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第一魔国、魔王へ挨拶に行ったのだが。

駆けつけたらディオン皇太子殿下の交渉は無事終わった所で、王宮から、クロードと共に騎士団寮に帰ってきたグリザス。


帰ってきた途端、騎士団寮の前で以前、会った男が待ち構えていた。

そう、聖女リーゼティリアの夫、ユージンだ。


「グリザス・サーロッド。貴様という奴は。」


怒りに任せたその男は、腰に剣を持っており、それを抜き。


「決闘だ。お前に決闘を申し込む。」


クロードが割って入り冷静に対処する。


「貴方はどなたですか?何故、グリザスさんに決闘を?説明願いますか?」


ユージンは剣を構えたまま。


「僕はユージン。リーゼティリアの夫だ。この男は我が妻を寝取った。あろうことか、王宮の図書館で逢瀬を繰り返し、その挙句、淫らな事を。許せない。」


何故?今頃、不倫疑惑が浮上した???


俺と、クロードの仲の方が、王宮の俺を知っている人達や、騎士団見習いの中では周知のはずなのだが。


グリザスは慌てて説明する。


「聖女様とは、前にも言った通り、俺が信仰しているだけだ。図書館では一度会った時に、

読みやすい本を選んでくださった。それが、何故、不倫していることになる??」


クロードがグリザスの傍に行き、その肩を引き寄せて。


「貴方、知らないんですか?グリザスさんと俺、恋人同士なんですよ。絶対に結婚します。この国の法律なんてどうでもいいんだ。嬉しいな。こんな強くて可愛い人が俺の嫁さんになってくれる…。幸せだな。」

見せつけるようにグリザスの兜の頬辺りにキスをするクロード。


ユージンはさらに怒りまくり。


「嘘をついて、ごまかそうっていったってそうはいかない。そんなおかしな話があるか。

男と結婚だと??神を侮辱するのも程がある。その男は死霊だぞ。」


「だから?なんだって言うんですか?死霊だから、結婚しちゃいけないって誰が決めたんです?グリザスさんに危害を加えるというのなら、いかに聖女様の伴侶といえども俺が許しませんよ。ねぇ…俺、魔族なんですよねーー。貴方、勝てますか?」


クロードが頭に角を生やし、耳を尖らせ、魔族の姿になる。

にやりと笑った口からは鋭い牙が覗く。


ユージンは分が悪いと思ったのか。


「今日の所は引いてやる。覚えておけ。グリザス。」


急ぎ足で去っていった。


人間の姿に戻ると、クロードは呆れて。


「あの人、どうしちゃったんでしょうね。聖女様、大した男を旦那さんにしていないな。」


「王立病院の医者らしいぞ。思い込みが激しすぎる。困ったことだ。ところで、俺はお前の嫁認定なのか?」


クロードに抱き寄せられた。


兜の耳の辺りで囁かれる。


「当たり前じゃないですか…。貴方程。可愛らしいお嫁さんはいませんよ。」


ここで一つ重要な情報を提供しておこう。


俺は、決して、猫耳が付いているとか、尻尾が生えているとか、口調は尊大だが、実は強いだけの華奢な若い騎士なのだとか、はっきりいって勘違いしないでほしい。


亡くなった時は三十路は過ぎていた。


身長もディオン皇太子殿下とそんなに変わらず、クロードよりもあきらかに高い。


長身の部類だ。


筋肉もそれなりについている。


金髪碧眼、クロードに言わせれば、男前らしいが、無精ひげを軽く生やした、

はっきりいって美男というより、オッサンに近い部類だ。


ローゼン騎士団長が、中性的で大人の色気溢れるアポロンのように美しい男であるとするなら、俺はガサツな戦士で、全くタイプの違う男なのだが。


だから、クロードや、フローラ嬢が言う、可愛いっていうのはどうも理解できない。


クロードに改めて言ってみた。


「俺はお前より、年上で、剣技の指導者だ。」


「だから?」


「だからその…嫁って言うは変ではないか?」


クロードはニンマリして。


「魂の世界で、あれだけ可愛く鳴いていたじゃないですか。」


うわっーー。それを言わないでくれーー。


「俺、自分が鳴くのは嫌なんですよねーー。だから…やっぱり鳴くグリザスさんって可愛いですよ。これからも沢山、鳴かせたいな。」


言い返せなくなった。


俺が人間なら、真っ赤になっている所だ。


クロードがふと思いついたように。


「まだ、昼間ですよね。だったら…。ちょっと出かけません?」


「どこへ?また、雪が降ってきたようだが。」


「俺の家、かな…。第一魔国を追い出されたはずなんだけど。姉上が、一度、グリザスさんを連れて来いって。ちょっと行こうよ。」


いきなり、第一魔国の魔王と呼ばれる女性と会うのか?


