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3 友人、不審者と相対す


 突然ですが、

問1、今の宮田誠花の状況をそれまでの文章に即して百字以内で答えなさい。





 考えましたか? 本人による解答はこちら


 高井君の後を友人の呉島と一緒に後をつけて公園に入ったが、見てはいけないものを見てしまったと感じた誠花は呉島を引きずって公園を出ようとしたところ、出口で不審者に声をかけられた。


 これで記述はギリ8割いったんじゃないだろうか。いや、今はこんなことどうでもいいじゃん! なに現実逃避してんの私⁉︎


「何って……特に何もしてないですよ」


 どこか遠い方向を眺め始めた私に変わって、引きずられていた桃花が気だるげに不審者に答えた。


「そうかい。ここは危ないからどこかへ行った方がいいよ」


 全身スチームパンク風でペンギンのような形と頭の不審者は、親切にも?警告してくれた。不審者の笑顔が眩しいぜっ!(スチームパンク装備で顔の動きは全く見えないが)


 つーかここ危ないって何? だとしたら絶対お前の仕業だろ、と言いたくなるのを我慢する。戦闘力ゼロのFJKが敵と戦えるわけないのだ。だから突発的に何か言って相手を怒らせるとかはしたくない。


 スチパンペンギン不審者が公園の中に入っていくのを見送って、私はついに公園を出た。といっても、公園から一歩足を出しただけである。


 今何時かなぁ、スマホ見よ。あぁもうすぐ5時なんだ。帰ろっかなー? なんて考えた時に私は気づいた。私の右手にはスマホ、左手はパーカーのポケットの中。


 そう。呉島桃花を掴んでいた手を離していたのだ。あいつはほっとくとマジで危険だ。こういう時に限ってアレはおかしなことする奴だ。私はぐるんと頭を振って周りを確認した。やはり近くに桃花はいなくて、ペンギン不審者の元へ走っていく制服女の姿が見えた。


 私の心の中の関西人が、必死でなんでやねんを連呼している。そして、心の中の関西人は言うのだ。


"ボーっとしてないで、後を追いかけや!"


 白状すると、私は東京生まれ東京育ちなため関西弁なんてよく知らない。それでも心の中の関西人が叫ぶということは、相当な事態なのだ。


 私は、とうかの名前を呼びながら後をおいかける。桃花は軽く振り返って私をチラッと見ると、足を止めた。良かったと思えたのはほんの一瞬だった。

 束の間の安堵を葬り去ったのは、桃花から放たれるピンク色の閃光だった。周りの人々が驚いて光を放つ方を見る。


「えぇー、なにそれ……」


 眩い光と共に浮遊する桃花。

 光に包まれて見えない身体は、肩から指先、脚の付け根から爪先が徐々に明らかになった。デジャヴを感じる。


 私は遠い日の記憶に心を寄せた。そうだ、あれは私が幼稚園児のころの記憶だ。テレビで見た私のヒーロー、プリチア。私はチアオレンジが大好きだったっけなぁ。


 変身シーンはどのキャラクターも大した違いはない。キラキラして魔法の力だか何だかで、あっという間にお着替え(変身)完了しているやつだ。しかしいざそれと似たような物が目の前で再現されると、制作者側もきっとキャラごとにパターンを作るのは面倒くさかったのだろうと思う。


 呉島さんの変身が終わると、彼女は決めポーズやら決め台詞やらをする。


「愛と平和のバーサーカー! チア・ピルムピーチ、参上! 平和を乱すものは絶対に許さない!」


 はいはい、そういう感じなのね貴方。バーサーカーとか物騒ね貴方。いやはやプリチアが実現するなんて、今の科学技術は凄いなぁ。そりゃ悪の組織がいればヒーローもプリチアもいるよね。

 実は150年前と違って、ヒーローは昔の某ジャンプ系漫画のように結構あちこちで活躍しているけど、プリチアは再現が難しくていなかったのだ。こりゃあっぱれテクノロジー!って感じだわ。



「なにっ、プリチアだとっ⁉︎ なぜ現れたのだっ? 我々は何もしてないではないかっ!」


 スチパンペンギン不審者は早速桃花に抗議した。


「ふんっ、馬鹿じゃないのあなた。何か問題が起こる前に対処してこそのヒーローよ。問題が起きてからアンパンチじゃただのパフォーマンスだわ。」


 桃花は持っている槍のようなものをぶん回しながら言った。うん、分かるよ呉島。被害が出てからじゃ遅いよね。被害が出ないのが1番だよね、それは分かるよ。


「しかし、我々が何もしていないのも事実。我々は指定暴力団隊でもないのだからな、何もできまい」

 不審者に呉島さんはまた鼻を鳴らした。


「貴方ほんとに馬鹿なのね。これは防犯のための変身よ。行動を起こそうとしなければ私は何もしないわ。でも貴方達が何かしようものなら即ぶっ潰すわ」


「ぐぬぬ」


 なるほど、プリチアの変身は抑止力になるのね。こりゃ事後に聞き取り調査として偶然巻き込まれた無関係な人に何度も同じ質問をして答えさせる警察や、根拠なく相手が武器を持っているかもしれないと言って彼らに武器を向ける警察よりも抑止力にはなりそうだ。

 誤解がないように言っとくが、警察アンチというわけではない。ただ悪の組織が乱立しすぎて23世紀の警察官は手がいっぱいいっぱいになっていることへの批判だ。警察もよく頑張っていると思う。


 スチパンペンギンは、大袈裟な身振り手振りをして言葉に詰まる。そして腕を大きく振って宣言した。


「活動できねば仕方ない。かくなる上は、プリチアを倒せば万事解決っ。bAdPEACHの五覇の一人、インペランゴが成敗してやる! 覚悟しろ小娘っ!」


「望むところンゴ! どんなに歌がうまくてもセクハラは許さないンゴ!」


 インペランゴ。コウテイペンギンの皇帝部分から名前をつけるならそのままインペラトルとかにしとけばよかったのに、どうしてンゴとかつけるのか。

 その中途半端な名前のせいで、恐らく桃花は某有名テノール歌手を思い出してしまったではないか。ちなみにンゴの語源は9回裏で逆転さよならホームランを打たれた投手で、テノール歌手とは別のドミンゴさんである。


 あぁ、これは一体どうなることやら……



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