騎士団長について、最近、変な噂が広がっている。


まぁ、普通の人なら、女性経験が無いって事でも、そんな噂にならないのだが、国、一番の美男だと、噂の的になってしまうのだ。


気の毒だと思う。


クロードがベットから降りて。(勿論。服は着ているが)


「ローゼン騎士団長。呼んで下されば伺いましたのに。何の用ですか?」


ローゼン騎士団長は。


「お前ではない。グリザス・サーロッド。探していたのだ。魔王討伐に加わるよう、ディオン皇太子殿下から命令が出た。週に1回、王宮の庭の訓練に参加するようにとの事だ。」


グリザスは慌ててベットから降りて。


「了解した。参加しますとディオン皇太子殿下に伝えてくれ。」


ローゼン騎士団長は不機嫌に。


「了解したと伝えておく。騎士団寮の風紀を乱すな。目に余るようなら、罰則を適用するが。」


クロードが慌てて。


「罰則って何です??」


「不純異性行為を騎士団寮の中でしたら、退団。なのだが、異性ではないか。ともかく、今回は大目に見よう。失礼する。」


ローゼン騎士団長は急いで出て行った。


クロードがグリザスに向かって。


「同性なら大目に見るんでしょうかね?まぁ魔王討伐を控えているから、大目に見てくれたのかな。」


グリザスも頷いて。


「そうかもしれんな。」


立ち上がり、ふと外を見れば、庭からフィーネの声が聞こえてくる。


何だろうと、グリザスはクロードと共に庭へ出れば、フィーネが大男と共に話をしていた。


黒の鎧を着て、背に大斧を担いでいる髭だらけの男だ。


フィーネがグリザスとクロードを見つけ。


「あ、グリザス様、クロード様。」


手を振れば、大男がガハハハハと笑って。


「わしはザビト総監だ。お前達は誰だ?」


クロードがザビト総監に近寄って。


「闇竜退治の時に、第二王子を守って撤退した人ですね?俺、クロード・ラッセルと言います。貴方の事は、後から聞きました。あの後、すれ違いに俺達見習いもあの場にいたんです。」


「そうかそうか。闇竜を相手にしたなら、相当の腕利きだな。」


グリザスをハタとザビト総監は見る。


フィーネが紹介する。


「グリザス・サーロッド様だよーー。死霊の黒騎士様で強いんだーー。」


グリザスは自己紹介をする。


「グリザス・サーロッド。騎士団の見習いの剣技を指導している。」


「ほほう。わしは治安隊総監、ザビトだ。剣技の指導をしているなら、さぞかし強いだろう。どうだ。今、手合わせをしないか。」


今…手合わせ??? いやその、クロードとイチャイチャしたせいで、身体が怠いのだが。


嫌とは言えない。男だから。


「承知した。剣を持ってくるから待っていてほしい。」


クロードがグリザスを心配して。


「大丈夫ですか?日を変えてもらったほうが。」


「これ位で、俺の剣が鈍ると思うか?」


魔剣を手にザビト総監の前に立つ。


相手は大斧。受けるには相当力がいるだろう。


だが、負けるわけにはいかない。


ザビト総監が巨体から、凄い勢いで大斧を振りかぶってきた。


真正面から魔剣で受け止める。


ガキンと音がする。両足が地に少しめり込んだようだ。


お互いに一旦離れると、すさまじい打ち合いをした。


あの大斧を受け止めきれなければ、身体が切断される。


ザビト総監は俺を殺す気なのか。


ぐっと身を沈めると、大斧を避け、鋭い一撃で、ザビト総監の顔寸前で魔剣の切っ先を止める。


ザビト総監は地面にめり込んだ大斧を引っこ抜きながら。


「ガハハハハ。俺の負けだ。さすが強い。」


グリザスは魔剣を鞘に納めて。


「褒めて頂き、光栄だ。」


クロードが安堵したように。


「さすが、グリザスさん。強いですね。」


「心配してくれて有難う。」


ザビト総監と別れて、騎士団寮に戻る。


フィーネが後からついてきて、廊下でグリザスの手を握って。


「やっぱり、グリザスさん具合悪いんだー。癒しますっーー。」


癒しのパワーを送ってくれた。


怠さや、疲れが取れる。


しかし、フィーネに何か感づかれていないか?


フィーネは顔を真っ赤にしながら、走っていってしまった。


まずい。やはり何か感づいたのだろうか??


凹んでいると、クロードが抱きしめてきて。


「やはり貴方は凄いですね。俺…本当に貴方みたいな人と結婚出来るなんて幸せだな。」


だなんて言われていると、近くを通りかかったギルバートとカイル。


まず、ギルバートが。


「結婚式はやるのか?クロード。」


と、信じられない事を聞いて来た。


クロードはニコニコして。


「うん。教会で挙げられたらいいなぁ。」


カイルもニコニコしながら。


「その時は騎士団見習い全員、出席するよ。」


クロードはカイルの手を握り締めて。


「有難う。カイルっ。」


ギルバートが考えるように。


「花嫁をエスコートする役は誰なんだ?普通。花嫁をバージンロードで共に歩くのは父親だろう?」


何故、具体的な話になっている??


クロードはうううんと考え込んで。


「グリザスさんは孤児でしたよね。もし、ご両親がいたってもう死んでいるでしょうし。

ここは父親代わりに、騎士団長と共に入場してもらうとか。」


「それだけはやめてくれ。その前に結婚式なぞ、やらなくていい。」


3人が口をそろえて。


「そういう訳にはいかないですっーーーー。」


「何でやらないとならないっ。」


ギルバートが真剣な顔で。


「せっかく薄幸なグリザスさんが幸せを掴んだんです。グリザスさんには剣技でお世話になっていますし。見習い全員で祝ってあげなくてどうするのです?」


カイルもグリザスに向かって真剣に、


「グリザスさん。聖女様もきっとグリザスさんの晴れ姿見たいと思っています。ベールとブーケは必需品だと。素敵な結婚式を挙げましょう。」


クロードがグリザスの手を握り締めて。


「みんなもそう言ってくれてますし…教会どこにしようかな。」


「クロード。結婚式は挙げない。必要ない。皆の好意だけ受け取っておく。

以上だ。」


クラクラして、一人、部屋に戻った。


3人は夕食を食べに食堂へ行ったようだ。


祝ってくれるのは心から嬉しいが。教会は勘弁してくれないか…


例え、自分が人間でも、絶対に嫌な結婚式である。


でも、望むなら…小さな祝いの席でも設けてくれて。


大好きな騎士団の見習い仲間達と、フィーネと聖女様が祝ってくれればそれで幸せで。

ああ…ミリオンも呼んでやらないと拗ねるか…世話になった。


食べる事は出来ないけれど、小さなケーキを前に…祝えたらそれでいい。


そんな幸せを夢見て、いつの間にか眠ってしまったグリザスであった。


乙女の夢です(笑)

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