クロードは嬉しそうに。


「俺の将来のお嫁さんを紹介しておかないとね。グリザスさんにとって義姉さんになるわけだし。」


「いや、そういう所をキチンとしなくても。」


「行こう。」


いきなり、第一魔国の魔王に会う事になってしまった。それも、クロードの嫁認定?


あれよあれよという間に、第一魔国の王宮に、転移鏡で連れていかれた。


第一魔国の魔王、サルダーニャは、それはもう、黒髪の美しい色気のある女性である。


広間で、王配の逞しき大男、ゾイドリンゲンと共に、話をしていた。


クロードを見ると、サルダーニャは近寄って。


「おお、クロード。お帰り。そちらの男が、グリザスか。」


「姉上、俺の新しい婚約者を連れてきたよ。早く結婚したいんだ。」


ゾイドリンゲンもグリザスをジロジロと見つめ。


「死霊で男か…。アイリーンから随分と好みを変えたな。」


「義兄上、そりゃ、まぁ…。色々とあったんだ。俺、女性が好みなんだけど、ね。グリザスさんに対しては男性でも構わないって思ったんだ。グリザスさんも同じだと思うよ。ね?そうだよね。」


グリザスは頷いて。


「ああ…俺もクロードなら性別は男でも構わないって思った。以前から男に興味があった訳ではない。」


ゾイドリンゲンが豪快に笑って。


「確かに。女の胸にはロマンが詰まっておるからな。」


不思議な事に、マディニア王国も、この魔界の王国でも、胸は浪漫で、胸元をさらけ出す格好は大歓迎とか、色気があるとか褒められるのに、短いスカートで腿をさらけ出す格好は、魔界でも、品がないとか、貞操観念がないとか、嫌がられるのだ。マディニア王国では、転生者で、国に禍をもたらす犯罪者扱いされるのだから、変わっている。


そして、今、特に魔界でブームなのが胸枕。女性のたわわに実った胸に男性が甘えて眠る、まさに、至上の天国ブームなのである。

ディオン皇太子なんぞはセシリア皇太子妃に胸枕をしてもらうのは魔界ブームを先取りしていると言える。


クロードがサルダーニャそっちのけで、ゾイドリンゲンに。


「ところで、義兄上は、姉上に胸枕をしてもらっているの?」


「俺は流行に乗り遅れる事はない。」


「さすがだな。俺も流行に乗りたい。」


あああ…俺は男だから、たわわに実った胸が無いのが辛い。筋肉ならあるが…

そして、残念ながら、今までの人生で、女性に胸枕をしてもらった事もない。


ただし、女性経験が無いと言っている訳じゃない。戦で生きてきたのだ。時には女で忘れたい事だってある。それが叶わない時は、聖女様の裸を妄想していたりした。


クロードがじっとグリザスの顔を見て。


「やだな…聞こえちゃった。たまに聞こえるんだよね。グリザスさんの声。

そして、考えている事のイメージが…。ねぇ。どうだったの?今まで抱いた女…。

それじゃ聞くけど。貴方って男性経験は俺、以外にあるの?」


「あると言ったらどうする…」


「許せない。」


サルダーニャとゾイドリンゲンの存在を忘れた。


グリザスは言葉を続ける。


「俺の性的趣向は女性だ。だが、今まで抱いた女なんて、顔も忘れた。結婚を約束した相手もいなかった。男性経験を聞いてきたが、女がいない遠方での戦。力が弱い時はどうしようもない時がある。俺は力の弱い者を虐げるような事はしなかったが。それが、戦で生きる黒騎士という者だ。俺だけがそうだった訳じゃない。許せないというのなら、クロードとの関係は解消しても構わない。過去は変えられない。だが、俺は、矛盾する思いだが…人を大勢、殺した事は後悔はすれども、その一方で国の為、聖女様の為に戦った事を誇りに思っている。」


クロードはため息をついて。


「ごめんなさい。本当に…。貴方は貴方らしく、真っすぐで…苦労してきたんですね…本当に。」


ぎゅっと抱きしめてくれた。


サルダーニャが呆れたように。


「クロードの婚約者の紹介は解った…。まさか、女性経験だの男性経験だので紹介されるとは思わなんだ。」


グリザスは慌てて謝る。


「いや。申し訳ない。変な話をしてしまった。アイリーン嬢という、第二魔国の婚約者がいながら、クロードと恋人になってしまったというのは謝っても謝り切れぬことだ。死霊でそれも同性なのだから。国の損害にも繋がっただろう。だが、俺は…クロードを愛している。」


サルダーニャが片眉を上げて嫌味っぽく。


「許せないのなら、クロードと別れてもいいと言ったではないか。そんなすぐに我が弟を諦めて貰っては困る。第一魔国の魔王の弟を誘惑したのだ。それなりに責任を取ってもらうぞ。

お前の人生を、クロードにささげる事を誓って貰おうか。」


クロードがサルダーニャに。


「大丈夫だよ。姉上。魂の分割をしてあるからさ。俺からは逃げられない。考えていることが時々聞こえるし、ピンチの時は自動で転移して助けにいける。それに、グリザスさんが俺より、長く生きる事は出来ない。逆に、グリザスさんが死んだら、俺は寝たきりになるけどね。

でも、いいかな。他の人の物になるのを防げるから。俺の物で最後は終わるんだ。もし、他の人がグリザスさんを穢したり、俺から盗ったりしたら、惨殺してやる。」


サルダーニャが優雅に笑いながら。


「お前とアイリーンは似ておるの。だから、上手くいかなかった。

お前だって支配されるより、支配したいわな…。魔国の魔王一族だからのう。

アイリーンが残虐な方法で支配している勇者。どうなるか楽しみじゃ。」


今、何ていった?ユリシーズを支配している?


クロードが聞き返す。


「アイリーンが何かやっているんだね?ユリシーズに。」


「お前にはもう関係ない。そして口出しをする権利もない。これ以上、第一魔国と第二魔国の仲を壊すな。良いな。クロード。」


クロードは食い下がる。


「勇者ユリシーズは聖剣を持っている。何かあったら、復活する魔王を倒せなくなるんじゃないか?姉上。」


サルダーニャはきっぱりと断言する。


「それでも口出しをする事は我が国では出来ぬ。フォルダン公爵は今回のお前の一方的な婚約破棄について寛大な処置を言って下さった。その恩を仇でこれ以上返す事はない。生贄は必要じゃ。30年前も今も…。アイリーン。あの女は邪悪の塊じゃからの。お前ならアイリーンをおとなしくさせる事が出来ると思っていたが…仕方がない。」


グリザスは思った。


30年前と同様にまた、ユリシーズを生贄にするのか?いやもうすでになっているのか…


しかし、彼を救う事は出来ない。何かしたらその時こそ、フォルダン公爵の機嫌を損ねてしまうだろう。クロードの騎士団人生が不利になってしまう。心配してくれたローゼン騎士団長の好意も無駄になってしまうのだ。


クロードは納得したように。


「解りました。姉上。俺は正義の味方でもないから…。グリザスさんとの事を一番に、アイリーンに関しては口出ししません。」


サルダーニャは満足したように。


「それならば、グリザス・サーロッドとの婚約、わらわからも認めよう。弟をよろしく頼むぞ。クロードの伴侶よ。」


グリザスは礼を言う。


「こちらこそ認めてくれて有難う。感謝する。」


ゾイドリンゲンも。


「男らしい身内が出来て嬉しいぞ。よろしく頼むぞ。」


がしっと握手を求めてきたので、握手をした。



第一魔国の王宮を後にして、再び騎士団の寮のクロードの部屋へ転移する。


辺りは暗くなり、雪がまだまだ降っていた。


クロードがぽつりと呟いた。


「本当にごめんなさい。さっきは…。俺。グリザスさんの過去の辛い記憶、えぐったよね。」


グリザスは言葉を返す。


「忘れた。女性関係も男性関係も全て…。顔すら覚えていない。俺には今があればいい。」


クロードに抱きしめられる。


「俺ね…グリザスさんが初めてなんですよ。結婚前の男女って関係持ったらいけないから。


俺は最初で最後の人にしたい。グリザスさんも俺の顔、忘れないでくれませんか?」


クロードを抱き締め返す。


愛しくて愛しくて…ああ、どうして200年の時をかけて、この男と巡り合ったのだろう。


このような激しい恋をするなど思わなかった。


クロードの耳元で囁く。


「お前が欲しい。欲しくて欲しくてたまらない。」


「いいですよ。魂の世界でうんと愛しあいましょう。ただし、貴方を壊さない程度にね。」


グリザスは幸せだった。ずっとこの幸せが続くように神がいるのなら、祈りたい。

そう思えた。


なんかちょっと切ないですね。しかし…フローラの話のローゼン騎士団長の童〇宣言の後に、グリザスの戦人らしい経験談が出てくるとは、うううん。しかし、時代の違いでしょうかね。


ちなみに、私、小説書くときは大体、キャラに勝手に振り回されています。展開が変わってしまって困ります(笑)ほんとにクロードが男に走ったおかげで、フローラの方の物語が変わってしまいました、(-_-;)

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